第13回「小説でもどうぞ」佳作 許嫁/LAP
第13回結果発表
課 題
あの日
※応募数219編
「許嫁」LAP
7:00 目覚ましのアラームが鳴る。
7:30 シリアルとサラダ、スクランブルエッグ、ヨーグルトの朝食。
8:00 集団登園のお迎えでドアのチャイムが鳴る。
8:03 いつもの4人と今日当番の朝倉ママで出発。
8:30 幼稚園に到着。
8:45 新しい子が入るので、バラ組、全員集合。
8:50 幸田愛花星 ちゃん、登場。稲妻!
9:00 各組、お部屋で朝のお祈り。『愛花星ちゃんと結婚できますように』
9:10 園庭で自由体操。他のお友達が愛花星ちゃんに興味津々で、かたまりができている。鉄棒に逆さにぶら下がったぼくは、ひっくり返ってもチョウ可愛い愛花星ちゃんの笑顔に見とれた。
9:20 逆さになりすぎて、めまいがして、鉄棒より落下。足立先生が飛んで来て「大丈夫!」と言う。愛花星ちゃんも含め、お友達たちもぼくの周りに集まった。
「はい、大丈夫です。ちょっと逆さになりすぎちゃった」
「純君、それでも一応、保健の先生に診てもらいましょ」
「大丈夫だけどなあ……」
「先生に診てもらって、大丈夫なら安心でしょ」
「はい」
「はい、じゃあ、今日の付き添いのお友達はだれかな?」
「はい!」
イエス様、奇蹟です。手をあげたのは愛花星ちゃんでした。
9:30 保健の先生が頭や肩の様子を丁寧に診察し、体温計で熱を測った。
「うん、平熱。逆さにぶら下がりすぎて、血が頭にのぼちゃったんでしょう。15分ぐらい静かに休んだら、オーケーです」
「良かったね、純君」
「足立先生、ごめんなさい」
「今度からは気をつけましょうね」
「はい」
「阿部先生、じゃ、ここで休んでいればいいでしょうか?」
「ここじゃなくても、走ったりしなければ、どこでも大丈夫」
「じゃあ純君、お部屋に行こうか?」
「足立先生、もし良かったら、付き添ってくれた愛花星ちゃんのために、礼拝堂を案内したいんですけど、いいですか?」
「阿部先生、どうでしょう?」
「それはグッドアイディア。礼拝堂は静かで空気も澄んでいるから、いい休憩になるわ」
「愛花星ちゃんはどう?」
「はい、礼拝堂を見たいです」
「わかりました。じゃあ、くれぐれも静かにして、礼拝堂を見学してきてください。9:50にはお部屋に戻るようにね」
「はい」美しくハモった。
9:37 ボクたちは礼拝堂に向かった。
「純君は正しくはなんていう名前なの?」
「田中純」
「良い名前ね。どうぞ、よろしく」
「よろしく。おうちは三丁目?」
「二丁目のタワーツリーマンション」
「あの高いヤツ!?」
「うん。純君は?」
「ぼくは三丁目」
「戸建?」
「うん」
「いいな、憧れちゃうなあ」
「タワーマンションの方がすごいよ」
「そうかなあ……」
9:40 礼拝堂は照明が消えていて、ステンドグラスに染まった色取り取りの柔らかい光があちこちを照らしていた。
「うわあ、綺麗」
「うん」
「ここはいつ使うの?」
「毎日の午後のお祈りの時間と、月曜の朝のお祈り。あとは日曜日やイースターやクリスマスや、いろんなときに使うよ」
「今日の午後も?」
「うん」
「うわー、なにをお祈りしようかな……」
「そうだ。愛花星ちゃん、ちょっと来て」
ぼくは愛花星ちゃんをステージに立つマリア様の像の裏側に誘った。
「ここは秘密の場所。ここでお祈りすると、どんな願いも叶うんだよ」
「ほんと?」
「こうするんだ」目を閉じ手を合わせる。
「愛花星ちゃんと結婚できますように」
愛花星ちゃんも目を閉じ手を合わせる。
