あなたとよむ短歌 vol.51 テーマ詠「デート」結果発表 ~短歌を続けていくと~(1/3)
テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。
(『母の愛、僕のラブ』より)
テーマ詠「デート」結果発表
~短歌を続けていくと~
短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。
今回はテーマ詠「デート」の結果発表です。
「デート」は、英単語としては「日にち」などの意味もありますが、応募された短歌のほとんどは「恋人関係の人と会うこと」を詠んだものでした。相手があることなので、どの短歌にも他者の存在が感じられます。読んでいるだけで多くの人々を観察したような気持ちになりました。
今回は、投稿者の方からよせられた質問もご紹介しています。ぜひ入賞作品とあわせてお読みください。
似合っていさうな恋をしている
デートの場所を比喩的にとらえ、二人の恋の関係性を表現した短歌です。
花の下で会うのが似合う恋と、窓のない地下の喫茶店が似合う恋は、たしかに違いそうですね。前者は、季節にすら祝福された恋。後者は、人目をはばかるような恋かもしれません。もしくは、前者は初々しくフレッシュな若者の恋、後者は落ち着いて語らうことに喜びを感じる大人の恋かもしれません。あなたはこの比喩からどんな恋を想像しますか?
「さうな」というクラシックな文体も効いています。
続いて、優秀賞2首です。
小銭たくさん持ってる夫と
夫の通院に付き添っている様子です。小銭をたくさん持ってランチするという描写から、おしゃれなレストランで食事をするわけではなさそうです。もしかしたら大きな総合病院で、院内に食堂があるのかもしれません。だとしたら、診察までの待ち時間も長そうですね。
この作品がテーマ詠「デート」の公募に提出されている点に、胸がキュンとなります。
つい小銭をためてしまうのか、用意周到なのかわかりませんが、とにかく「小銭たくさん持っている」という癖すら共有する伴侶と、病院ついでのランチを「デート」と思えるその気持ち。あたたかな関係が伝わってきます。
もう私を好きじゃない貴方に
「さるすべり色」という表現が印象的です。サルスベリは夏の終わりから秋にかけてあざやかなピンクの花をつけますが、なんとなく、あの人肌のような幹の色のほうを思い浮かべました。艶のあるベージュのバッグなのかもしれません。
木登りがうまいサルですら滑りおちてしまうという「さるすべり」は、すり抜けて離れてしまう恋の終わりを象徴しているようです。恋愛を終わらせにいく勇気や決意が「さるすべり色」に表現されています。