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笑いを知れば、もっと小説は上手くなる⑦:読者をミスリードせよ!

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「普通に考えればこういうことだろう」という常識の盲点を突けば、読者をミスリードさせることができます。そうしたテクニックを学びましょう。

読者の思い込みを利用してだます

以下の文を読んで、落ちを想像してください。

まず男は、あわてることなく優しい手つきでスカートをおろした。
それからゆっくリフラウスをはいだ。次にブラジャーのホックを外して引っ張ると、ブラジャーはそのまま男の足もとにはらりと落ちた。それから男は一気にパンティーを引きずり下ろした。

 

その結果は……。

 

今や男の目の前には、むき出しの……洗濯ロープがあった。

男は洗濯物を取り込んでいたのですが、どうでしょう、あらぬことを想像してしまいましたか。
人はとかく常識で考えてしまうもので、男が女性の下羞をはいでいればそういう想像をします。
では、次に、以下のようなごく普通の文章があったとします。

 

すみません、喫煙者用のボートはどちらでしょうか。

 

このセリフを最後にもってきて落ちにすると……。

 

豪華客船が遭難し、乗組員の誘導のもと、乗客たちは救命ボートに乗り込んでいく。とある紳士が、必死で立ち慟く乗絹員に尋ねた。
「すみません、喫煙者用のボートはどちらでしょうか」

 

落ちが平凡な場合、前提を非凡にすると落ちも非凡になります。

こうなるだろうという結をひっくり返す

以下のような失敗談があります。

若い平社員の鶴田くん。部長と飲みにいったとき、つい勢いで奥さんのビフテキは最高と自慢してしまいました。それを聞いた部長は、今から君の家に行くから、ビフテキを食わせてくれと言い始めます。
当然、急に言われてもビフテキの用意はない。そこで付け合わせだけ作って、料理を出す直前に誤ってディスポーザーに落としてしまったことにしようと算段する。
しかし、妻は付け合わせを落としてしまう。

この落ちがなるべくわからないように話を組み立ててください。

 

【模範解答】

「もしもし、ああ、おまえか。これから部長をお連れする。三十分後には着くから、そのつもりで」
「それ、どういうこと?」
「すまん、酒の勢いで、おまえのビフテキは最高なんて自慢しちゃったら、それじゃあ食わせろってことになっちゃって」
「今からじゃ無理よ、お肉ないし」
「この前話したじゃないか。課長に昇進できるかどうかは部長次第なんだよ。頼むよ」
「だけど、本当に肉がないのよ」
「じゃ、何ならあるんだ」
「玉ねぎがあるから、オニオングラタンスープならなんとかなるわ」
「ニンジンはあるか」
「ええ」
「じゃあ、グラッセにすればいい」
「ジャガイモもあるわ」
「ポテトフライになるな」
「でも、付け合わせだけあっても、肝心のビフテキがないんじゃお話にならないんじゃない?」
「大丈夫、部長がスープを飲んでいるとき、台所で皿を割り、それから叫んでくれ。『キャー、ビフテキが流しのディスポーザーに落っこちちゃっ
たわ』って。それでオレが部長に謝りながら付け合わせをお出しするって寸法だ」
はたして一時間後、部長がスープを飲み終えた頃、台所で皿の割れる音と夫人の叫び声がした。鶴田くんはわざとらしく聞いた。
「まさか、ビフテキをディスポーザーに落っことしたんじゃないよな」
「ううん、落っこちたのは付け合わせのほう」

 

※本記事は「公募ガイド2017年6月号」の記事を再掲載したものです。

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