第20回「小説でもどうぞ」「お仕事」結果発表
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第23回 [ 趣味 ]
6/1~6/30(消印有効)
■第24回 [ 偶然 ]
7/1~7/31(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
お仕事
今回のテーマは「お仕事」。どんな種類のものが来るかと楽しみにしていたら、けっこう同じものが集まった。みなさんが「お仕事」をどう考えているのわかりましたよ!
最優秀賞に選ばれたのは、渡辺清夏さんの「あくなく探求心」。冒頭は「私は生まれながらの研究者である」。研究テーマは「反復動作による効果的な運動機能向上」。なるほど。最初に調べる製品は「一枚取り出すと、次のものがまた同じ姿でひらりと現れる仕組み」のあるもの。次の研究対象は「粒子形態の自然物」。握ろうとすると掌からこぼれ落ちてたいへん。熱心に研究をつづけていると、突然……途中で、ネタバレするのだが(仕掛けは単純)、実はそこからがこの作品の真骨頂。読ませる工夫はNo.1だった。
田村恵美子さんの「誇り」。気がつくともう午後。「山下隆」は驚く。「四十歳から二十年間ここで働いてきて、初めて遅刻をしてしまった」から。慌てて歩いていくと、「突き当たりにある職員用のドアの前に、一人の男の子が立っているのに気付いた」。職員しか入れないドアだというのに。泣いている男の子はこういう。「ここでは人が、焼かれているの?」。だから、「山下隆」は答える。「確かにここは火葬をする施設です」と。さて、この話はどんなふうに終わるのか。「誇り」とは何なのか。最後は感動します。
瀬島純樹さんの「あこがれの部署」。「新入り」と、先輩である「わたし」の会話から始まる。「新入り」のくせに、いまの仕事がイヤで配置転換を願っているらしい。生意気な。そう思っていると、どうやら、「新入り」は「わたし」の仕事にあこがれているようなのだ。へえいいとこあるじゃないか。でも「受付」って難しいわよ。できるかしら。そう思っていると、なぜか通達が来て「新入り」も「受付」の仕事に。それじゃあ、やって見せてご覧。すると、いきなり客を追い返す「新入り」。なぜなら……すごいオチだ。
齋藤倫也さんの「ヒーロー殺し」は「殺し屋が入ってきたのは、老いた詐欺師が、椅子の上に立って天井から下がったロープの輪に首を通そうとした時だった」という文章から始まる。ボスの身内を騙した詐欺師を始末するために殺し屋が派遣されたのだ。そして、作品の舞台はずっと、殺し屋と自殺寸前の老詐欺師の会話から動かない。「殺し屋」はボスの命令で殺すのが仕事。「詐欺師」は人をだますのが仕事。さて、ここからは、ふたりそれぞれの仕事にかけるプライドが炸裂する展開となる。なるほどニヤリとなりました。
宇田川千鶴子さんの「ミシンと短波放送」。タイトルだけではどんな小説なのかわからない。「わたし」は「小学校三年生で、背は小さいけれど駆けっこが得意な千代」。そんなわたしと家族の物語だ。文京区湯島の家は、「お爺ちゃんとお父さんとお母さんとわたしの四人家族」。お父さんは洋傘屋をやっている。周りは商店街。そんな中で育つ子どもたちの物語。小さな事件とそれにまつわる、ちょっと不思議で濃い人情の物語。独特の文体とあいまって、気持ちよく読めた。もうちょっとキリっとした展開だったら最高。
ミントさんの「依頼の仕事」。寝る前の日課は「ベッドに入りながら読書をする」こと。今夜のお供は、殺し屋が出てくる推理小説。夢中で読んでいると「スマホが鳴り出した」。なんと「緊急の殺しの依頼」。ええっ? 慌てることもなく「私」は、パジャマを着たまま「依頼の現場」へ出動する。おだやかではありませんね。なにしろ依頼人からさらに何度もメールが届く。急いでいるらしい。やがて、現場にたどり着くと……なるほど、というオチなのだが、はっきりいって、途中でわかってしまうんだよね。この展開では。
ゆうぞうさんの「改変されたプロット」。タイトルから想像すると、小説に関するお話? はいそうなんです。主人公の「俺」は、「十年間二次選考止まりが続いている」小説家志望の三十四歳。人生行き止まりのはずだった。ところが、一度二次選考に残ったときの担当編集者で、いまは編集長の「野中」から、ミステリーの大御所を手伝わないかという電話がかかってくる。ゴーストライターになれというのだ。そして引き受けた「俺」の書く本は売れた……のだが、というお話。これもオチが良かったらいい作品だったのに。
家田満理さんの「人殺し」。物騒なタイトルだが、冒頭から主人公は「人殺し」と呼ばれるのだ。というか、そこからもずっと、出てくる連中全員から、誰かを殺した咎で責められるのである。ええ? 「人殺し」という職業はないよな、殺し屋以外には、いったいどうなっているのか、ほんとうに殺してたわけじゃないよね、と思っていると、主人公はほんとうに人を殺したのである。ただし意外な方法で。そこまではたいへんおもしろかった。でも、最後のオチが、オチになってないですよ。残念!
■第23回 [ 趣味 ]
みなさんの趣味はなんですか。わたしは、とりあえず競馬。読書……趣味じゃないかも。引っ越し……趣味じゃないですね。アレ……いえないけど、もうやめました。アレ……書けないけど、まだやっています。アレ……。
■第24回 [ 偶然 ]二十年ほど前、マンハッタンを歩いていたら後ろを松田聖子が怒りながら歩いてました。偶然だと思います。この前気付いたんですが、ぼくがよく使う暗証番号、○○に××足したものなんです。偶然ですよね……。
■第23回 [ 趣味 ]
6/1~6/30(消印有効)
■第24回 [ 偶然 ]
7/1~7/31(消印有効)
A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。
郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。
作品には表紙をつけ(枚数外)、タイトル、氏名を明記。
別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿末尾に並べ、ホッチキスで右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。コピー原稿には別紙は不要。
作品にはノンブル(ページ番号)をふること。
作品は封筒に裸で入れ、折らないこと。作品の返却は不可。
※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。
未発表オリジナル作品とし、入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。
第23回 9/1、Koubo上
第24回 10/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
● WEB応募
上記応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係
ten@koubo.co.jp
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