『蒲団』『新生』『煤煙』 世にも奇書な物語 Vol.11


『蒲団』
(田山花袋)
告白体の代表作
自然主義文学の代表作。花袋らしき作家が女弟子に片思いをするが振られ、芳子が使っていた布団に顔を埋めて泣くという赤裸々な小説。
西洋の自然主義文学は、自然科学と同じように小説にもある種の法則があるという考えの文学だったが、日本に入ってきたとき、なぜか「事実を書く」と曲解され、花袋は実話を書いた。人には言えないような実話を書くという小説が明治40年代を席捲し、日本の近代文学の源流となる。
勝手に書かれた芳子のモデル岡田美知代にはいい迷惑だが、美知代はのちに花袋への意趣返しとして「ある女の手紙」という私小説を書いて田山花袋のことを暴露している。
『新生』
(島崎藤村)
今なら大問題? 姪を姦淫
島崎藤村といえば、『破戒』が有名で、こちらも自然主義文学の代表作の一つと言われている。『破戒』は被差別部落出身の主人公、瀬川丑松が「自分は部落民だ」と告白するというストーリーになっており、これは実際にあった差別事件をモデルに創作されたものではあるが、藤村自身の実体験ではない。
しかし、『新生』は藤村自身の実体験を書いたもの。極貧生活の中で妻を亡くした藤村宅に姪のこま子が住み込みで手伝いに来るが、藤村はこま子を妊娠させてしまう。藤村にとってはほんの出来心だったかもしれないが、こま子は藤村に思いを寄せる。藤村はこれを重荷に感じ、二人のことを『新生』という小説に書いて暴露する。これにより二人の関係が世間に知られることとなり、こま子は台湾の親戚宅に送られ、生さぬ仲は強制終了となる。
『煤煙』
(森田草平)
平塚らいてうと心中未遂
森田草平は夏目漱石の弟子で、妻子ある女学校教師。草平は生徒の一人の平塚明子(はるこ=のちの平塚らいてう)と恋仲となり、駆け落ち、心中するが、未遂に終わる。
二人は小説「死の勝利」に感化され、那須・塩原の雪深い山中を行くが、草平は疲れて短刀を捨て、明子の失踪を受けてやってきた捜索隊に救出される。『煤煙』はこの醜聞を漱石の勧めで長編小説にしたもの。
平塚らいてうと言うと、5歳年下の画家、奥村博史と恋仲になるが、騒ぎとなって別れる。このとき、奥村が「静かな水鳥たちが仲良く遊んでいるところへ一羽のツバメが飛んできて平和を乱してしまった。若いツバメは池の平和のために飛び去っていく」という手紙を書き、ここから「若いツバメ』という言葉が生まれるが、森田草平との心中未遂事件を起こしたことからもわかるとおり、恋多き女性だった。
ちなみに春子は、漱石の『三四郎』に登場する美彌子のモデルと言われている。
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