せきしろの自由律俳句 第99回「耳」結果発表


結果発表
第99回 課題: 耳
せきしろの一句
会わなくなって声を忘れた
最優秀賞
百歳の耳に年齢を聞く
( 京都府 まさ 35歳)
耳に近づきながら年齢を訊ねている光景が浮かぶ。ほのぼのとしている光景だが、見ていると不意に泣いてしまう可能性も秘めている。いくつもの感情が内包された句だ。
優秀賞
無視した母の声がまだある
( 岡山県 白とり貝 35歳)
母親に何か言われたが聞こえないふりをする。その原因は知る由もない。関係性もわからない。それでも声が残っている感覚は痛いほどわかるのだ。
髪を切って耳に春風
( 埼玉県 さっちも 53歳)
髪を切り、耳を出す。春風が当たり、耳への感触で春を知る。瑞々しさがある句だ。私だと「髭を剃って頬に春風」となり、瑞々しさはゼロになる。
イラスト:飯田研人/撮影:賀地マコト