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「伏線」を宿すために「なぜ書きたいか」を突き詰める|フジテレビヤングシナリオ大賞インタビュー

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「伏線」の魅力
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フジテレビが主催する「ヤングシナリオ大賞」は、数多くのプロ脚本家を発掘してきた日本屈指の脚本コンテストだ。第37回の応募総数は1,477本。選考委員のプロデューサーやディレクターが口を揃えて「年々レベルが上がっている」と語るほど、応募作品の質は高まり続けている。今回、『波うららかに、めおと日和』や『風間公親-教場0-』など多くのヒット作を手掛け、第37回で審査委員長を務めたフジテレビ・スタジオ戦略本部第一スタジオプロデューサーの宋ハナ氏に、特集テーマである「伏線」を軸に話を聞いた。

1時間の脚本で伏線をきれいに張る難しさ

──第37回の応募総数は1,477本。今回の全体的な印象はいかがでしたか。

面白い作品がたくさんありました。審査に携わったみんなが「レベルが高い」という同じ意見を持っていましたね。今回は評価すべき良い作品が本当に多かったため、佳作を含め受賞作品数が多くなりました。

──大賞作『もうええわ』は、「結末における裏切り」が評価されていました。伏線を張って最後に回収する技術力は、審査においてどの程度影響しますか。

技術の一つでもありますから、見事にハマったときにはもちろん評価します。ただ、ヤングシナリオ大賞は約1時間に相当するものを応募していただくので、その中で伏線を張って回収まですべてやるのはハードルが高い。構成をうまくやろうとすると、1時間はとても短く感じます。伏線の度合いにもよりますが、実際、伏線がきれいにハマった作品はそう多くない印象ですね。

狙ったドンデン返しより「予想外の納得感」を

──応募者にとって「どうすれば効果的な伏線を張れるか」は切実な問いだと思います。宋さんはどうお考えですか。

難しいですね……(笑)。言えるのは、約1時間尺の完結作品だとドンデン返しをしようとしても、読む側がある程度予想できてしまいます。それよりは、全く予想もしないところに驚きがあったほうが、「なるほど、そういうことだったのか」と納得できるので伏線として魅力的だと思います。

──最近はSNSでの「考察」文化が盛り上がっていますが、制作者としてはどう捉えていますか。

率直に言うと、皆さんの考察に対するレベルがすごく上がっていて、作り手側はそれを超えなければならないというプレッシャーは常にありますね。制作側でがんばって伏線を作って世の中に出してもあっさり見破られたりしますから。逆に、制作側であまり伏線として意識していなかった場面を考察の一部として挙げてくれる、ということもあります。どちらにしても、一緒に盛り上がってくださる方が多くなるのは良いことだと思っています。

──考察を狙いにいくことはあるのでしょうか。

狙いたいんですけど、正直あまり自信がありません(笑)。結局考察が先行するより最終的に観てくださる方々がキャラクターにどういう温度感で気持ちを動かされたか──それが一番大事だと思っています。そのバランスが難しいなと思いながら、他のドラマも観ていますね。

自分にしか書けない物語を突き詰める

──佳作の『燃え尽きても』は「設定を使い切っている」と評価されていました。具体的にどういう点が評価のポイントでしたか。

たとえば『燃え尽きても』で使われているボクシングという題材って、「ロッキー」のような名作のストーリーが皆さんの頭にある程度浮かびます。でも『燃え尽きても』は、ボクシングという題材でもVRという要素との掛け合わせも含め、読む人の予想をいい意味で裏切る場面もあって「観たことがある」で終わらない作品になっていたことが評価のポイントです。

──「既視感」は応募作品の審査で必ず議論になるテーマだと思います。独自の観察眼を作品に落とし込むために必要なことは何でしょう。

作家の皆さんが「何を伝えたいか」というゴールがハッキリしていれば、構造やセリフの違いが作家さん一人ひとりの個性によって自然とあらわれてくるのではないかと思っています。まずは自分が作り上げたい世界観をハッキリさせることだと思います。キャラクターをどう作り上げるか、どういう構造にするか、余白をどこまで残すか──手法はいろいろあると思います。

