フリーライター養成講座3:商業文の書き方とインタビューの方法
私的な文章とは違う
ブログやエッセイでは、自分の書きたいことを自由に書くこともできますが、仕事として依頼されて書く商業文では、好きなことを好きなように書くというわけにはいきません。
お店の取材記事などで、敢えてライターの個人的感想を生かす企画もありますが、一般的には個は出さないのが報道文で、私見を交えたり、個人的すぎる表現をしたりするのは避けます。
大げさな表現はNG
ライターが書く商業的な文章(報道文や取材文)では、空疎な美文調や大仰な表現、過度の比喩は避けます。簡潔で明快を心掛けます。
理想は、小学生でもわかる文章です。
名文も名作も要りません。センテンスも無駄に長いのはだめですし、平易なように見えて、言語明瞭、意味不明というのもだめです。悪い意味での文学臭のない、透明度の高い文章が望まれます。
重要なことは先に
新聞記事では重要なことを先に書きます。詳しく知りたい読者は先を読み、忙しい読者はそこで読むのをやめても大丈夫なようになっているわけですが、重要なことや結論を先に書くと、全体像がつかみやすくなるという利点があります。
これをトピック・センテンスと言います。文章(段落)の要旨がわかる一文ですね。これが先に書いてあると、文章は格段にわかりやすくなります。
読者は不特定多数
新聞や雑誌、WEBには多様な読者がいます。特に一般の全国紙は、全国津々浦々、老若男女が読者ですから、一部の人にしかわからない表現は避けるか、説明を添えるようにします。
専門紙(誌)となると、ある程度、読者像がはっきりしますが、いずれにしても、「年齢も出身も定かでない不特定多数の赤の他人に向かって書く(わからせる)」という意識が重要になります。
読者はお客様
商業文の読者は、お客様です。読みやすいのはもちろん、余計な負担や手間はかけないように配慮します。それはおもねるというのとは違います。おもてなしに近いものです。
たとえば、構文が複雑で読みにくい、係り受け関係が明白でない、センテンスが長すぎる(短すぎる)、難読漢字や専門用語が多く、なんの説明もないような文章は不親切と言わざるを得ません。
必要な情報を盛り込む
ある店を取材し、人気メニューについては十分に書いたけれど、では、お店はどこにあるのか? 最寄り駅は? 駐車場は? 営業時間は? 定休日は? 問い合わせ先は? ということがわからないと情報が活用できません。
また、同じ分量を読むのなら、そこから得られる情報は多いに越したことはありません。空疎な表現をして、すかすかの文章にならないよう注意しましょう。
常用漢字を知っておく
老若男女が読む新聞は、常用漢字表にのっとって書きます。今、「のっとって」と書きました。漢字の「則る」は表外音訓だからです。「規則」のように音読みで使うのはいいですが、訓読みの「則る」は常用漢字表に記載されてない訓読みです。そのため、かな書きにされます。
雑誌の場合は新聞ほどうるさくはないですが、どの雑誌にも流儀がありますから、「私のやり方」は通用しません。
説明力と描写力
商業文にはだいたい文字数制限がありますから、決められた字数の中で要領よく説明しなければなりませんし、取材した店なり人なりがありありと浮かぶような文章であることも求められます。
説明と描写は、長くていいなら簡単ですが、それでは効率が悪いです。文章は短いのに、そこには必要な情報が過不足なく詰め込まれ、イメージも明確に引き出せる。そういう文章が理想です。
インタビューに必要なもの
インタビューの際には、事前に対象者について調べておき、著作があれば読んでおきます。「そんなことも知らないのか」と思われては相手に失礼ですし、それではライター失格です。
ICレコーダーは、「メモをとるのに追われてこっちの話を聞いてない」と思われないためにも必携です。しかし、録音できていなかったということもないではありません。ICレコーダーは「正確にはなんと言っていたっけ?」というときの確認用とし、ポイントはメモしておきましょう。
話し上手より聞き上手
インタビューというと、人見知りせず、話術も巧みである必要があると錯覚しがちですが、ほとんど無関係です。初対面の人と友だちにはなれなくとも、それと仕事として質問するのは別ですし、それにすぐに慣れます。また、話し上手である必要はないと言ってもよく、むしろ、聞き上手であることが求められます。
質問は事前に考えておきます。思いついたままの順番で聞くのではなく、原稿の完成形を想定して聞く順番を考えます。
話題が逸れてしまっても話は聞き、自然に話を戻すようコントロールします。
三つの原稿の形式
インタビュー原稿は、大別すると三種類の書き方があります。
一つはQ&A形式。これは話し手と聞き手が言ったままの言葉を文章にしたものです。臨場感があり、雰囲気も伝わりやすくなります。
もう一つは、地の文があり、ときどきセリフが出てくるパターンです。効率よく説明するのには向きますが、ライブ感はなくなり、微妙なニュアンスも伝えにくくなります。
ほか、地の文全体が談話という形式もあります。
相手が話しやすいように
相手が口下手という場合もありますし、インタビューではいきなり本論には入らず、軽く雑談などして座を温めます。口調はゆっくりで、過度に早口にならないように注意し、質問は明快を旨とします。
また、「○○についてどう思いますか」ならいいですが、イエス・ノーで答えれば済む質問はしないようにします。
相手が話しているときのあいづちは、「なるほど」「そうなんですか(知りませんでした)」「そうですよね(同感です)」など、相手が話にのってきて、もっと話したくなるようなものが望ましいです。
インタビューの形式
Q&A形式
――小説を書き始めたのは?
中学生頃だったと思います。最初は星新一、そのうち純文学などにも手を染めるようになり、図書館にあるものは全部読みました。暇人ですね。
――それで自分でも書いてみようと?
きっかけは文集に載ったことでした。あのとき、読まれる喜びを知りましたし、「あ、僕って書ける人かも」と思って。
地の文
東京都在住の会社員、小宇保展策さん(28歳)が小説を書き始めたのは中学生の頃だった。最初は星新一、そのうち純文学なども読み始め、図書館にあるものは全部読んだそうだ。
このときは書く側ではなかったが、校内作文コンクールに入選し、文集に掲載されたことがきっかけで、小宇保さんは書く楽しみ、読まれる喜びを知る……。
談話形式
小説を書き始めたのは、中学生頃でした。最初は星新一、そのうち純文学などにも手を染めるようになり、図書館にあるものは全部読みました。暇人ですね。
でも、そのときはまだ書こうとまでは思っていませんでした。きっかけ? 文集に載ったことですね。あのとき、読まれる喜びを知りましたし、「あ、僕って書ける人かも」と思って(談)。
※本記事は「公募ガイド2013年12月号」の記事を再掲載したものです。