「故郷」と「周縁」を紡ぐ20年の軌跡 - 新刊『アイルランドから東北へ』が語る文学の新境地


文学の世界に新たな風を吹き込む一冊が登場する。株式会社新評論から2025年6月19日に刊行される『アイルランドから東北へ-周縁と漂着の詩学』は、著者・佐藤亨氏の20年に及ぶ思索と探求の結晶だ。本書は、2005年に出版された『異邦のふるさと「アイルランド」』の続編として位置づけられている。
佐藤氏は、アイルランドと東北という一見かけ離れた二つの地域を軸に、「周縁」と「漂着」というキーワードを通じて、現代社会の深層に迫る。本書では、民族紛争の傷跡が残るサラエヴォ、キリスト教に押しやられたペイガニズム、植民地支配による言語の優越など、社会の端に追いやられた世界に光を当てる。
特筆すべきは、著者自身の経験が本書の根底に流れていることだ。岩手から上京し、アメリカ文学からアイルランド文学へと関心を移し、やがて東北、サラエヴォ、朝鮮半島、旧満州へと視野を広げていった佐藤氏の知的遍歴が、本書の骨格を形成している。
「故郷」を「教養とは無縁の読み書き以前の精神」が形成される場所と定義する佐藤氏の視点は、グローバル化が進む現代社会において、私たちのアイデンティティの源泉を問い直す契機となるだろう。
本書は、文学研究者はもちろん、現代社会の多様性や文化の在り方に関心を持つ読者にとっても、示唆に富む一冊となりそうだ。アイルランドから東北へ、そして世界の「周縁」を巡る知的冒険の旅に、読者を誘う本書の刊行が待ち遠しい。
出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000314.000049716.html