伏線を支える「キャラクター」の力

──審査の中で、宋さんご自身が「光るもの」を感じるのはどういうところですか。

私は「キャラクター」かもしれません。脚本は人の物語だと思っているので、そのキャラクターをもっと見たいと思うかどうかですね。

──選考には明確な採点基準があるのでしょうか。

点数のようなものはないです。読んだ審査員それぞれに任されています。脚本って物差しがはっきりしているものではないと思いますので、共通で評価する部分もあれば、ある人には構成力が光って見えますし、セリフの一言に可能性を感じる人もいる。審査員それぞれ違いますね。

──キャラクターが核になっていれば、伏線も自然に機能するということでしょうか。

登場人物がどう動いて結末がどうなるか、キャラクター像がしっかり定まっていないと、途中からブレて物語が揺らいでしまいます。伏線も同じで、人物像がブレていたら伏線も機能しないと思います。自分がなぜこの作品を書きたいか、このキャラクターの意味は何か、まずそこがはっきりしていると伏線の道筋も見えるのではないかと思います。

ヤングシナリオ大賞という「出会いの場」

──ヤングシナリオ大賞では、3年前から最終選考に残った作者と審査員が直接面談しているそうですね。

はい。ヤングシナリオ大賞って、今後一緒に作品を作りたいという方々と作品を通じて出会う場だと思っています。実際にお会いすると、その方が本当にやりたいことや作品に込めた思いがさらに聞けるんです。「あのテーマなら、あの方と組んでみよう」というのも見えてくる。応募作品だけではわからない個性に触れることができます。

──面談では、作家としての「体力」──物語を生み出し続ける力──も見ているのでしょうか。

ヤングシナリオ大賞に応募される作品は、その方にとってベストなものを出されていると思います。その作品を踏まえお会いすることによって、今後一緒に作品を作ることを想定しさらなる可能性をも垣間見ることができる機会だと思っています。

──最終選考に残らなかった方でも、声がかかることはあるのでしょうか。

あります。1次審査から最終まで、たくさんの人が読んでいます。最終選考まで残っていなくても作品に何か光るものがある方にはコンタクトを取ることがあります。受賞された方にはもちろんチャンスが多いですが、そうでなくても「出会いの場」ではあるという印象です。応募という一つの行動が窓口になっているんです。

──受賞後の支援体制についても教えてください。

受賞者に対して脚本家育成プログラムを実施しています。実際の連続ドラマの台本打ち合わせのように、企画を立てて1話分を書いて、プロデューサーやディレクターと一緒に細かくブラッシュアップしていきます。実践そのものですね。
また、希望される方には弊社の関連会社の(株)FILMとマネジメント契約を結ぶことが出来ます。FILMがお仕事の窓口となり、フジテレビに限らず他局からもからオファーをいただけるような体制を作っています。

──フジテレビならではの強みはどこにありますか。

連続ドラマの枠を4枠持っていますし、FODというプラットフォームや映画制作、アニメもあります。物語を主軸としたコンテンツを多方面で製作しておりますので脚本家としての窓口は多く持っていると思います。

──これから応募される方に、メッセージをお願いします。

今から初めて脚本を書く方でも、書き方や学べる場はたくさんあると思います。どの物語を書くにしても「自分がなぜこの作品を書きたいか」をまずハッキリ考えてほしいです。書く人の「熱量」や「独自の視点」が作品の強度を決めるとも言われています。「私しか書けない物語はこれだ」というのがハッキリすることで、結果として「誰かの心に深く刺さる作品」に繋がると思います。

PROFILE
宋ハナ(そん・はな)
フジテレビ スタジオ戦略本部第1スタジオプロデューサー。第37回ヤングシナリオ大賞審査委員長。『風間公親-教場0-』『波うららかに、めおと日和』などを手がける。