文章表現トレーニングジム 佳作「勉強もほどほどに」 きよまろ
第11回 文章表現トレーニングジム 佳作「勉強もほどほどに」 きよまろ
中学生のころ、私は勉強ばかりしていた。私が勉強していた理由は、周りから褒められるためでも大きな志があったからでもない。 当時の私は推理小説が好きだった。そして、ひたすら勉強すれば、小説に登場する探偵たちのような天才的な頭脳を手に入れられるとただ漠然と思っていただけだった。
昼休みには図書館に行き本を読み、家に帰るとすぐに宿題をやった。そのおかげで成績は常に上位で、親や先生に褒められることが多かった。友人には「先生」というあだ名をつけられ、テストや宿題についてよく質問された。
ただ、勉強ばかりしていた私は周りがよく見えていなかった。受験を控えたある日、クラスメイトの女子から英語の問題がわからないから教えてくれと声をかけられた。女子のことなど気にしていなかった私は彼女に対して、
「えっと、誰だっけ」
と尋ね返した。
それを聞いた彼女は一瞬驚きの表情を見せた後、無言で立ち去った。後で友人から聞いたところによると、どうやら彼女は私に好意を持っていたらしい。
今にしてみればなんてひどいことをしたのだろうと思う。もっと他人を大切にしろとあの頃の自分に伝えたい。人生に本当に必要なのは天才的な頭脳なんかではなく、知恵を出し合える仲間や感情を共有できる恋人なのだから。