せきしろの自由律俳句　第76回「約束」結果発表

2023/07/15

タグ: 川柳・俳句・短歌・詩; 投稿する; せきしろ自由律; 結果発表

【自由律俳句とは】

自由律俳句は定型ではなく、自分のリズムで詠む俳句です。

「俳句にしたい！」と感じた情景を句にしてください。（せきしろ）

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結果発表

第76回課題：約束

せきしろの一句

死が約束を破る

最優秀賞

約束の無い老いの家

（山口県　与志朗　84歳）

たしかに年々約束は減っている。特に誰かとどこかに行くとかみんなで集まろうみたいな約束はほぼない。やがて何もなくなる時が来るのか。静かすぎる俳句である。

優秀賞

また旅の約束したい人のいる幸せ

（新潟県　あやめ　79歳）

気づけば飲みに行く人が減っていた。どこかで枝分かれした道が年齢と共に離れて行く。それでも約束したい人がいるなんて。いつか無性に羨ましくなりそうな句だ。

こどもが全力で目を閉じている

（長崎県　毎日ハッピー　45歳）

「絶対に目を開けてはいけない」と言われた子どもがしっかりと目を閉じている。そこには「約束」がある。同じテーマでも様々な視点があることを教えてくれる句。

佳作

待ち合わせ1時間前の立ち読み
（福島県　きりんのき　21歳）

姿を見つけて電話を切る
（東京都　naoki　29歳）

カレンダーに付ける丸何色にするか
（大阪府　フルカワ　31歳）

このあと約束がある人といる
（神奈川県　へやぼし　33歳）

約束の赤福が重い
（鹿児島県　さやか　33歳）

ファミコンを外に放り投げた母
（東京都　高野小竹　37歳）

約束を守る友達と守らない家族
（滋賀県　パジャマ　15歳）

次の小指を用意する
（山梨県　マタキチ　19歳）

撤去された伝言板の重さ
（三重県　KOZO54　54歳）

絡めたのは霜焼けの小指だった
（大阪府　オウンゴール　70歳）

二人だけだと思ってたのに
（滋賀県　いぬ　16歳）

あそこ集合ねで伝わる幸せ
（滋賀県　まめた　16歳）

待ち合わせの迷彩柄が目立っている
（神奈川県　Akiki　57歳）

四十年ぶりの再会またねは言わぬ
（東京都　渚　79歳）

ちぎれそうな約束でつながっている
（千葉県　xissa　57歳）

冷たい小指ほどける薄暑
（東京都　白石ポピー　32歳）

皆がお約束を待つ顔に
（東京都　ビールおかわり　51歳）

自分との約束を破っての今
（宮城県　五十嵐舞　51歳）

何分過ぎたら連絡入れようか
（北海道　エリンギ　36歳）

もう破れない約束したのは鬼
（大阪府　雨あめ　82歳）

影も長くなる待ち時間
（愛知県　わたなべ　15歳）

じゃあねとまたねの間に在った冬の空気
（大阪府　石川聡　41歳）

なぜ来ない切りすぎた小でまり
（群馬県　多恵　72歳）

今月の総評

何度か書いていますがここで募集しているのは自由律俳句です。定形の俳句ではありません。何度送っても採用されない理由は定型俳句であるからかもしれません。また自由律俳句は「俳句」です。それだけは忘れないようお願いします。決してテーマの語釈や定義を書くものではないのでご注意ください。公募ガイド本誌で添削企画も行っていますのでよかったらご参照ください。

『待ち合わせ1時間前の立ち読み』。私は待ち合わせ時間よりも早く着いてしまうことが多いのでこの句はよくわかる。『姿を見つけて電話を切る』。光景が鮮明に浮かぶ句だ。同時に動きも見えてくる。誰もが経験したことがありそうだ。『カレンダーに付ける丸何色にするか』。予定によって色を変えているのだろうか。それとも相手によって色を変えているのだろうか。『このあと約束がある人といる』。「このあと何かあるんですよね」とこちらが気を遣うことになることが多い。『約束の赤福が重い』。約束のお土産が嵩張り、空港の保安検査で手間取ることもある。『ファミコンを外に放り投げた母』。約束を破ったあとの光景。当時似たようなことがよくあった。『約束を守る友達と守らない家族』。静かな怒りを感じる句である。