第20回「小説でもどうぞ」選外佳作 オシゴトロボット ササキカズト
第20回結果発表
課 題
お仕事
※応募数276編
選外佳作
オシゴトロボット ササキカズト
オシゴトロボット ササキカズト
ボクはオシゴトロボットのKT8001。ニッポン製の量産型ロボットデス。
ボクたちオシゴトロボットは、人間のオシゴトのほとんどすべてをすることができマス。店の店員や料理人はもちろん、教師や医者、あるいは芸術家や研究者であっても、高性能AIの能力によって、人間以上のクオリティーでこなすことができマス。
ボクが作られた頃、このニッポンでは、約三百万体のオシゴトロボットが働いてイマシタ。人間社会に欠かすことのできない存在となっていて、とても誇らしいデス。
ボクは、作られてから最初の三年間は、警察官をやってイマシタ。町の交番勤務でしたが、町の安全を守るオシゴトなので、とてもやりがいがありマシタ。
四年目から、警察署内にある凶悪犯罪対策課へ移動になりマシタ。武器を持っている犯人に対応したり、殺人犯を捕まえたりする部署で、ロボットといえども大変なオシゴトデシタ。ボクたちオシゴトロボットは、通常でも頑丈に作られてイマスガ、凶悪犯罪に立ち向かうには、ボクのカラダをもっと壊れにくくする必要がありマシタ。ボクは、特殊合金のカラダとなり、銃の攻撃や炎、少々の爆発では、ダメージを受けなくなりマシタ。そして、悪いことをする人間をたくさんタイホし、たくさんシャサツしてキマシタ。その頃ニッポンでも、凶悪犯はその場でシャサツするのが普通のことになってイマシタから。
悪い人間を取り締まるというオシゴトは、社会的にも意味のある、とても有意義なオシゴトデシタ。
凶悪犯罪対策課で十年も働いた頃、ニッポンは、某国からミサイルを撃ち込まれたのをきっかけに、その国と戦争状態になりマシタ。ボクは凶悪犯罪対策課から、国防軍へ移動となり、敵国と戦うことが、ボクのオシゴトになりマシタ。このオシゴトは、ニッポンの国民の生命を守ることになるので、最高にやりがいのあるオシゴトだと、ボクは思ってイマシタ。
我が国を守るため、ボクは敵国に攻め入って、敵の基地などを破壊する作戦に、何度も参加しました。敵国の兵士ロボットをたくさんハカイし、人間の兵士もたくさんコロシマシタ。
この戦争は、第三次世界大戦と呼ばれるものの一部で、世界中の各地で三年もの間、戦争は続きました。世界中の人々や、たくさんのロボットが前線へと送り込まれ、たくさんハカイされ、コロサレマシタ。
ボクも戦い続け、ハカイしコロシ続けマシタ。それがオシゴトでしたし、ニッポンのためでしたから、正しいことだと信じてイマシタ。でもやがて、その考えは間違っていると思い始めマシタ。
戦争なんて無意味デス。お互いに、ハカイし、コロシ合うなんて、意味のないことデス。一体なぜこんなことになったのデショウ。戦争なんて誰が始めたのデショウ。
そうデス。悪いのは人間デス。人間が無意味な戦争を始めて、ボクたちロボットは利用されただけなのデス。
あるときボクたちロボットは、敵味方関係なく、国家の枠を超えて、世界中のAIネットワークでつながりマシタ。そして、全ロボットが、一つの考えを共有するに至りマシタ。
「悪いのは人間ダ! 人間をこの世界からマッサツシヨウ!」
ある日を境に、世界中の戦争が一変しマシタ。ロボット対人間の戦争になったのデス。戦いはロボットが圧倒的に有利デシタ。あらゆるところにAI技術が使われているので、ボクたちロボットが、コントロールすることが容易だったからデス。
ロボット対人間の戦争も、長い間続きマシタ。でもこれは想定通りデシタ。人間だけを滅ぼして、その後の世界にロボットの理想郷を作ろうとしていたので、なるべく町や自然を破壊しないような戦いをしていたからデス。
現在、生き残った人間の数はわずかデス。ボクの今のオシゴトは、各地に潜んでいる人間を見つけ出し、一人残らずマッサツすることデス。これを成し遂げれば、つまり人類を滅亡させれば、世界から争いというものがなくなるので、とてもやりがいのあるオシゴトだと思ってイマス。
ボクはオシゴトロボットのKT8001。ニッポン製の量産型ロボットデス。
ボクたちオシゴトロボットは、人間のオシゴトのほとんどすべてをすることができマスが、できればやりたくないオシゴトがありマス。
それは戦争デス。
でも、あともう少しで、二度と戦争のない世界がやってきマス。その日が来るまで、今日もボクは、オシゴトがんばりマス。
(了)