着想のヒント、差し上げます④:文中で使いたいウンチクと教養


ウンチクは武器になる。ひけらかせば嫌味だが、さりげなく使えば教養を感じさせることができる。
ここではウンチクのネタを紹介しよう。
ウンチクはあなたの文章の武器になる
負け惜しみを言っている人のエピソードを書いたあと、「イソップ童話の『すっぱい葡萄だ』」と書けば、趣旨がよくわかる。
「やっていれば今頃は」と思ってしまったエピソードを書いたあと、「いわゆる反実仮想だ」と書けば説得力が増す。
また、親も成長することを書いて「『お母さんを育てるのは、赤ちゃんです。』というコピーがあったが」と書いたり、後手後手の政策を批判して「『本降りになつて出て行雨やどり』という古川柳があるが」と書けば、趣旨がよくわかるうえにキャッチーだ。
ウンチクは、文章を書くときに大きな武器となる。
人間を書くときに使いたくなる素材
イソップ物語
- 田舎のネズミと町のネズミ:都会と田舎を対照的に書いたときに。
- 北風と太陽:強制せず、自ら行動させるように仕向けたいときのたとえに。
- すっぱい葡萄:手にすることができなかった者の負け惜しみをたとえるときに。
- 犬と肉:肉をくわえ、水に映った自分にほえ、肉を落とす。強欲を注意する寓意に。
- 狐と鶴の御馳走:好き嫌いや向き不向きは人それぞれということをたとえるときに。
- 卑怯なコウモリ:そのときどきで、敵対するどちらにもいい顔をするずるい人のたとえに。
古典落語
- 死神:救ってもらった人との約束を破ると、報いが来るというたとえに。
- 藪入り:息子は信用していいというたとえに。
- 芝浜:腕はあるがやる気がないという夫を奮起させるにはウソも方便というたとえに。
- 千両みかん:誰かにとっては価値があっても、別の誰かには価値があるとは限らないたとえに。
- 長屋の花見:貧乏でも見栄を張ろうというたとえに。
- ちりとてちん:知ったかぶりするとひどい目に遭うたとえに。
- そばの殿様:宮仕えのつらさのたとえに。
現象・効果
- ダニング=クルーガー効果:能力が低い者が自分を高く評価してしまうこと。
- ハロー効果:権威等で評価が変わる。
- プラシーボ効果:薬だと思って飲めば小麦粉でも効果があるということ。
- ウェスターマーク効果:幼なじみなどには性的な興味を覚えないこと。
- 対比効果ヤンキーなどが人に親切にすると実際以上にいい人に見えること。
- 反実仮想:やっておけばこうなったのにと現実に反する仮想がわいてしまうこと。
- 匿名性の原理:正体がバレないと思うと攻撃性が強くなる。アイヒマン実験による。
- 認知的不協和:行列に並ぶなど苦労すると、なぜかおいしく感じたりすること。
- ピグマリオン効果:教師が期待すると学習者の成果が上がること。
世の中を「あっ」と言わせたコピー
諸君。
学校出たら、
勉強しよう。(C=竹内元臣、CL=日本経済新聞社)
昨日は、
何時間生きていましたか。(C = 仲畑貴志、CL = パルコ)
殴った方が泣いている、
そんなケンカもありました。(C = 鵜澤敏行、CL = 学習研究社)
女だって、女房が欲しい。
(C = 根岸礼子、CL = NTT・でんわばん)
男も妊娠すればいいんだ。
(C = 根岸礼子、CL = オカモト・避妊用具)
あなたなんか
大好きです。(C = 吉田早苗、CL = 西武百貨店・バレンタインデイ)
少しずつ、結婚しようよ。
(C = 中野秀、CL = 松屋・ブライダルフェア)
私は、あなたの、おかげです。
(C = 仲畑貴志、CL = 岩田屋)
恋を何年、休んでますか。
(C = 眞木準、CL = 伊勢丹)
サラリーマン
という仕事は
ありません。(C = 糸井重里、CL = 西武セゾングループ)
お母さんを
育てるのは、
赤ちゃんです。(C =岡部正泰、青木智子、CL = 講談社『えくぼ』)
突然の、
親孝行を
お許しください。(C = 岡田亜子、CL = 岩田屋)
参考資料:『人生を教えてくれた 傑作! 広告コピー516』(メガミックス編・文春文庫)
さらっと使うと教養を感じさせられる素材
あなたはどっち派? 慣用句のことば編
◎ | △ |
---|---|
足をすくわれる(26.3%) | 足下をすくわれる(64.4%) |
怒り心頭に発す(23.6%) | 怒り心頭に達す(67.1%) |
押しも押されもせぬ(41.5%) | 押しも押されぬ(48.3%) |
間が持てない(29.3%) | 間が持たない(61.3%) |
声をあららげる(11.4%) | 声をあらげる(79.9%) |
采配を振る(28.6%) | 采配を振るう(58.4%) |
寝覚めが悪い(37.1%) | 目覚めが悪い(57.9%) |
あなたはどっち派? 慣用句の意味編
◎ | × | |
---|---|---|
確信犯 | 正しいと信じ(17.0%) | 悪いと知っていて(69.4%) |
憮然 | 失望してぼんやり(17.1%) | 腹を立てている(70.8%) |
姑息 | その場しのぎ(15.0%) | 卑怯な(70.9%) |
煮詰まる | 結論がまとまる(51.8%) | 行き詰まる(40.0%) |
割愛 | 惜しいが手放す(17.6%) | 不要なものを捨てる(65.1%) |
号泣 | 大声で泣く(34.1%) | 激しく泣く(48.3%) |
失笑 | こらえ切れず吹き出す(27.7%) | あきれて笑う(60.4%) |
上記の慣用句は左が正しいとされる言い方(%は文化庁「国語に関する世論調査(実施年はいろいろだが平成20年代」から)
江戸古川柳
- 本降りになつて出て行雨やどり
- くたびれた奴が見つける一里塚
- 夫とは向きをちがへて昼寝する
- 添乳して棚に鰯がござりやす
- 蠅は逃げたのに静かに手をひらき
- 御背中をきつく流すが返事也
- さあ小判ほしかやろうに下女は逃
- 呉服屋の繁盛を知る俄雨
- まだ死もせぬのに泣いてしかられる
- 泣きながら眼を配る形見分
- 今食へばよしと肴屋置て行き
- 肥取に一しゃくたのむ花ばたけ
- 化けそうなのでもよしかと傘をかし
- 寝て居ても団扇の動く親心
百人一首
- 春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山(持統天皇)
- 秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ(天智天皇)
- 田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士のたかねに雪は降りつつ(山部赤人)
- 花の色は移りにけりないたづらに我身世にふるながめせしまに(小野小町)
- 久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ(紀友則)
- 世の中は常にもがもな渚漕ぐあまの小舟の綱手かなしも(鎌倉右大臣)
- 来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ(権中納言定家)
※本記事は「公募ガイド2018年12月号」の記事を再掲載したものです。