都心マンション市場が転換点、73ヶ月ぶり下落が示す「適正化」


東京都心マンション市場の転換期到来
東日本不動産流通機構のレインズタワーレポートによると、2026年5月度の首都圏中古マンション成約㎡単価は73ヶ月ぶりに前年同月比で減少した。コロナ禍以降、一貫して価格上昇を続けてきた首都圏中古マンション市場に変化が生じ始めている。特に流通ボリュームの大きい都心3区(千代田区・中央区・港区)の成約㎡単価の下落幅が比較的大きくなっており、市場が大きな局面転換を迎えていることが明確になった。
都心3区での在庫積み上がりが示す需給ギャップ
これまで東京都心部は、国内富裕層だけでなく海外投資家や高所得共働き世帯など、多様な需要に支えられ価格上昇を続けてきた。しかし足元では「価格が上昇する市場」から「価格と流動性のバランスが問われる市場」へと局面が変化しつつある。平均価格8,000万円以上のシンボリックな高価格帯マンションでは、港区や中央区湾岸エリアなど、これまで価格上昇をけん引してきた象徴的なマンション群で在庫が増加傾向にある。これらのエリアは、実需層に加えて投資需要や海外マネーの流入も多かった地域だ。売り出し件数が増加しているにもかかわらず成約件数が伸びておらず、市場参加者が想定する価格と、実際に購入を検討する需要者が受け入れられる価格との間にギャップが生じている状態と考えられる。
周辺住宅エリアで維持される流動性
興味深いことに、同じ都心エリアであっても、シンボリックマンション周辺の住宅エリアでは相対的に流動性が維持されている。市場全体で需要が消滅しているわけではなく、一定の流動性は保たれているのだ。例えば湾岸エリアの超高額タワーマンションでは在庫が増加している一方、その周辺に位置する住宅地や中価格帯マンションでは比較的安定した取引が継続している。これは市場が弱くなったというよりも、需要者が価格に対してより厳密な判断を行うようになった結果であり、「どの物件でも売れる相場」から「適正価格の物件が選ばれる相場」へ移行している可能性を示唆している。
ゼロ金利解除が市場心理を変化させた
2024年7月の日本銀行による実質的なゼロ金利政策の解除が重要なターニングポイントとなったと考えられる。日本の不動産市場は長期間にわたり超低金利環境の恩恵を受けてきたため、住宅ローン利用者だけでなく、不動産投資家や資産家も「低金利が継続する」という前提で投資判断を行ってきた側面があった。金利上昇局面に入ることで、将来的な住宅ローン負担増加や期待利回りの見直しが進み、市場参加者の心理に変化が生じ始めたのだ。さらに2026年1月頃には在庫増加が加速しており、政策金利が1%近辺まで上昇したことに加え、中国経済の減速や中国系投資家・インバウンド需要の変化なども重なった時期である。
価格調整は一部の高価格帯マンションが中心に
今後、過度に価格が上昇した一部のシンボリックマンションでは価格調整が行われる可能性がある。しかし、その調整は市場全体に及ぶものではなく、一部の高価格帯マンションが中心になると考えられる。実需層が購入できる価格帯の住宅エリアや居住ニーズの高いエリアでは、依然として需要が存在しているためだ。最近では「不動産バブル崩壊」や「マンション価格暴落」といった表現を目にする機会も増えているが、今回のデータから読み取れるのは、市場全体の崩壊ではなく、一部の高価格帯マンションにおける価格調整の兆候である。
「暴落」ではなく「適正化」へ向かう市場
過度な価格上昇によって購入が困難になっていた市場が、実需層の購入可能な水準へ徐々に近づいていく過程とも捉えることができる。東京都心の住宅需要そのものが消滅したわけではなく、人口集積、雇用集積、再開発、交通利便性といった都心の優位性は依然として存在しているためだ。重要なのは、「都心マンションはすべて下落する」といった極端な見方ではなく、エリアごと、物件ごとの流動性や需給関係を丁寧に見極めることである。今後の東京都中古マンション市場は、価格上昇率ではなく流動性が評価される時代へ移行していく可能性がある。
出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000223.000013438.html