シェイクスピア新作品が初文庫化、2016年認定の幻の傑作が登場


シェイクスピア41作品の中で最新認定作品が文庫化
2026年はシェイクスピアに注目が集まる年である。没後410年を迎え、シェイクスピア夫妻を描いた映画「ハムネット」も4月10日から公開される。株式会社KADOKAWAは2026年3月23日に『新訳 タイタス・アンドロニカス/ファヴァシャムのアーデン』(角川文庫)を発売した。本書は訳者の河合祥一郎氏が担当し、映画「ハムネット」の字幕監修も行った元日本シェイクスピア協会会長による新訳である。
国内ではシェイクスピア作品が「全37作品」と言われることが多いが、実は「全41作品」である。そのうち最も新しくシェイクスピアの筆が認められた2016年の作品が『ファヴァシャムのアーデン』であり、この幻の作品がこのたび初めて文庫化されることになった。
血で血を洗う復讐劇『タイタス・アンドロニカス』
『タイタス・アンドロニカス』はローマ史劇である。血で血を洗う復讐劇の原型で、世界的にヒットした海外ドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」にも影響を与えたとされる。シェイクスピアの作品としては異色の過激でダークな内容だが、ページターナーで読み進める面白さがある。勇猛な将軍タイタスはゴート族の女王タモーラと王子らを捕虜として引き連れ、ローマに凱旋するも、新皇帝が女王を娶ることで立場が逆転し、女王による復讐が始まるという展開である。
若きシェイクスピアだからこそ書けた作品と言える。映画「ハムネット」のころのシェイクスピアがロンドンにやってきて、この最初期の悲劇を書いたのかと思うと感慨深い。蜷川幸雄版の「タイタス・アンドロニカス」は、赤いテープを血の表現として用いた斬新かつ強烈な演出で、ストラットフォード・アポン・エイヴォンのロイヤル・シェイクスピア劇場においてスタンディングオベーションの大絶賛を受けた(2006年)。
2016年に正典入りした幻の作品『ファヴァシャムのアーデン』
『ファヴァシャムのアーデン』は、2016年に新オックスフォード・シェイクスピア全集に収められ、最も新しく認められた作品である。国内のシェイクスピア全集では未邦訳で、文庫化も今回が初だ。シェイクスピア作品として訳されたのも河合訳が初めてであり、いわば幻の作品といえる。本国イギリスでは正典のラインナップに入っているのに、なぜか日本ではスルーされていた。
1551年のファヴァシャム市を舞台に、元市長アーデンが妻アリスの不倫を疑い、妻は恋人と共に夫の殺害を企むという実際にあった殺人事件をモデルにした物語である。この作品は若き時代のシェイクスピアが複数の作家と共同執筆したと言われており、長年にわたって本当にシェイクスピアの筆が入っているのか議論の的になってきた。コンピューターによる統計学的な計量文体分析を経て、2016年に正典入りが決定された。訳者あとがきでは、シェイクスピアの名作『リチャード三世』との共通点を語ることで、この作品にシェイクスピアの筆が入っていることを論じている。
シェイクスピア・マジックで生まれる圧倒的な説得力
『ファヴァシャムのアーデン』に登場するあるドラマティックな展開は、現実では到底ありえない内容である。しかしシェイクスピアの筆にかかると、とたんに圧倒的なリアリティと説得力が生まれ、感動的なシーンに変わってしまう。これこそシェイクスピア・マジックの真骨頂である。本書には吉田鋼太郎氏からの推薦コメント「祥ちゃん! 待ってました! 次のタイタスはこれでやってみたい!!」も掲載されており、吉田氏は蜷川版の「タイタス・アンドロニカス」でタイタス役を演じた経験を持つ。
『新訳 タイタス・アンドロニカス/ファヴァシャムのアーデン』は定価1,595円(本体1,450円+税)、352ページの文庫判で、ISBN978-4-04-115366-6である。シェイクスピアに注目が集まる今年、映画や舞台だけでなく、本書を通じて若き日のシェイクスピアの才能を感じ、物語を存分に楽しんでほしい。
出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000019047.000007006.html