ヤマモトショウ、作曲家活動のルーツが、「phenomenon」時代に! 【第6回 創作はいつまで続くのか】


バンドとしてプロを目指して変わったこととは?
まず、それまでは友人に見てもらえればよかっただけのライブを、自分たちのことを知らない人、これから「ファン」になってくれる人に見てもらう必要がある。そのために、お客さんがすでにたくさんいるようなライブハウスに出演する必要があると考えた。何にしても見て、聞いてもらわないことには話にならない。
【ここから会員限定】
もう一つ、デモテープ(当時ですら使っていたのはテープではなく、音源データをメールで送るか、せいぜいそれをCDなどにやいたものだったのだが、慣習としてデモテープと言っていた)をつくって、レコード会社などに送るようになった、ということである。
これを作るには自作曲を録音、編集して音源データを制作しなければならないので、私はここで初めてDTM(デスクトップミュージック、つまりパソコンを使って音源を制作することを総じて日本ではこう呼ぶ)に触れることになる。今となっては、音楽を作るうえでDTMにまったく関与しないということはほぼ不可能だが、私がそれをはじめた今から15年ほど前はどちらかといえば使いこなしているミュージシャンの方が少なかったように思う。(当時ちょっとした音源データをつくるバイトをやったことがあるのだが、ほぼ素人だった自分にそれができたのはユーザーが少なかったからだろう)。
ともかく、ソフトを買いに渋谷の楽器店にいき、入り口のすぐ近くにいた店員さんに相談してSONARというソフトを購入した。店員さんは何か色々言っていたように思うが、当時の自分にわかるはずもなく、まったく覚えていない。このSONARというソフトはのちに買収などもあって使えなくなり、私は今は別のソフトを使っている。
しかしSONARを使ってデビューしたのはもちろん、そのソフトが縁で知り合った人とは今も仕事をしているので大事な出会いではあったように思う。
よくDTMをはじめる段階の方に、どのソフトがいいかと聞かれるのだが(DTMは映像などと違ってソフトに絶対的な定番がなく10種類くらいの中から選ぶことになる)、正直にいえばどれでもそれほどやれることに違いはない。せいぜい周りに使っている人がいるものを選べば、質問ができるから良いだろう、という程度のアドバイスに留めておく。
さて、その楽器店で聞くところによると打ち込み用のキーボードと、パソコンと楽器を繋ぐオーディオインターフェースというのがマストだということで、それらを合わせて5,6万円くらいだったかと思う。大学生にとってはそれなりに大金である。
幸い大学で使うためにもっていたパソコンがあったので(これも買うとなると資金的に無理だったかもしれない)、SONARをインストールし、自分でデモテープを作ってみた。(今では考えられないことだが、当時は機材を繋いできちんと音が出るまで結構な時間がかかったものだ。今は、自分のレベルがあがったわけではなく、機材のレベルがあがっていて、大半のものはケーブルを繋ぐだけでちゃんと音が鳴る)
私が今、作曲家として日々やっているのも、このDTMで音源をつくるという作業なのでその原点がここにある。当然、当時作ったものは今から考えれば聞くに耐えないレベルのものだ。
しかし、意外なことに、このデモテープには大手レコード会社からすぐに返事があった。とりあえず5社ほど有名どころに送ってみたのだが、そのうち3社から返事があったので、少なくともまぐれということはないだろう。
メジャーレーベルからデモテープの返事が来たということで、私がその時考えたことは大きく分けると「自分に音楽の才能がないわけではなさそうだ」「メジャーデビューできるかもしれない」という二つだった。
先に後者についていっておけば、これはまったくのはやとちりだったといえる。メジャーレーベルの立場になって考えてみれば少しでも可能性があれば、とりあえずは返事をしておくものだ。
実際にとある新人発掘担当の方から聞いたことがあるのだが、その方は全盛期で年間7-8千本のデモテープが届き、そのうち、返事をしたい(一度会ってみたい、ライブを見てみたい)と思うのが100本、そこから育成期間を経てメジャーデビューするのが、1,2組だと言っていた。
前者の答えもある意味ここに含まれているわけだが、とりあえず返事が来たということは、何らかの可能性を認められたということではある。私の場合、音楽の専門的な教育を受けたわけでもなかったので、自分のつくった曲が実際どう評価されるのかという点についてまったく何の基準も持っていなかった。
そう思えば、メジャーレーベルの新人発掘担当者が「可能性があると考えた」というだけでも、一つ重要な情報を得たことになる。
私の場合少したちが悪かったのが、この時にどの会社にも言われたことが「曲はいいが、ボーカルが弱い」という点であった。このことを私は当時、「自分の作詞作曲の能力については問題ない」と解釈した。もちろん、文字通り解釈すればまさにそういうことを言われたのだが、しかし今になって思えばそれは結局自分の実力が足りていないということである。
今、まさに「プロ」の作曲家として、この時の評価を考えてみれば、それは、「ボーカルが良い」と思われるような楽曲を作れていない、ということでしかない。もちろん、ボーカルの(そしてそれ以外の演奏なども)技術が足りていなかったのはその通りだろう。しかし、音楽の良し悪しというのは技術だけで決まるわけではない。極端にいえば、誰かが「良い歌だ」と思えばそれは「良い歌」であるし、歌だけが良くない楽曲というのは、結局「良くない楽曲」なのである。
私がこのことに気づくにはここからまだしばらくのバンドとして下積み期間を要することになる。
| 次回の更新は3月4日(水)を予定。お楽しみに! |
- つくログの投稿・プロフィールページの作成
- お気に入り履歴の閲覧
- 応募時の都度情報入力不要!カンタン応募
- 季刊公募ガイド定期購読のお申込み
- メルマガ(最新の公募情報や創作のヒント)
- 会員限定記事の閲覧