笑いを知れば、もっと小説は上手くなる⑥:先が読みたくなる導入部を考えよ!


どんな書き出しなら、あなたはその小説を読みたいと思いますか。
ここでは定番になりつつある倒叙型の導入部について学びます。
導入部は物語の命。10パターンは考えよう
小説の導入部はとても大事です。文学作品の中には、ジェットコースターの最初のようにだらだらと上っていき、頂点から一気に加速して下降ものもあります。
しかし、普通の小説でそれをしたらいけません。読者は冒頭の数ページを読んだだけで立ち読みをやめてしまいますし、あとで面白くする筆力があるのなら、最初から面白くしてくれと思うでしょう。
では、面白くするコツは? ひとつはやはり謎です。これはどういう話なのか、どうなるのか、知的好奇心をそそれれば最高です。
ただ、ここで注意しなくてはいけないのは、隠しすぎること。読者は謎が好きですが、謎を謎のまま引っ張られるのは嫌いなのです。
「答えはまた明日」なんて言われたら、今教えてほしいと思ってしまいます。ことに、話がどこに進むのかがわからないのは最悪です。
となると、読み手の興味を惹き、ゴールを見せつつ、しかし、謎は配するわけですから、これは一筋縄ではいきません。
とりあえず、10パターンぐらい考えて、その中から最良のものを選べれば一番いいです。
倒叙にして謎を創出するという手も
導入部のパターンはいろいろありますが、今では定番になりつつあるのが、結末(またはその一つ前)を冒頭に持ってくる方法です。
結末を最初に書くということは、物語が進む方法を示すということです。その一方で、どうしてそんなことになったのかという疑問を残すこともできます。
いわゆる倒叙型ですが、一度試してみるのもいいでしょう。
Q:以下の話に、効果的な導入部を付けてください。
私たちは、以前、船乗りをしていました。
あるとき、私たちは遭難し、小さな島にたどり着きました。そこには動物もいなければ植物もなく、船にあった食料はたちまち底をつきました。
私は比較的元気でしたが、乗組員の鷹田は衰弱が激しく、意識がもうろうとしていました。
私は島中を歩き、食料を探しましたが、どこにも見つけられませんでした。
しかし、運がいいことに、遭難して七日目に、ようやく食材を手にすることができました。私はそれで温かいスープを作り、鷹田に食べさせました。
鷹田はこれはなんだと聞きました。
「ウミガメのスープだ」
鷹田は、自分の命を救ったこのウミガメのスープの味を決して忘れないと言いました。
運命は皮肉です。この翌日、私たちは救助隊によって発見されました。
救助隊員は無線にこう言いました。
「遭難者三名のうち、二名の生存者を発見」
私たちは最初、三名いたのです。
【模範解答】
上記の話は、直木賞作家・景山民夫のエッセイに書かれ、後にテレビ番組「世にも奇妙な物語」でドラマ化されたものをアレンジしたもの。
では、解答の例を。
鷹田はあるレストランに入ると、ウミガメのスープを注文した。一口飲むとシェフに聞いた。
「これは本当にウミガメのスープですか」
シェフがうなずくと、鷹田は席を立ち、会計を済ませて店を出た。
翌日、厩田は海に身投げし、自殺した。
私は鷹田の葬儀に行った。そこである新聞記者に問い詰められ、私はこう語った。
※本記事は「公募ガイド2017年6月号」の記事を再掲載したものです。