「私も純君と結婚できますように」
9:45 ボクたちは手を取り合って、そっとキスをした。
(了)
7:30 シリアルとサラダ、スクランブルエッグ、ヨーグルトの朝食。
8:00 集団登園のお迎えでドアのチャイムが鳴る。
8:03 いつもの4人と今日当番の朝倉ママで出発。
8:30 幼稚園に到着。
8:45 新しい子が入るので、バラ組、全員集合。
8:50 幸田
9:00 各組、お部屋で朝のお祈り。『愛花星ちゃんと結婚できますように』
9:10 園庭で自由体操。他のお友達が愛花星ちゃんに興味津々で、かたまりができている。鉄棒に逆さにぶら下がったぼくは、ひっくり返ってもチョウ可愛い愛花星ちゃんの笑顔に見とれた。
9:20 逆さになりすぎて、めまいがして、鉄棒より落下。足立先生が飛んで来て「大丈夫!」と言う。愛花星ちゃんも含め、お友達たちもぼくの周りに集まった。
「はい、大丈夫です。ちょっと逆さになりすぎちゃった」
「純君、それでも一応、保健の先生に診てもらいましょ」
「大丈夫だけどなあ……」
「先生に診てもらって、大丈夫なら安心でしょ」
「はい」
「はい、じゃあ、今日の付き添いのお友達はだれかな?」
「はい!」
イエス様、奇蹟です。手をあげたのは愛花星ちゃんでした。
9:30 保健の先生が頭や肩の様子を丁寧に診察し、体温計で熱を測った。
「うん、平熱。逆さにぶら下がりすぎて、血が頭にのぼちゃったんでしょう。15分ぐらい静かに休んだら、オーケーです」
「良かったね、純君」
「足立先生、ごめんなさい」
「今度からは気をつけましょうね」
「はい」
「阿部先生、じゃ、ここで休んでいればいいでしょうか?」
「ここじゃなくても、走ったりしなければ、どこでも大丈夫」
「じゃあ純君、お部屋に行こうか?」
「足立先生、もし良かったら、付き添ってくれた愛花星ちゃんのために、礼拝堂を案内したいんですけど、いいですか?」
「阿部先生、どうでしょう?」
「それはグッドアイディア。礼拝堂は静かで空気も澄んでいるから、いい休憩になるわ」
「愛花星ちゃんはどう?」
「はい、礼拝堂を見たいです」
「わかりました。じゃあ、くれぐれも静かにして、礼拝堂を見学してきてください。9:50にはお部屋に戻るようにね」
「はい」美しくハモった。
9:37 ボクたちは礼拝堂に向かった。
「純君は正しくはなんていう名前なの?」
「田中純」
「良い名前ね。どうぞ、よろしく」
「よろしく。おうちは三丁目?」
「二丁目のタワーツリーマンション」
「あの高いヤツ!?」
「うん。純君は?」
「ぼくは三丁目」
「戸建?」
「うん」
「いいな、憧れちゃうなあ」
「タワーマンションの方がすごいよ」
「そうかなあ……」
9:40 礼拝堂は照明が消えていて、ステンドグラスに染まった色取り取りの柔らかい光があちこちを照らしていた。
「うわあ、綺麗」
「うん」
「ここはいつ使うの?」
「毎日の午後のお祈りの時間と、月曜の朝のお祈り。あとは日曜日やイースターやクリスマスや、いろんなときに使うよ」
「今日の午後も?」
「うん」
「うわー、なにをお祈りしようかな……」
「そうだ。愛花星ちゃん、ちょっと来て」
ぼくは愛花星ちゃんをステージに立つマリア様の像の裏側に誘った。
「ここは秘密の場所。ここでお祈りすると、どんな願いも叶うんだよ」
「ほんと?」
「こうするんだ」目を閉じ手を合わせる。
「愛花星ちゃんと結婚できますように」
愛花星ちゃんも目を閉じ手を合わせる。
「私も純君と結婚できますように」
9:45 ボクたちは手を取り合って、そっとキスをした。
(了)