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文章構成法の奥義③:最初に戻れば話は終われる

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パーツが連動した円環構造

文章は、紙にしろ、パソコンの画面にしろ、平面上にあります。どの文も等しく同じ面の上に並んでいます。
しかし、〝関係〞となると、因果関係だったり、逆接や敷衍だったりして、必ずしも並列の関係ではありません。段落の位相が違うわけです。
もしもすべての段落が並列であれば、図1のように話が延々と横滑りしていく構造になってしまいます。

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図1は、自己紹介としては申し分なく「私」を紹介できていますが、個々の話題の関連がないので、詰まるところ、最後に「ええと、ということで、よろしくお願いします」と言うよりなくなるパターンですね。
では、それぞれの話題が関係しあうように仕組んでみましょう。
図2の場合は、書き出しの①を受けて、②→③と話が積み重なっていき、最終的に④は②と絡み合いつつ、①に戻っています。このような円環の構造にすると、だいたいの文章は着地できます。
この構造(建物のようにそれぞれのパーツが微妙な力学の上にバランスを保っている構造)の場合、どれかひとつでもパーツを取ってしまうと、構成が歪んでしまったり、最悪の場合、話が壊れてしまったりしますが、それは巧みな構成の特徴でもあります。逆に言えば、図1の場合、①〜④のどれかが抜けても大勢に影響はありません。
それぞれが孤立し、機能しあっていないからです。

機能していないパーツを修正する

たとえば、以下のような作文があります。全文は書けないので要約します。それが図3です。

スクリーンショット 2023-12-25 153827.png


一読して、「?」と思ってしまうのは、③の部分。これは起承転結の転を履き違えたものでしょう。
よく起承転結の例として引き合いに出される頼山陽の俗謡では、

 

起 京の三条の糸屋の娘
承 姉は十六、妹十四
転 諸国大名は弓矢で殺す
結 糸屋の娘は目で殺す

 

のように転で趣意を変えていますが、転は孤立しているわけではなく、最終的には結に係っています。
しかし、図3の③は孤立していますから、いっそのことこれを削り、

 

①最近髪を切った。いわゆるショートカットだ。
②すると、まわりの人に「失恋でもしたの?」と聞かれた。
④他人がなんと言おうと、私はショートカットを楽しみたい。

 

としたほうがいいですが、②と④が連動するように③を書き換えてもいい。

 

①最近髪を切った。いわゆるショートカットだ。
②すると、まわりの人に「失恋でもしたの?」と聞かれた。
③それはショートカット(短絡)ではないか。
④他人がなんと言おうと、私はショートカットを楽しみたい。

 

たとえて言うと、これは「2×3+○=9」の空欄を埋めるような作業です。

統括するパーツを加える

今夏は節電の夏と言われていますが、節電自体は昔から呼びかけられていたものの、なかなか実現できませんでした。

スクリーンショット 2023-12-25 154255.png


しかし、今夏のような状況になってしまうと、意外とできてしまうものなのだなあ、そう思った人がいたとします。
こういうのを「気づき」とか「見つけ」と言います。着眼点ですね。
これが見つかると、あとはこの前段を考えるだけですので、

 

①節電は昔から呼びかけられていた。
②でも、わが家は実現できなかった。
③今夏の月の電気代は二割減だった。
④今までは本気じゃなかったのかも。

 

というように、落とし所が見えていると、文章はそこに向かってまっすぐに進んでいけます。
しかし、いい気づきほど見つけるのは難しく、なかなか書き出せないでいる人も多いと思います。
では、着地点が見えないまま、書き出してしまいましょうか。

 

①減量したいが、つい食べてしまう。
②節電したいが、ついエアコンをつけてしまう。
③ところが、エアコンが故障したら、扇風機だけで夏を乗りきれてしまった。

 

さすがにまとまりがありません。
①と②は並列、②と③は逆接でつながっていますが、①〜③を統合するものがありませんね。
柱はあるが、それを束ねる屋根がないといった状態です。
では、屋根を乗せましょう(図6)。

 

①減量したいが、つい食べてしまう。
②節電したいが、ついエアコンをつけてしまう。
③ところが、エアコンが故障したら、扇風機だけで夏を乗りきれてしまった。
④体も故障すれば、あっさり減量できるかも。

 

着地点が見えないまま書き出すのはベストとは言えませんが、書いているうちに着地点を見出すこともあります。それは書くことが考えることだからです。

 

※本記事は「公募ガイド2011年9月号」の記事を再掲載したものです。

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