せきしろの自由律俳句 第111回「家」結果発表 (2/3)


第 111回 課題: 家
佳作
シンクの上で桃にかぶりつく
(愛知県 鹿むら 31歳)
一匹減り一人減り
(長崎県 毎日ハッピー 45歳)
電車から家の屋根指さす
(大阪府 ヒロリン 65歳)
各々の家からガストに来ている
(福島県 きりんのき 24歳)
屋根に歯
(東京都 秋蝶 58歳)
鍵穴を時計回りにして冬
(長野県 野村齋藤 24歳)
床が抜ける想像して歩く
(熊本県 夏風かをる 28歳)
早めに電灯を点ける
(北海道 三歩 73歳)
魂の彷徨うに善き三畳間
(岡山県 森野みどり 76歳)
もう思い出せない祖母の家の匂い
(広島県 彼方結志 24歳)
バーベキュー1度もせずバルコニー朽ちる
(北海道 エリンギ 39歳)
父と老いる家母の席に座る
(愛知県 みかん 51歳)
家には傘がいっぱいあるのに
(大阪府 石川かるた 52歳)
三角の下四角の中に独り
(東京都 根本史紀 55歳)
母屋の廊下を風と歩く
(千葉県 xissa 60歳)
家近づけば母の香りする
(神奈川県 猪狩ほうほ 78歳)
『シンクの上で桃にかぶりつく』
桃を食べた後を一気に洗い流せる食べ方であり、自由度の高い食べ方である。家ならではの方法だ。
『一匹減り一人減り』
少しずつ孤独へと近づく家が見えてくる。
『電車から家の屋根指さす』
私はこれをやってしまうことがあるのだが、やられた方は「そうなんですね」くらいしか言えない。
『各々の家からガストに来ている』
たしかにその通りだ。あたりまえのことを改めて言葉にするとおもしろくなることがある。
『屋根に歯』
下の乳歯。
『鍵穴を時計回りにして冬』
施錠して家の外へ。
『床が抜ける想像して歩く』
私は古いアパートで寝ながらいつも想像していた。
『早めに電灯を点ける』
なぜだろう。孤独を感じる句だ。
『魂の彷徨うに善き三畳間』
初めての一人暮らしは四畳半だった。狭い部屋で絶えずあれこれ考えていたが、狭いからこそだったのかもしれない。
『もう思い出せない祖母の家の匂い』
畳とタバコと線香と煮物の香りがした記憶はあるが、はっきりと思い出せない。
『バーベキュー1度もせずバルコニー朽ちる』
夢が生活に負ける時。あるいは夢が怠惰に負ける時。
『父と老いる家母の席に座る』
実家ではテーブルで食べるのは自分だけである。
『家には傘がいっぱいあるのに』
使われないビニール傘が朽ちていく。
『三角の下四角の中に独り』
説明的で散文的な描写がより孤独を強くしている。
『母屋の廊下を風と歩く』
なんだか無性に懐かしくなる句だ。
『家近づけば母の香りする』
料理の香り、お風呂の香り、庭の香り、玄関を開けた時の香り、それらすべては母の香りだ。