公募/コンテスト/コンペ情報なら「Koubo」

坂東玉三郎が語る人間国宝の芸と人生、素踊り『残月』の本質

タグ
記事・ブログ・投稿
モニター・レポート
報道発表
プレスリリースより

人と人が会う、その大切さ

2021年の夏に始まり、5年目を迎えた「坂東玉三郎~お話と素踊り~」。この人気公演は全国各地で40回を超える公演を重ねてきた。映像を交えたお話やお客様からの質問コーナー、衣裳をつけずに舞う素踊りというシンプルな構成ながら、玉三郎さんの素顔とその芸を堪能できると好評を博している。

コロナ禍の影響が残る2021年7月の初演で満員の客席を見た玉三郎さんは、「人と人が実際に劇場で出会うことの大切さを改めて感じた」と述べている。5年目を迎えた現在、人気はますます高まり、今年2月から3月にかけての巡演では追加公演が行われた会場もある。

「こんなに続くとは思ってもいませんでした。毎回多くのお客様にお越しいただき、とても嬉しいです。ただ、40回ともなってくるとリピーターの方もいらっしゃるので、どんなお話をしたらいいのか、毎回悩むんです」と玉三郎さんは語る。日々の生活から素敵な旅の映像、社会的なテーマまで、その話題は多岐にわたり、客席にいながら玉三郎さんと同じテーブルについているような感覚を生み出している。

「今の時代はインターネットや携帯電話で繋がっているように見えますが、やっぱり人と直接会うことが一番大事なのだと思います」と玉三郎さんは強調する。質問コーナーでは貴重な芸談が明かされる一方で、不登校や人生相談など重い内容も寄せられるという。「相談されたら真面目に答えないといけない、と思っています」と、真摯に対応する姿勢を示している。

手作り感の温かさと職人の矜持

どこか手作り感のある温かい空気が流れるのが、この公演の大きな魅力である。「最新の技術を駆使した舞台が多くなっていますが、私はできるだけそういうものを使わずに人間がやるべきだという考えです。作り手の魂が伝わるように」と玉三郎さんは述べる。

その信念は衣裳にも徹底している。昨年の衣裳展開催時には一部ミシンが使われていたものをすべて手刺繍で作り直したという。「なんだミシンか、とがっかりされたら嫌じゃない。恥ずかしいことはしたくないので」と、職人としての矜持を貫く姿勢が伺える。

雨垂れの音のような地唄舞『残月』

素踊りで披露する『残月』は衣裳や化粧の拵えはないものの、月にちなんで白地の着物に露芝文様の袴を設えている。「歌舞伎役者はお化粧をして、衣裳や鬘をつけて踊るのが本来ですので、最初は不安だったんです」と玉三郎さんは打ち明ける。しかし「意外にもお客様が楽しんでくださったので、このかたちでいいんだと思えました」と述べている。

素で踊ることが制約になるのか自由になるのかという問いに、「自由です」と即答した玉三郎さん。「発想が自由になるということ。お客様の思考も自由なところへ飛んでいけると思います。そのためには音楽が大事です」と語る。『残月』は作曲家・峰崎勾当が自身の門人の娘の夭折を偲んで作られた格調高く清涼感のある名曲である。

「和歌を読み込むような心で表現していますが、感覚的なことなので言葉にはできないんです。ただ、夜、月を見た時の印象を大事にしています」と玉三郎さんは述べる。芸術は生と死を描くものであり、演者が生と同時に死というものを肌で感じていなければならないとの信念から、『残月』も死というものを背景に成り立っているという。

「地唄舞は『雨垂れがパターンパターンと落ちるように弾く』と言われているんです。雨垂れの音に耳を澄ましていると、瞑想にも似た心地になりますよね。その瞬間だけでも、悩みや苦しみから解き放たれていただけたら嬉しいです」と、この公演に込めた想いを語っている。

出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000856.000041063.html