「#マッチング小説」結果発表!
2023年6月29日~7月7日にかけて、「公募ガイド 夏休み特別号2023」との連動企画「#マッチング小説」が開催されました。
およそ1050編(※)の作品の中から、大賞・ヒルモ賞・ヨルモ賞を各1編ずつと、佳作を5編、書き出し特別賞を1編選出いたしました!
※「書き出し」についた「結末」の数から算出
▼募集要項はこちら
https://www.koubo.co.jp/student/2023summer/other.html#summer
初めての試みでしたので、応募作が集まらなかったらどうしよう……ただの大喜利になってしまったらどうしよう……という不安がありましたが、非常にクオリティの高い作品をたくさんご投稿いただき、うれしい悲鳴です。
どの作品も面白く、悩みに悩みぬいて選んだ9編をぜひご覧ください!
【書き出し】桜 花音(@ka_sakura39)
表彰状を笑顔で受け取る彼女を見てそう思った。
ピアノを弾くこと以外、何も知らない私の指は、ついに今年も選ばれなかった。
【結末】ちぃひろ(@chi_hirobunko)
【評】
堂々の1位です。本作の「書き出し」は男性とも女性ともとれる視点が置かれ、「少し剥がれかけたネイル」という想像力を掻き立てられるアイテムが配置されています。恋の話かな? と思わせておいてのこの結末がすごい。おそらくネイルをしてもしなくてもピアノがうまい天才肌の「彼女」に対する「私」の嫉妬と自己嫌悪が婉曲的に書かれています。そうとはっきり書いていないのに、間のストーリーが想像でき、登場人物のキャラクター性が鮮やかに見えてくる、素晴らしい作品でした!
【書き出し】y0k0t0m0(@y0k0t0m0)
私は言った。
「熱々の鍋焼きうどんを私からあの人に」
【結末】氷堂出雲@エブリスタ・公募修行中(@HyodoIzumo)
【評】
「書き出し」と「結末」の間に何があったんだ! と一番気になった作品です。「私」と「あの人」のバディものなのかな。きっと「あの人」はちょっと嫌味っぽいけど憎めない先輩刑事か探偵か何かで、事件を二人で解決するんだけれども、実は犯人は「あの人」本人で、服役を終えて出所した「あの人」とビアガーデンで再会する、みたいな話なんでしょうか。妄想がいくらでもふくらみます。「書き出し」も「結末」もややテンプレ的でありながら、二つが合わさることによって調和が生まれる。これがマッチング小説の醍醐味ですね。
【書き出し】amanatz(@ama_natz)
ぼふは、ふひひはひふはほほほはほほほほへひひひほひへひは。
【結末】たらはかに with T.(田原にか)(@tarahakani)
【評】
主人公が小説が進むにつれて徐々に失語していく過程を想像しました。口にものを含みながら、喋る。そんな日常のシーンに続く「あとは、あなたが決める番」というセリフに不気味さと迫力を感じます。書き出しと結末で、登場人物たちは何を喋っているのでしょうか。やけに長い最後の「私」のセリフから、狂っていく登場人物の姿も見える。想像がふくらむ書き出しと、結末の余韻がうまく組み合わさっているなと思いました。中身の部分もぜひ読んでみたいです。
【書き出し】鈴(@suzu_nasuzusiro)
【結末】置き土産(@okimiyage_1)
【評】
ほんわかしたファンタジーの幕開け……と思わせてまさかの「スーパービッグ宇宙ラッコ」。引きのある書き出しと勢いマックスの結末がマッチングしたことによる「何が起こったんだ……!?」感に脱帽です。
【書き出し】たらはかに with T.(田原にか)(@tarahakani)
感慨深そうに私を見つめる父の腕に手を添えると、バージンロードへと向かう扉が大きく開いた。
でもお父さん。本当はブルーインパルスでプロポーズされても断れる人になりたかったよ。
私は満面の笑みを携えて一歩を踏み出した。
【結末】豆島 圭(@mameshima_k)
【評】
「書き出し」の投げ方がまず巧妙です。そして「結末」の落としどころも面白い。主人公はブルーインパルスの整備士か、別の機体に乗っているパイロットだと嬉しいなと思います。全体を貫く青空のイメージがさわやかで、大好きな作品です
【書き出し】たつのこ龍次郎(りゅうじろう)(@ttnkryujiro))
ちょっと待って。7年前のみんなに伝えたいのだが、未来ではみんな幸せに暮らしている。2年前の情報は一方的で、AI様を誤解している。
待て、11年前のみん――
【結末】橋立 きょも~📙@ノベルピア🥞3食パンケーキ🥞パンケーキの食い過ぎで髪が黄色くなりました🥞(@Kyomou_sarh)
【評】
書き出しで投げられた「伝えたいこと」自体にフォーカスしない結末が特徴的でした。藤子・F・不二雄作品のような、巧妙なSF短編の気配を感じます。
【書き出し】みなはらつかさ@「神奈さんとアメリちゃん」単行本発売中!(@singenti)
我が左傍を歩む小娘は腹を抱えておった。
【結末】群鳥安民(@shiharaiyuyo)
【評】
書き出しから結末にいたるまでのストーリーが鮮明に想像できました。呂尚は古代中国の軍師。どのような人物であったかは謎に包まれているそう。「小娘」との口調の対比によって、最小限の情報にも関わらず、呂尚の表情が浮かんできます。
【書き出し】aoi.tamago(@_aoi_tamago)
【結末】雪乃かぜ(@kaze_yukikaze)
【評】
一文で物語のただなかに入りこむ書き出しが素晴らしいです。ちょっと伊坂幸太郎さんみたいだなとも。結末もクールで、全体の印象が伝わってきます。
書き出し特別賞
【書き出し】たらはかに with T.(田原にか)(@tarahakani)
【評】
突拍子もないエピソードが、不思議なくらい淡々と語られています。兄が消えたのになぜあんなに冷静なのか。そもそもどんな物語が始まるのか。不吉な香りがプンプン漂う素晴らしい書き出しです。
マッチング小説のポイントは、
- 結末が最後の一文らしい文章になっている
- あっと言わせるオチがある
- 様々な内容を想像させる
ことです。どんなに素敵な書き出しでも、よい結末がなければ作品として成り立ちませんし、逆に書き出しと結末がありきたりでも、見事な化学反応が起きて大化けしている作品もあります。
マッチング小説のおもしろいところですね。
皆さんはどの作品がお気に入りですか?
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