長編小説一年計画①:初挑戦でも書けるプランを立てよう
ノープランでも長編が書ける人はそれでいい。そうでない人はまず原因を探り、初挑戦でも書けるプランとスケジュールを立てよう。事前準備なしではつまずく!
長編だとつまずく。その原因を探る
小説の醍醐味を味わえるのは、やはりなんといっても長編小説だ。小説を読んで、私もこんな話が書きたい、こんな物語が書けたらいいのにと思うのは、1作で本になる長さのある長編だろう。
プロの作家になりたいという人、または自分の小説を商業出版したいと思っている人は、なおさら長編が書きたいと思うはずだ。なぜならプロの登竜門と言われる文学賞で、1作で単行本化されるのは長編の賞だからだ。
ところが、いざ書き出すと行き詰まる、筆が止まる、全体が把握できない、ありきたりな作品だと思って嫌になる。それならばと事前に構成案(プロット)を考えるが、プロットを考えただけでなんだか一仕事終えた気がして書く気が失せる。
結果、また完結しない。その原因は「根性がないから」でも「才能がないから」でもない。なぜそう言えるか。短編ではプロ並みにうまく、熱心でもあるのに、長編は書けないという人がいるからだ。きっと何か原因がある。それを突破できれば、誰だって長編が書ける。まずは原因を探ろう。
長編のここでつまづく!
文章の密度が違う
短編は短距離走、長編はマラソン。文章の密度が違う。極端に言えば、ー文に意味を凝縮した詩のような文章で長編は書けない。また、短編が扱うのは人生の一瞬、長編はもっと長い時間を扱い、ペースも緩やか。
各ペースにむらがある
急に思い立って徹夜し、次は半年後ではだめ。「小説は銀行員のように書く」と言う。定期的に少しずつ書く。1 時間書いて1 0 分休憩などペースを守る。もう少し書きたいと思うところでやめるのが長続きのコッ。
ありきたりだと思う
構想段階では傑作と思えても、書き出すとだんだん駄作に思えるのはプロでも同じ。しっかり構想が練られているのなら、ありきたりだと思っても気にしないこと。ただし、本当にありきたりなら構想から出直す。
ストーリーを見失う
長編を書いたことがない人が、ざっくりとしたあらすじだけ考え、ノープランで見切り発車するとこうなる。それでも書ける大天才はいいが、うまくいかないのなら、事前の計画を練り直すしかない。
メリハリがないと思う
メリハリがない、バランスが悪い、面白くない、進行が早すぎる、遅すぎるなど、小説の大半の問題は構成にある。構成がおろそかではなかったかを顧みて、何が足らないのかをーから見直すのが近道。
嘘っぽいと思う
自分の知らない世界を書こうとして、その世界に入り込めない、作りものだと思ってしまうパターン。それなら自分のよく知っている世界を舞台にするしかない。平凡な職種でも他人には目新しいもの!
はじめて長編小説を書く人におすすめの手順
いきなりノープランで書き出すのはだめ。では、どんな手順を踏めばいいか。長編初心者にオススメの方法を紹介する。
賞の特徴を知る。受賞作を読む。
応募前に賞の特徴(創設の趣旨、母体となる雑誌の内容、ジャンル、選考委員の顔ぶれなど) は把握しておく。過去の受賞作や選評も読んでおこう。特に選評は大事で「こういう作品を望む」といったヒントがある。また、「この賞の出身者になりたい」という志望を持つためにも、賞のことはしっかり調べておこう。
題材を決める。下調べをする。
作品は、一にも二にも自分の好きな文芸ジャンルで、自分の書きたいことを書く。特に長編初心者は、自分に近い環境の主人公とし、なじみのない世界は扱わないこと。必要に応じて下調べもするが、すでに熟知している世界で勝負したほうがつまずかない。
ただし、平凡な日常を書くという意味ではないので注意。
構成案を練り、プロットを作る
プロットをしっかり作る。
書く前に考えられることは考え尽くす。プロの作家にはあらすじを膨らませた程度で書き始める人もいるが、それは物語のあるべき姿がわかっていて、即興で書いていけるから。長編初心者はプロットを綿密に作る。それが長編を書く練習にもなってくれるし、疑似体験にもなる。
さらにプロットを詰めてから執筆
通常は想定されるシーンを箇条書きにしていけばプロットは完成するが、さらに詰めて、セリフや情景、心情も詳しく書く。目標はプロットで100枚。アマチュアは「と言った」か「とつぶやいた」かでも迷い筆が止まるので、できるだけプロット段階で膨らませる。文章にこだわるのは執筆に入ってから。
完成したら寝かせる。徹底的に推敲する。
書き上がった原稿は1か月ほど放置(この期間も推敲に含む)。その間、中身は見ない。何を書いたか忘れかけた頃、未読の原稿のつもりで見直すとアラがよく見える。
その後、辻棲が合わない、不自然といった箇所を洗い出し、最後に用語用字、表記の不統一などを確認。応募締切をもって推敲終了とする。
小説作法Q&A
Q:書き出す前に、タイトルが思いつきません。
A:タイトルは、書き出す前までに決めておいたほうがいい。タイトルが決まらないということは作品を把握できていないということだから、そういうときは、「要するに一言で言えばどんな話だ」と考えて要約し、それを仮題とする。書くときに必要なタイトルは作品を的確に要約したものだから、仮題でもこれがあれば作品はブレない。正式タイトルはあとで考えればいい。
※本記事は「公募ガイド2017年11月号」の記事を再掲載したものです。