富士山火山防災で産業創出、5社の実証成果を報告会で披露


火山防災ビジネスの創出に向けた新しい取り組み
山梨県は火山防災ビジネスの創出と活性化を目指し、日本初となる火山防災に特化したビジネスコンテスト『やまなし火山防災イノベーションピッチコンテスト』を実施している。採択企業に対してアセット(知見・フィールド)と活動資金の両面からサポートし、その成果報告会を令和8年3月10日、新東京ビル(東京都千代田区)で開催した。会場・オンラインを合わせ約70名が参加し、富士山を主なフィールドとした最新の実証結果に熱心に耳を傾けた。
採択企業5社が実証成果を発表
報告会では、サポートを受けた企業5社が支援した研究員と共に実証成果を発表した。株式会社RtoSは「VTOL機を活用した火山遠隔モニタリング」で、高標高・強風という富士山ならではの条件下で、エンジン型無人VTOL機がどこまで現場で使えるかを探る実証を行った。上昇約12分で標高1,800mに到達し、約5km²の撮影により、離れた安全地点から高精細映像をほぼリアルタイムで取得できたことが示された。
株式会社ME-Lab Japanは「衛星コンステレーション時代を見据えたマルチバンドSAR検証」に取り組み、衛星SARのL/C/Xバンドを比較して複数バンドを統合する「ピクセル単位時系列解析」を進めた。火山体変動監視の精度向上が実証され、成果は欧州宇宙機関(ESA)の国際学会「FRINGE 2026」で発表予定である。
株式会社ユニパックは「富士山噴火から命と経済を守る火山灰対策フィルター」を開発した。富士山火山灰を用いた模擬降灰試験では、捕集率98.7%、連続72時間で90Pa以下の圧力損失維持、風量低下は約1割というデータが示された。病院・発電所・データセンター・変電所など重要インフラでの採用を想定し、仕様化を進める方針が示されている。
カディンチェ株式会社は「富士山3Dシミュレータ」を開発し、3D地形データとシミュレーションの統合に挑んだ。噴火口の任意設定、自由視点での溶岩流・降灰の可視化を実装し、防災教育・訓練での有効性が高く、ハザードマップの電子化や他火山への展開にも道が開けると結びられた。
株式会社はんぽさきは「チームで使う共有地図LivMap」で、現場と本部を同じ地図の上で結ぶ運用を実証した。誰が・どこで・何をしているかをリアルタイム共有し、無線・電話に頼らない連携を可能にしている。登山者管理から救急・消防の動態把握まで、現場の課題を一枚の地図で統合できるツールとなっている。
火山防災の将来像を深掘りするトークセッション
成果報告に続いて、国・企業・研究所の三つの立場の代表者によるトークセッションが開催された。国の立場からは内閣官房防災庁設置準備室のアドバイザー・山田剛士氏が登壇し、防災庁設置の議論や事前防災を軸とした国の方向性について紹介した。企業側からは火山防災研修ツーリズムに取り組む竹中工務店の五十嵐信哉氏が登壇し、企業がBCPや事業継続上どのような課題と向き合っているのか、現場視点から語った。
研究サイドからは、富士山火学防災の旗振り役である富士山科学研究所の吉本充宏研究部長が加わり、産学官の連携がどのように技術開発と人材育成に結びつくのか、研究所としての視点を提示した。セッションでは、火山防災産業の将来を支える鍵は「人材育成」であることが改めて確認され、学齢期からの教育や、企業・行政・研究機関が連携した継続的な育成体系の重要性が示されている。
官民連携による火山防災対策の推進
報告会では、各ピッチコンテスト通過者の発表にあわせ、事業者とともに富士山科学研究所の研究員がステージに立ち、技術的補足や実証の意義を共有していた。研究者のみでも、企業のみでも解決が難しい火山防災の課題に対し、両者が一体となって取り組むことで、富士山科学研究所が有する高度な専門性と事業者の技術力・アイデアが結びつき、新たな可能性を創出する官民連携の姿が明確に示された。山梨県としては、今回のピッチコンテストを契機として、民間事業者との共創を一層推進し、火山防災分野における新たな産業の創出と人材育成に取り組むトップランナーとして、富士山火山防災対策を着実に前進させていく方針である。
出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000466.000078927.html