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高橋源一郎の小説指南「小説でもどうぞ」第13回「あの日」結果発表

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作文・エッセイ
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小説でもどうぞ
イラスト:福士陽香
■選考委員/高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

募集中のテーマ

■第16回 [ 遊び ] 
11/1~11/30(消印有効)

■第17回 [ 家 ] 
12/1~12/31(消印有効)

※募集期間外の応募は無効になります。

第13回結果発表
課 題

あの日

 今回もたいへんおもしろく、上位2作は大接戦でした。日本ダービー、二千四百メートルを走りきり、ゴールに2頭で雪崩れこんで写真判定。ハナ差(だいたい2.5センチ)で勝負が決まったという感じでしたよ。

最優秀賞

 受賞作は猫壁バリさんの「プロポーズの夜」。どこまで説明すればいいのやら。今夜、「僕」は「真紀」にプロポーズするつもりだ。ふたりは「六本木の高層ビルにあるバーでカクテルを傾けていた」。するとガラスの窓が染まった。花火大会なのだ。「僕」は婚約指輪の入ったケースを取り出し、「結婚してください!」という。その瞬間、「あること」が起こった。ではなにが起こったのかを、作者は、録画再生を見るように繰り返し、いろいろな角度から見せてくれる。すごいアイデア……と思ったら、最後に、驚きの結末が待っていた。参りました!

佳作

 甲乙つけがたい二作の内の一つが、うえお亞維さんの「今が、まさしく」。複雑でしかも素敵なお話だ。うまく説明できるかな。カルチャーセンターの文章教室に通う四〇代女性の「私」。今回の課題はなんと「あの日」! どうしよう。いくら考えてもわからない。そこで「私」は、みんなの「あの日」を訊いて回るのだ。教室の友人の「あの日」、母の「あの日」、父の「あの日」。そこで初めて知った「私」自身のあの……。ああなるほど、と感心し、心がちょっと揺すぶられる。さらにおまけの最後の一行もカッコいい。


 紅帽子さんの「あの日の手巾ハンケチ」は、まさに「あの日」の物語。戦争中、中学生の「僕」は、命じられた屋外作業をしていてガラスのかけらで指を切る。どんどん出てくる血。それを手巾で止血してくれたのは、ある女学生だった。それから一カ月後、八月の第一月曜日。同じ作業場へ向かう「僕」。また彼女と会えるかもしれない。あっ、彼女がいた。ふたりの視線が交わろうとした瞬間、「あれ」が起こったのである。「九十歳を越え」た「僕」の回想の中で「彼女は十四歳のまま七十七年が過ぎた」のだ。


 貘太郎さんの「実はね、」は、SFでファンタジーかな。主人公は、「いのち」が減ってゆく世界に住む「小学二年生の彼」。大流行のウィルスのせいでキャンプも中止。仕方なく、自宅の庭でひとりキャンプをしていると、目の前に何かが現れた。虫たちが何かを抱えて飛んでいるのだ。虫たち、動物たち、植物たちが会議を開いて話し合い、死滅してゆく地球を離れ、「いのち」をつなぐために旅立っていこうとしているのだった。飛べるものは飛べないものを掴んで遠くの星へと。その大切な日だったんだ。切ないよね。


 LAPさんの「許嫁」は、ちょっと甘酢っぱい。なにせ、登場人物は幼稚園児たちだ。「ぼく」は朝のお祈りでの「愛花星あかりちゃんと結婚できますように」と呟くくらい「愛花星ちゃん」が好き。逆上がりで具合が悪くなり、休憩することになった「ぼく」だけど、「愛花星ちゃん」がついてきてくれるって。なんてラッキー! そこで、ぼくたちは礼拝堂に行く。そして、「マリア像の裏側」に回る。そこでお祈りすると、なんでも願うから。ふたりはどんなお祈りをしたでしょう。内緒です。でもその記念日なんだよね。


 村上たいすけさんの「栗の棘」は、乳がんの手術で「左の乳房」をとった「ばっば」と、孫の「僕」の物語。「滑らかな肌が平坦に延びている」だけの「ばっば」の左の胸を、風呂に入ると「僕」は見る。「ばっば」は胸は「いだい」けど、撫でられると、痛くなくなると笑顔でいう。そんなある日、「僕」は「ばっば」の顔に「栗」を投げた。風呂場で急に。きっと「いだいよ」と言いながら、笑ってくれると思って。でも「ばっば」は痛みで泣いたのだった。痛切な記憶が残る「ある日」。シンプルだけどいいお話だった。


 村木志乃介さんの「運命の出会い」は、たいへんわかりやすい。「わたし」は定年退職した夫の料理をつくっている。でも「わたしはなぜこの人のごはんを作っているのだろう、と不思議に思うことがある」のだ。すべては「あの日」に始まった。この地区の担当になった新人警官の夫が挨拶に来たとき。母がすっかり気に入って、一度しか会ってないその人との結婚話を進め、いつの間にか「わたし」も巻きこまれてしまったのだ。ときは流れて今。退屈な日々。ああどうしてこの人にしたんだろう。読んでいて辛いです……。


 いちはじめさんの「諍いの種は尽きずとも」は、記念日好きの妻を持つ男の物語。結婚記念日や家族の誕生日、果ては男性アイドルグループ推しメンの誕生日まで記念日にしてしまう妻。その妻から「あの日の準備は進んでます?」と訊ねられてドッキリ。「あの日」って何? だからといって、訊いたら機嫌を悪くするし。わからないまま「準備」を進めるふりをしているうちに、事態は思わぬ方向に進んでゆく。やがて、衝撃のクライマックスへ……。しかし、この結末、反則なんじゃないでしょうか、いちはじめさん。

応募要項
課 題

■第16回 [ 遊び ]

「遊びをせんとや生まれけむ」とは平安時代の歌謡集『梁塵秘抄』の中の有名な一句。もしかしたら人間は「遊ぶ」ために生まれてきたのかも。でも、どんな遊びがあるのかな。子どもの遊び、大人の遊び、そして他には?

■第17回 [ 家 ]

 生まれた家。帰るべき家。出てゆく家。昔住んでいた家。思い出の家。古い家。新しい家。未来の家。誰もいない家。どこにでもある家。壊れた家。ホーム。ハウス。これでも家? ここも家? 家ならなんでもどうぞ。

締 切

■第16回 [ 遊び ] 
11/1 ~ 11/30(消印有効)
■第17回 [ 家 ] 
12/1 ~ 12/31(消印有効)

規定枚数

A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。

応募方法

郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。作品には表紙をつけ(枚数外)、表紙にはタイトル、氏名を明記。別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿と一緒にホッチキスで右上を綴じる。ノンブル(ページ番号)をふること。コピー原稿には別紙は不要。作品は折らないこと。作品の返却は不可。

※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。

応募条件

未発表オリジナル作品とし、最優秀賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。

発 表

第16回 2023/2/15、公募ガイドONLINE上
第17回 2023/3/15、公募ガイドONLINE上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載

※最優秀賞の商品券はAmazonギフト券に変更となりました。

応募先

● WEB応募
上記応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第〇回小説でもどうぞ」係

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


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受講料 5,500円

https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/