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第55回「小説でもどうぞ」佳作 宇宙人コンテスト 光月りか

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小説
小説でもどうぞ
第55回結果発表
課 題

コンテスト

※応募数358編
宇宙人コンテスト 
光月りか

 ほんのジョークのつもりだった。
「宇宙人コンテスト開催します! お誘い合わせの上ご参加ください(笑)」
 応募などないだろう。
 フォロワー数も少ないし、それに優勝賞品は「僕のへその緒」なんだから。しかも今の時刻は深夜三時半。
 起きてるのは超早起きのうちのじいちゃんぐらい。
「おい、庭に友達が来ているぞ」
 いきなりじいちゃん登場。
「はいはい分かりました」
 じいちゃんを部屋から追い出そうとしたが、「とにかく見てみろ、庭を」と言い張る。
 あまりにしつこいので、二階の窓から覗いてみたが、誰もいない。じいちゃんも窓から顔を出して「おかしい、確かにいたんだ」とぶつぶつ言っている。
 そのときだった。
 オレンジ色の光が「ぶわー」と目の前に現れた。眩しくて目が開けられない。
 じいちゃんは平気なのか「ほら、言ったとおりだろ。さっきから下にいたんだ」と頷いている。
 眩しさがましになると、風が吹いて、ドアらしきものが開き、人間に似た宇宙人が、部屋にピューと入ってきた。
 驚いて声が出ない。
 じいちゃんは呑気に「ようこそ、わが家へ」なんて言っている。
「宇宙人コンテストに申し込む」
 電子音みたいなピロピロした声が響いた。
「申し込むと言ってるぞ」
 じいちゃんにも聞こえたらしい。
「へその緒が欲しい。研究のため」
「宇宙人コンテストは開催しません。あれはジョークです」
 少し声が震えたが、なんとか話せた。
「そんなこと言わずに開催してやれ」
 横からじいちゃんが口を出す。
「ちょっと黙っててくれない?」
 そのとき、宇宙人が僕らの目の前でスライドするように二人に増えた。
「お望みどおり、お誘い合わせた」
 変な日本語がちょっと可愛い。
「へその緒が欲しいならあげます」
 じいちゃんはあわてて、「何も審査しないであげるのは良くない。あれは大切なものだ」と言った。
「へその緒なんて、引き出しに入れっぱなしで、見もしないし」
 宇宙人は「くれ」とばかりに手を出した。じいちゃんはその手を思いっきり、はたいた。
「厚かましい。軽々しく近づくな! 帰れ!」
 じいちゃんの勢いに押されたのか、宇宙人が一歩後ろに下がった。
「宇宙人コンテスト、開催しろ」
 宇宙人もけっこうしつこい。
「もっと、お誘い合わせた」
 宇宙人二人はスライドするように横にズレて四人に増えた。
「散れ、さっさと帰れ!」
 初めは「ようこそわが家へ」と歓迎モードだったじいちゃんは、完全に追っ払うモードに切り替わっている。
「わが家に無断侵入したお詫びに何か置いて帰れ!」
 じいちゃん、すご過ぎ。
「コレ」
 宇宙人はじいちゃんに小さな箱を渡した。すぐに箱を開けて中を確認するじいちゃん。
「饅頭か、しょぼいな。まあ許してやる」
 四人の宇宙人はスーッと一人に重なり、静かに去った。
「やっと帰ったか。気をつけんといかんぞ。宇宙人をなめてかかると、えらい目に遭うからな」
 まるで宇宙人を知っているような言い方だ。
「そろそろわしも、星に帰らんといかんな」
「じいちゃんも言うなぁ」
「おまえ、知らなかったのか? わしが宇宙人だってこと」
「え?」
 じいちゃんはもらった饅頭を頬張りながら、「お茶が飲みたい」と話をそらそうとした。
「ねえ、ばあちゃんも宇宙人?」
「わしとは違う星の宇宙人」
 ボソッと驚くことを言う。
「ホントかよ。そしたら父さんと母さんは宇宙人の子で、僕も宇宙人じゃん」
「本当に聞いてなかったのか」
「まじで?」
「さあな」
 じいちゃんが単にボケているのか、本当に宇宙人なのか、朝になったら母さんに聞いてみよう。

 朝食の準備をしている母さんに単刀直入に聞いてみた。
「ねえ、母さんは宇宙人?」
「朝からなにバカなこと言ってるの」
「だって、じいちゃんが……」
「じいちゃんなんて、うちにはいないわよ」
「……」
 一瞬、時が止まったように感じられた。
「毎晩、僕の部屋に来てるけど」
「やだ、怖いこと言わないで」
「ホントだって」
「ちょっとあなた、何とか言ってくださいよ」
 父さんは読んでいた新聞から顔を上げて言った。
「父さんは宇宙人です」
 母さんはあきれて口をぽかんと開けている。
「あなた! それは二十歳になったときに知らせる約束でしょ!」
 ああ、もう、何が何だか分からない。うちの家族は全員宇宙人?
 募集しなくても、宇宙人はうちにいたのか。
 まだ完全には信じられないが。
 優勝は、じいちゃん……かな。
 優勝賞品はちょっと高級な饅頭でも渡しておく。
(了)