第24回「小説でもどうぞ」選外佳作 似た者同士 毒島愛倫
第24回結果発表
課 題
偶然
※応募数266編
選外佳作
似た者同士 毒島愛倫
似た者同士 毒島愛倫
ゼミで一緒になるあの女、私に似ている。
髪型、服装、小物……全部私と一緒。
今日は、最近カレにプレゼントしてもらったネックレスをつけてきたけど、あの女も同じものをつけていた。
「あら、奇遇ね」
あの女は決まってそう言う。これは本当に偶然なのか。それとも、私があの女に似せようとしているのか。……いや、それはない。だって、最初にゼミに参加したのは私で、あの女はあとから参加したのだ。もしかして、あの女は私に憧れて似せているのか……。考えても埒が明かない。とりあえず、ゼミが終わったから、アパートに帰ろう。
アパートへ向かう途中、後ろから声をかけられた。
「あら奇遇ね。あなたもこの辺に住んでいるの?」
あの女だ。
もしかしてストーカー? いや、こうやって話しかけてくるんだから、それはないか。でも、なんだか気味が悪い。
あの女は私の横に来ると、話を続けた。
「私たち、似た者同士だと思っていたけど、まさか住んでいる地域も一緒だなんて、すごく奇遇ね。もしかしたら、前世は双子だったかもしれないわね」
嬉しそうにそう話すあの女。私は無視して早足で振り切ろうとした。
するとあの女は「じゃあ明日またゼミで」と言って、小走りで去って行った。
今日はカレの誕生日。
カレの好きなレモンのチーズケーキを買いに、行きつけのケーキ屋さんに入った。
「あら、奇遇ね。あなたもこのお店にケーキを買いに来たのね」
あの女がいた。この店は穴場だから、あまり知られていないはずなのに……。何も答えないでいると、あの女は話を続けた。
「ここのチーズケーキ、すごく美味しいのよ。上にレモンが乗っているの」
あの女は、私が買おうとしていたレモンのチーズケーキをホールで買っていた。つまり、私の分はない。
「それじゃあ、またゼミで会いましょう」
女は涼しい顔をして、店から出て行った。
あの女、嫌がらせしているに違いない。絶対そうだ。
私は、怒りにも似た感情を抱いて、あの女のあとをつけた。
あの女がアパートに入って行くのが見えた。しかもそのアパートは、カレと同棲している私のアパートだ。
まさか、アパートまで一緒だったなんて、こんな偶然……。背筋がぞっとした。
音を立てないよう慎重に階段を登る。
あの女が部屋の前で止まった。私は慌てて身を隠す。
あの女は、私とカレが住む部屋にインターホンを押さずに入って行った。
心の中がもやもやする。カレに限って浮気だなんて……。でも、よく考えたら私の服装と髪型って、カレの趣味に合わせたんだ。それに、小物もカレが勧めてくれたものを使っている。合点がいく。
アパートのドアを開けると、あの女が台所でケーキを切り分けていた。
「あら、奇遇ね。あなたもカレのこと好きなのね。私もカレのこと――」
「いい加減にして! いったい何なの、人の男と浮気して奇遇って。あなた頭おかしいんじゃ――」
ギィィと、ドアが開いた。
カレだ。カレが女を連れて入って来た。女の姿は、私とあの女と似ている。はらわたが煮えくり返った。
「ちょっと、何なのよこの女! あなたいったい何人と浮気しているの、答えなさいよ!」
叫びにも似た声を上げて、カレの肩を揺らした。だけどカレは、私のことを無視している。まるで、私のことなんて見えていないみたいに。
するとカレは唐突に、バッグから包丁を取り出して、一緒に入って来た女を刺した。私は驚いて腰を抜かし、その場に座り込んだ。
カレは、女が息絶えたのを確認すると、押し入れを開けた。そこには、私とあの女が横たわっていた。
「あら、奇遇ね。あなたもカレに殺されたのね。私たちって本当に似た者同士ね」
あの女の身体は透き通っていた。
これは夢だ、これは夢だ……。私は自分にそう言い聞かせ、両手で頭を押さえようとした。が、私の両手は透き通っていた。
透き通った両手の先にカレが見える。さっき刺した女を、押し入れに放り込んでいる。
それを見たあの女は、気持ち悪いくらい嬉しそうな顔で、私にこう言った。
「これでまた、似た者同士が増えるわね」
(了)