第55回「小説でもどうぞ」選外佳作 大黒柱コンテスト さはら


第55回結果発表
課 題
コンテスト
※応募数358編
選外佳作
大黒柱コンテスト さはら
大黒柱コンテスト さはら
今日は僕が一歳の頃に離婚した父親の葬儀にこの田舎へやってきた。しかし田舎特有の電車の本数の少なさのせいで、予定より二時間ほど早く来てしまった。あてもなくぷらぷらしてると、田舎特有の有り余る土地を使った大きな屋敷がみえた。看板が建てられており、そこには「大黒柱コンテスト」とあまり組み合わせたことのない名前の羅列が並んでいる。目線を先にやってみると、屋敷の隣にある広い公園に簡易なテントが建てられている。その周りにはこんな田舎のどこにいたんだと思わせるほどの人だかりができていた。どうやらもうすぐ大黒柱コンテストが始まるようだ。どうせやることもないし、見てみるとしよう。
「さあやってまいりました年に一度の大黒柱コンテスト。今年はどなたが街の大黒柱となるのでしょう」
大黒柱コンテスト。文字通り街でいちばんの大黒柱を決めるコンテストのようだ。
「応募総数189名。厳正なる予選が行われた結果、こちらの3名が決勝で争うこととなりました。では順番に自己紹介をどうぞ。」
右から体格のいい男性。ストレートヘアがよく似合う女性。ジャージを着た若い男性が並んでいる。
右の男が半歩前に出て離し始めた。
「山田紀夫。58歳。183センチ。商店街で不動産屋をやってます」
そこらから「会長ー!」と呼ぶ声が聞こえた。商店街の会長だかなんだか知らないが、確かに大黒柱にふさわしい。
「三年連続決勝進出。肉体も衰えを知りません。雪辱の優勝となるのでしょうか」
続いて女性が話し始めた。
「川田田美佳。32歳。175センチです。フリーランスの弁護士やってます」
観客席のから二人の子供が声を上げた。隣にいる旦那さんと思われる男性が誇らしげに彼女を見ている。確かに一家の大黒柱のようだ。
「女性が決勝進出するのは史上初。性別の差を乗り越えられるのか」
今すごいコンプラ違反をした気がする。やはりこんな偏狭な地では多様性は尊重されないのか。河田さんには頑張ってほしい。
「吉田正俊です。24歳。193センチ。すいせん小学校の体育教師をやってました」
生徒と思われる子供達から歓声が上がった。なるほど。クラスの大黒柱という見方もある。
「吉田さんはこのために辞職をされたようです。その思いは報われるのでしょうか」
大黒柱から遠のいているような気がする。職歴に傷をつけてまで得たい称号なのか? まだ若いのに。
「それでは競技に移って行きましょう。最初の種目は腹筋です。二分間の間に多く腹筋をした人が勝利となります」
てっきり仕事ぶりとか家事力が審査対象になると思っていたが、フィジカル面を審査するのは意外だ。この競技は若くて普段から体を動かしている吉田さんに有利だ。他の二人は大丈夫だろうか。
ブザーが鳴り、参加者が一斉に腹筋を始めた。僕の心配をよそに三人にそれほど差はないように感じた。後半になっていくとペースが落ちてゆくものの、なんと女性の川田さんに軍配が上がった。やや女性差別がある中でこの記録を出せるとは流石だ。
続いて二種目目は俵さしという競技のようだ。どうやら重りを頭の上まで持ち上げて最後まで持ち上げられた人が勝ちというルールらしい。なんとお守りの重さは50キロ。どんだけフィジカルを求めているのだ。競技が始まると最初の1分は余裕そうな表情を見せていたが、次第に厳しくなってゆき、川田さん、吉田さんと俵を下ろしていった。盤石な土台を見せつけ、山田さんがこの競技を制すこととなった。
三種目も握力測定とまたもフィジカル競技だ。山田さんが50キロ。川田さんがまさかの52キロを記録するも吉田さんが65キロを出し、吉田さんが勝利を納めた。
なぜか二人のも食らいつけてはいるものの、これでは年配の山田さんや女性の川田さんにはあまりにも不利な内容である。田舎だから仕事の印象が力仕事でおわっているのだろうか。
最後の種目となった。これまで点数はほぼ互角。まだ誰でも優勝できる可能性が残っている。つまりこの種目を制したものが町一番のの大黒柱となるのだ。
「最後の種目は身長測定!」
身長測定? 自己紹介のときに身長も言っていたのはこのためだったのか。てゆうか結果最初に分かってんだったら最初にやれよ。
「193センチの吉田さんの勝利です!」
ほら吉田の勝ちじゃん。なんだよ身長の勝負って。
「第123代大黒柱は吉田正俊!」
こうして吉田さんが街の大黒柱の称号を手にした。観客席からは歓声が上がる。いいのか町民よ。そいつ無職だぞ。
「では屋敷へ向かいましょう」
MCの一言で優勝者や観客が一斉に動き出した。これから打ち上げとかあるのだろうか。こんな身内ばかりの田舎の飲み会に参加するのは気が進まなかったが、屋敷へ向かう人々の波から逃れられないまま進んだ。
屋敷の中は柱で支えられている昔ながらの家のようだ。その中に一本だけ、特に太い柱がある。しかしそれは床まで届いておらず、途切れているようだった。
「では吉田さんこちらにお立ちください」
途切れた柱と床の間に吉田さんが立った。まるで一本の柱になったようだ。
「それでは吉田さんには一年間文化遺産であるこの屋敷の大黒柱として立ち続けていただきます」
困惑する僕をよそに、観客は盛り上がりを落とさなかった。
大黒柱コンテストとは、比喩的な大黒柱のことではなく、ガチ大黒柱だったのだ。
僕は民衆をかき分けてその場から逃げた。やっぱ田舎っておかしい。
(了)