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選考委員との相性

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作文・エッセイ
作家デビュー

文学賞を受賞するにはどうすればいいのか、傾向と対策はどう立てればよいのか。

多数のプロ作家を世に送り出してきた若桜木虔先生が、デビューするための裏技を文学賞別に伝授します。

選考委員との相性

さて、密室殺人事件ミステリーと身代金誘拐事件ミステリーには一つの大きな特徴がある。それは「既存作に前例があるトリックは全く評価されない」ということである。

つまり、密室殺人事件で新人賞に挑もうと思う人は過去の密室殺人事件ミステリーを、身代金誘拐事件で新人賞に挑もうと思う人は、過去の身代金誘拐事件ミステリーを全て読まなければならない。

身代金誘拐事件ミステリーには、『大誘拐』(天藤真)とか『99%の誘拐』(岡嶋二人)とか、過去において多数の傑作がある。

手前味噌になるが年間ベストミステリーにランクインした拙著『修善寺 紅葉の誘拐ライン』も身代金誘拐事件ミステリーである。

本格ミステリーを手掛けようと考える人の場合、密室トリックにも身代金奪取トリックにも、どっちにも才能がある人は、滅多にいない。だからミステリーで新人賞を射止めようとする人は、どっちに自分の適性があるのかを早急に見極め、絞り込んだほうが良い。

どっちも駄目そうと思ったら、ハードボイルド(警察ミステリーを含む)とか冒険物に活路を求めるようにする。

さて、『キボウノヒカリ誘拐事件』のように特殊な業界に題材を採った場合には、「選考委員との相性」という問題が出て来る。

『闇を切り裂く誘拐者』のアマゾンのレビューを読んでもらうと分かるが、★五つがずらりと並んでいる中で、たった一つだけ★二個の評価がある。そこには「誘拐事件そっちのけで競馬界の内幕と昔がたりが延々と続き、競馬に興味のない人間にはちっとも面白くない」と書かれている。

競馬を含め、ギャンブルが嫌いな選者は意外に多い。『キボウノヒカリ誘拐事件』も、二次選考でそういう選考委員にぶつかって、ボロクソの酷評を受けて落とされ、最終選考に残れなかった。

新人賞選考には、必ず、そういう運不運がつきまとう。選考委員といえども人間であるから、嫌いな分野、興味を持てない分野の応募作に当たったら、どうしても評価は辛くならざるを得ない。

そういう点で、矢吹の二作品を、その回のグランプリ受賞作と比べ読みしてみると、応募作を読む際の選考委員の嗜好が垣間見えるはずで、これもまた新人賞を狙う際の”傾向と対策”になるだろうと考える。

ギャンブル以外に選考委員の好みがはっきり割れるものを挙げると、軍事的なもの、右翼的なものは嫌いだから評価が辛くなる、と言っている選考委員がいる。

オカマとか同性愛者には生理的な嫌悪感を覚えるから、そういう応募作は評価が辛くなる、と言っている選考委員もいる。

これは私が個人的に聞き出したもので、もちろん公表されていない。建前としては、全応募作は、あくまでも公平に審査されることになっている。しかし、本当にそうであればA賞の一次選考落ちがB賞を受賞、などという事例が、起きるわけがない。

一次選考で落とされたら、本当に実力不足で落とされたのか、はたまた、その分野が嫌いな選者に渡る不運による落選だったのかは、識者に判断を仰ぐしかない。「公募ガイド」誌の「落選理由を探る」コーナーは、身近にそういう識者がいないアマチュアのためにある。

 

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若桜木虔(わかさき・けん) プロフィール

昭和22年静岡県生まれ。NHK文化センター、読売文化センター(町田市)で小説講座の講師を務める。若桜木虔名義で約300冊、霧島那智名義で約200冊の著書がある。『修善寺・紅葉の誘拐ライン』が文藝春秋2004年傑作ミステリー第9位にランクイン。