直木賞作家・木内昇氏の新作長篇『雪夢往来』が12月16日に新潮社から発売される。本作は、江戸時代のベストセラー『北越雪譜』の知られざる舞台裏を描いた小説だ。

『北越雪譜』は、越後の商人・鈴木牧之が著した雪国の風俗や綺談をまとめた書物である。しかし、その刊行までの道のりは決して平坦ではなかった。初稿完成から実に40年もの歳月を要したのだ。

本作では、山東京伝、滝沢馬琴、山東京山といった江戸の著名な戯作者たちが登場し、4つの視点から『北越雪譜』の波乱万丈な出版過程が描かれる。版元との金銭トラブル、仲介者の突然の死、原稿の盗用疑惑など、数々の障害に直面しながらも、牧之の諦めない姿勢が浮き彫りになる。

舞台は2025年の大河ドラマ「べらぼう」の主人公、蔦屋重三郎が亡くなった直後。現代の出版システムの基礎が形成されつつある時代だ。版元と作家の駆け引きは、まさに息をのむほどの緊張感に満ちている。

また、本作は江戸と越後の文化的・地理的な隔たりにも焦点を当てる。現代では新幹線で1時間半の距離だが、当時はまるで別世界。そんな二つの地域を『北越雪譜』がいかにして結びつけたのかも描かれ、読者を魅了する。

木内昇氏は1967年生まれ。2011年に『漂砂のうたう』で直木賞を受賞し、『櫛挽道守』では中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞するなど、多くの作品で高い評価を得ている。

『雪夢往来』は四六判ソフトカバー、400ページ、定価2,200円。ISBN：978-4-10-350957-8。江戸時代の出版界の裏側や、一つの名著が生まれるまでの苦難の道のりに興味がある方には、必読の一冊となるだろう。

出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001819.000047877.html