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せきしろの自由律俳句 第80回「のぼる」結果発表 (2/3)

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結果発表

 

結果発表

第 80回 課題: のぼる

 

 

佳作

落ちたら死ぬ高さにいる
(東京都 結城熊雄 27歳)

携帯を見て二階へのぼる姉
(東京都 水面叩 32歳)

背後に伸び続ける下り坂
(東京都 CASD 45歳)

まわれ右すればくだる
(高知県 よさ恋人 75歳)

猫を降ろしに行く
(栃木県 縦川 島々 33歳)

風船をできるだけ追う
(東京都 naoki 30歳)

踊り場で靴紐を結ぶ
(岐阜県 次元 32歳)

サーカス団のように母をのぼる
(三重県 はっち 35歳)

木登り自慢を聞いている
(北海道 三歩 71歳)

風呂でのぼせた子の夢
(三重県 一途彩士 22歳)

十一階まで耐え切ったら実家
(島根県 キラキラ金魚 19歳)

今日もエレベーターに残り香
(大阪府 なでしこ 82歳)

息切れした背中を押す
(東京都 隣のみみみーる 28歳)

課長の煙草の煙は祖父の匂い
(岐阜県 774 28歳)

父の代わりに脚立に上る歳
(大阪府 フルカワ 32歳)

ジャングルジム手を伸ばした先に蝶
(福島県 きりんのき 21歳)

エレベーターで君が上昇してくる
(大阪府 水槽 31歳)

ティンパニ5階まで運ぶ流れになる
(神奈川県 へやぼし 34歳)

逃亡者のように獣道
(大阪府 石川聡 42歳)

てんとう虫は空を探して人差し指を登る
(神奈川県 廣瀬順子 79歳)

体操服越し同級生の背中やわらかい
(長崎県 毎日ハッピー 45歳)

 

 

今月の総評

落ちたら死ぬ高さにいる』。高さが急速に伝わってくる句だ。このスピード感に伴う恐怖がたまらない。『携帯を見て二階へのぼる姉』。こういう光景を見たことがある気がする。姉には姉の事情がある。そんなことを思う。『背後に伸び続ける下り坂』。のぼってのぼってのぼり続ける。ふと振り向くと長い下り坂がある。歩んだ距離が伝わってくる句である。『まわれ右すればくだる』。先ほどの句同様、のぼっている途中の句だ。この後に「でも……」と続きそうな句である。『猫を降ろしに行く』。自分がのぼっている描写ではなく、はたまた猫がのぼっているのでもなく、猫を降ろしに行くという言い回しで今回のテーマを表現した句。『風船をできるだけ追う』。こちらも風船の上昇を間接的に表現している。テーマをどう処理したのか、そこにセンスを感じる二句だ。『踊り場で靴紐を結ぶ』。階段の途中、靴紐を結ぶのは踊り場しかない。誰かと一緒の時はすこし早足でのぼり、踊り場で靴紐を直す時間を作る時もある。『サーカス団のように母をのぼる』。幼子か、ペットか。微笑ましい光景である。『木登り自慢を聞いている』。お馴染みの話だとしても、前に聞いた話だとしても、さっき話していたのと一緒だとしても、そこに聞く優しさがある。

 

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