第24回「小説でもどうぞ」課題「偶然」結果と講評
1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第27回 [ 病 ]
10/1~10/31(消印有効)
■第28回 [ 誓い ]
11/1~11/30(消印有効)
※募集期間外の応募は無効になります。
偶然
正直にいって、今回は低調だった。「偶然」というテーマが難しかったのか。書きやすいテーマはいいとして、書きにくいテーマの時にこそ、書き手の技量が試されるのだが。
酔葉了さんの「緻密な戦略」では「例の神社から依頼を受けた男たちの仕事ぶりが描かれる。男たちの会社は「神社や占い師の下請け」だ。どんな仕事? 彼らのミッションは、ある日、ある男を、ある電車の「二両目の二つ目のドア」から乗せること。そんなことが可能なのか。それにどんな意味があるのか。一切わからないまま、ミッションは進行し最後に……なるほど。面白かった。だが、正直なところ、そこまで無理しなくていいのではと思えてくる。この作品がベストだが、残念ながら、今回は最優秀作はなしとしたい。
山本絢さんの「会いたくて」は切ないお話だ。「森美雨」は、昨年、短大二年目の夏休みに近くの自動車学校に通った。教習所で教えてくれた指導員の村上に美雨は恋するようになる。よくある話だ。卒業してからも会いたい美雨は、村上の運転コースに車で出かける。偶然に出会うために。なかなか会えないまま、美雨は別の男性が好きなり、ドライブに出かける。その途中、偶然、パソコンで教習所チャンネルを見かける。そこには村上が……でも、このオチ、というか結末、なんだかもやもやするのだが。
河音直歩さんの「なんて呆れるような、不幸な偶然」はタイトルに「偶然」を入れた。いったいどんな話なのか。まず「エリ」という女が現れる。どうやら宇宙船が不時着して怪我をしたらしい。とある小さな集落にたどり着き、声をかけてくれた老人の世話で、ある空き家で休むことになる。数カ月後、エリと同じように怪我を負った男が現れ、やはり老人の案内で別の空き家で療養する。なんと、この二人(?)は別の異星人同士で、どちらも地球侵略のためにやって来たのだ。その偶然の理由は……ちょっと複雑すぎる?
福来ひかるさんの「理想の人」は、飛行機の中でのお話。CAの「私」は「理想の人」を見つけるためにアナウンスをする。「お客樣の中にお医者様はいらっしゃいませんか」。いました。次は「筋肉ムッキムキのたくましい方」。いました。その次は「花火師」。いました。最後は「美味しい店」を知ってる人。いました。次々と目標の人物をゲットした理由はというと……なるほど……とはならないなあ。偶然四人が機内にいたのはいいとして、その四人が必要な理由に説得力があまりないのが残念だ。
鳥生千颯さんの「バラ色の半生」。語り手の「僕」が「バイトから帰ると、自宅の居間にテレビのクルー」がいた。街頭インタビューを受けた祖父が家まで連れて来て「ツチノコを見つけた時の話」をしていたのである。もちろん、ウソ。実は祖父は「ホラ吹き大王」なのだ。そんな祖父の「ホラ話」がきっかけで、「パッとしない一若手俳優」だった「僕」の運命が変わる。祖父とテレビに出るようになったのだ。そして十年。祖父は相変わらずホラ話をしているようだ……って、偶然をテーマにしていると言えるのだろうか。
Y助さんの「曲がり角」の主人公の「私」は、中学生の女の子。その最後の夏に「特別な思い出」を作るため、「偶然をよそおい素敵な恋を手に入れ」ようとして、「一つの計画を実行」するのだ。それは、「わざと朝寝坊をし」、「ぼさぼさの髪のまま、用意しておいた食パンをくわえ、家を飛び出」すことだった。そう、「運命の人」と「通学途中の、細い道の曲がり角」でぶつかるために、だ。そして、「全速力でその角を曲がると……」。「運命の人」ではない別の誰かとぶつかるのだが、ちょっと無理があるなあ。
紅帽子さんの「別れても好きな・人」。「私」は昔、好きだった人と、渋谷のスクランブル交差点で偶然出会う。ふたりは話をする。どうやら、事情があってふたりは別れ、「私」にはパートナーがいるらしい。突然、その人が歌い出す。この国では禁じられているのに。だから警察官がやって来て、尋問される「私」。一連の事件を知ったパートナーは、ほんとうに偶然出会っただけなのかを疑う。そして、この世界の秘密がわかる……というお話だ。この世界の設定が少しこじつけ気味ではないか。オチも少々安易かな。
白浜郁さんの「悪い偶然」は「俺」が「誰にも見られていないよな」と呟くところから始まる。「俺」は金庫に向かっている。どうやらその金庫の中身を知っているのは「俺」ひとりで、その金庫を「人生を賭けて」守り抜いてきた。「俺」は「宿敵」たちに邪魔させないように、封じこめる準備もし尽くした。あとは、やるだけなのだ。なのになぜ不安なのか。誰かに見られる確率は「サイコロで十回ともゾロ目の一がでるようなものだ」。そこで「俺」は頭の中でサイコロを振ってみる……。どんな話なのか見えないのだが。
■第27回 [ 病 ]
まったく病と無関係な人はいないでしょう。みんなどこかしら病んでいます。心かからだのどこかが。いや、健康に見えて病だったり、病に見えて健康だったり。ちなみに、わたしは心身ともに健康です……たぶん……。
■第28回 [ 誓い ]いろんなところでいろんなことを我々は誓う。結婚式のときには永遠の愛を。泥酔してみんな迷惑をかけたときには「もう二度と飲みません!」と。みなさんは、どんなときに、どんなことを誓いますか?
■第27回 [ 病 ]
10/1~10/31(消印有効)
■第28回 [ 誓い ]
11/1~11/30(消印有効)
A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。
郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。
作品には表紙をつけ(枚数外)、タイトル、氏名を明記。
別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿末尾に並べ、ホッチキスで右上を綴じる(ゼムクリップ不可)。コピー原稿には別紙は不要。
作品にはノンブル(ページ番号)をふること。
作品は封筒に裸で入れ、折らないこと。作品の返却は不可。
※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。
未発表オリジナル作品とし、入選作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
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第27回 2024/1/1、Koubo上
第28回 2024/2/1、Koubo上
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佳作7編=記念品
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