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文学賞特集②:受賞する小説の条件2

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小説と映像化

商品としての小説

テレビもラジオもなく、流通も出版も今ほどは発達していなかった明治・大正の頃の文壇は、読者に向かってではなく身近な仲間に向かって書くサロン文学に近かった。
ところが、戦後は出版部数が多くなり、読者の反響が評価となる。すると、自分のためだけに書くことはできなくなり、「私小説は死んだ」(小林秀雄)ということになる。

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その意味では、現在はすべての文学に商品性があるわけだが、その度合いを示せば、図3のようになる。商品性の少ない順に見ていくと、純文学、中間小説、エンターテインメント小説となろう。
もちろん、話を分かりやすくするためにざっくりと図式化したものではある。戦前に書かれた純文学でありながら、結果的によく売れているものもあれば、エンターテインメント小説として書かれながら、図らずも深い文学性を内包してしまう場合もある。
それ以前に純文学とエンターテインメント小説にどれほどの違いがあるか不明だが、そのあたりは便宜的なものだと思っていただきたい。

際立った売りが不可欠

文学作品も市場に置けば商品だが、商品であればウリが必要であり、小説の場合、それはより多くの人の心を動かせる内容かということになる。そのような小説はよく売れ、売れれば映画化、ドラマ化されたりもする。
表1は、歴代の「本屋大賞」1位、2位に輝いた作品だが、1位に限らず、第6回までの上位作品はほぼすべてが映画化、ドラマ化されている(第7回以降も映像化されることは確実)。
表2は、この1年に映画化(予定含む)された主な小説だが、こちらも話題作、ヒット作ばかりで、「おもしろそう」と思わせるウリがある。
逆に言うと、新人賞応募時には選外だった作品でも、何か大きなウリがあ
あると映画化されることもある。たとえば、日本ホラー小説大賞選外の『バトル・ロワイヤル』(高見広春)、「このミステリーがすごい!」大賞 選外の『そのケータイはXX(エクスクロス)』(上甲宣之)とか。
また、ポプラ社小説大賞選外の『食堂かたつむり』(小川糸)、江戸川乱歩賞選外の『リング』(鈴木光司)という例もあり(『リング』は最終選考でも高評価だったが、推理小説ではないと判定された)、受賞は逃しても編集者が拾ってくれることがある。
ただし、設定やキャラクターが際立っていないと印象にも残らず、すぐに忘れられて埋もれることになる。

 

 

 

※本記事は「公募ガイド2011年7月号」の記事を再掲載したものです。

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