せきしろの自由律俳句 第79回「名前」結果発表 (2/3)
第 79回 課題: 名前
佳作
名前も出てこないし似顔絵も描けない
(京都府 どらまにあ 59歳)
ありのままの名で立つバス停にもらう元気
(東京都 根本史紀 52歳)
地名を読み間違えて余所者
(大阪府 石川かるた 49歳)
中学時代のあだ名で居酒屋にいる
(東京都 ぺりくり 47歳)
わたなべのなべを拡大して書き写す
(東京都 おち葉 34歳)
キムタクより先に生まれたキムタクもいる
(東京都 QUDO 26歳)
好きなしりとりは架空の映画タイトルしりとり
(東京都 椎名祐衣 34歳)
偽名名乗る順番待ちのシート
(愛知県 紅紫あやめ 30歳)
由来を聞いて照れる
(滋賀県 うさぎのおしり 17歳)
下の名前だけわかる
(東京都 しじみ 23歳)
読みが違ったまま話が進む
(千葉県 桜那恵 25歳)
私を名付け親にしてくれた寝顔
(石川県 牧 36歳)
距離感忘れてさん付けに戻る
(北海道 エリンギ 36歳)
知っているがパンの袋をとめるやつと呼ぶ
(大阪府 古賀 39歳)
四股名を考えて時間を潰す
(大阪府 石川聡 42歳)
少なくとも向こうは知っている
(東京都 増田鹿 42歳)
名前を無くして親になる
(東京都 稲葉智子 44歳)
猫も子も振り向く
(愛知県 ミワサン 45歳)
父の名前残したままの表札
(大阪府 カメコリー 48歳)
大型のチビに吠えられて
(兵庫県 天野 ボンド 48歳)
小林製薬的だね
(兵庫県 モリ ギネス 51歳)
珍馬名を100円だけ買う
(岐阜県 場外 52歳)
ピースという名の八月の子犬
(千葉県 xissa 58歳)
老いた母に弟の名で呼ばれる
(神奈川 老人生(ろうにんせい) 66歳)
フォルダー名は呼んだことのない愛称
(群馬県 多恵 72歳)
有名人と同じ名診察呼ばれる
(兵庫県 城太郎 80歳)
同姓同名検索してみる独り
(山口県 与志朗 84歳)
つるつるのカードにボールペン滑らす
(長崎県 毎日ハッピー 45歳)
『名前も出てこないし似顔絵も描けない』。名前から似顔絵への飛躍がおもしろい。『ありのままの名で立つバス停にもらう元気』。確かに「ありのままの名前のバス停だなあ」と思うことがある。たとえ一瞬だとしても嫌なことを忘れて元気になる。『地名を読み間違えて余所者』。地元の人ではないとバレる瞬間。ちょっとした推理小説のような俳句。『中学時代のあだ名で居酒屋にいる』。日常生活ではもうあだ名で呼ばれる機会などないのにそこでは当然のように呼ばれるもの。盛り上がりが伝わってくる。『わたなべのなべを拡大して書き写す』。私はこれをよくやる。さいとうのさいも拡大することが多い。『キムタクより先に生まれたキムタクもいる』『好きなしりとりは架空の映画タイトルしりとり』。どちらも「しらねーよ!」「だからなんだよ!」と笑ってしまう俳句。良い意味で無駄な言語化であり、失いたくない感性だ。『偽名名乗る順番待ちのシート』。私は偽名を使うというより、「せきしろ」ではなく「せき」にして順番待ちすることが多い。ちなみに添削になってしまうが「名乗る」よりも「名乗り」「名乗って」の方がすっと情景が浮かびやすい。自由律俳句の添削は『季刊公募ガイド』でやっているので、興味があれば読んでもらいたい。採用率が上がることだろう。