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文章表現トレーニングジム 佳作「怒り心頭」 嘉久記章

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作文・エッセイ
結果発表
文章表現ジム
第12回 文章表現トレーニングジム 佳作「怒り心頭」 嘉久記章

私も今住んでいる借家も、生まれて半世紀になる。二人共あっちこっちガタがきている。

冬になると家は凍え死にしそうに寒い。その代わり、夏には熱中死しそうに暑いと、メタボの私は胸ではなく腹を張って断言できる。

とにかく、その年も冬が来た。ファンヒーターをつけようとしたら、どうも点火装置が故障したらしく、火花が散らず、つかない。

大汗かいて買った店にヒーターを持ち込み、修理を依頼すると、「この商品は古くてもう製造されておらず、交換部品もないので、修理は無理です」との氷より冷たい返事。泣く泣く新品を買い、寒い懐をより一層寒くした。

しばらくして、店から耳を疑う電話が来た。修理不能と言われ店に置いてきたヒーターの修理ができたから、支払いと引き取りに来いと言う。怒りでゆでダコと化して店に行った。

修理できないとそっちが言うから大金を出して新品を買ったんだ! といくら主張しても、「聞いておりません」「とにかく修理したので代金をお支払いください」とくり返されるばかり。やむなく支払い、持ち帰った。

ただでさえ狭い家が余分なヒーターでもっと狭くなった。横のつながりがなく、各部門が勝手に動いた結果だとしたら無能。全部分かっていてこっちをだまして買わせたとしたら詐欺だ。いずれにせよ許せるものではない。

客を怒らせず笑顔にするのが店ではないか。

時々怒りを我慢できず、ヒーターを蹴る。その度に目から火花が散り、痛さに涙が出る。