せきしろの自由律俳句 第99回「耳」結果発表 (2/3)


第 99回 課題: 耳
佳作
冬が耳を刺す 食堂で割箸割る音自分にだけ 5分だけつけたイヤリング まだ少しだけイヤリング跡 右耳に西日染み入り 耳を塞ぐと内側の滝 ピアスはあけないかもな イカの耳が美味い 枕に沈んでいる私の心臓 耳にもはねていた泥乾いて 耳に溜まった機械音 壁越しの声が遠い国の言葉 すませど私の呼吸 福耳なのにねと言われる 鳥の耳の場所を検索 耳赤すぎて邪推 教室中の耳がこちらを向く リビングに集まった耳が別々の音を聞いている 犬も耳冷たかろう粉雪 心地よい嘘を聞き分け出来ぬ春嵐
『冬が耳を刺す』 『食堂で割箸割る音自分にだけ』 『5分だけつけたイヤリング』 『右耳に西日染み入り』 『耳を塞ぐと内側の滝』 『ピアスはあけないかもな』 『枕に沈んでいる私の心臓』 『耳にもはねていた泥乾いて』 『耳に溜まった機械音』
(岐阜県 次元 33歳)
(福岡県 とくねん 68歳)
(愛知県 みくる 17歳)
(千葉県 泡生爽 17歳)
(埼玉県 東沖和季 22歳)
(大阪府 まちこまち 20歳)
(静岡県 マツナガ 29歳)
(東京都 根本史紀 54歳)
(茨城県 しばみち 51歳)
(長崎県 毎日ハッピー 45歳)
(宮城県 淋雲 15歳)
(千葉県 ような恵 27歳)
(神奈川県 コーン茶 28歳)
(北海道 エリンギ 38歳)
(東京都 さかまさみ 39歳)
(京都府 きよむ 44歳)
(京都府 Isohama 48歳)
(愛知県 秋穂 51歳)
(千葉県 xissa 59歳)
(千葉県 牛美 87歳)
痛くて、かつ強い句。寒さが伝わってくる勢いがもの凄い。
丁寧に静かに割ったのか、それとも音を聞く人が自分以外にいなかったのか。あるいは周囲が賑やかでかき消されたのか。様々な情景が浮かぶ、どこか孤独を感じさせる句である。
『まだ少しだけイヤリング跡』
イヤリングの句が二句。どちらも10代の句。10代の頃の感情を忘れてしまった私には羨ましくもなる作品である。
運転席か、窓際の席か。どこかはわからないが、染み入るという表現が良い。西日が全て染み入ると、やがて夜になる。
滝に例えたところが良い。関係ないが、トイレで流す音に例えていた私の高校の同級生はいま何をしているのか。
『イカの耳が美味い』
どちらも自由律俳句ではなく単なる説明文になりそうなところを、絶妙なところで保っているのはやはり詩情が感じられるからだろう。
聞こえてくる音に関するもので秀逸だった句。
「耳」がテーマで、耳より泥に焦点を当てているところが良すぎる。
まだ聞こえる音。ずっとゲームをしてた時、ずっとパチンコをしてた時、ライブを見終わった時など何度も経験がある。