せきしろの自由律俳句 第82回「時代」結果発表 (2/3)
第 82回 課題: 時代
佳作
東京タワーが低い
(福島県 きりんのき 22歳)
写メのメのこと教えてやらない
(東京都 QUDO 26歳)
手のひらを耳に当てて電話する真似
(宮城県 柏 26歳)
違う色の土が出てきた
(岐阜県 次元 32歳)
いつかの青春を乗せた電車の廃線跡
(長崎県 むっちゃん 35歳)
ちゃんと生きてちゃんと老けた同級生と比べる
(大阪府 石川聡 42歳)
そのプリキュアのシリーズを知らない
(滋賀県 ゆ 17歳)
進化した妹の小学校の筆箱
(滋賀県 y 17歳)
教科書に載りそうな今日
(愛媛県 藤永有咲 19歳)
いつかは令和時代と呼ばれる
(愛媛県 藤永有咲 19歳)
酸っぱいグミが供えてある
(島根県 ヒロ 20歳)
ずっと植物だけを眺めていたいな
(千葉県 ひれかつ 21歳)
遺影になるだろう写真を撮る日
(北海道 西宮ケイ 24歳)
通ってた頃はヤンキー校
(東京都 まるまる 35歳)
観覧車のように時代はもう下り
(熊本県 貴田雄介 37歳)
恐竜も歩いた帰り道
(和歌山県 田中克則 44歳)
笑う側から笑われる側へ
(大阪府 石川かるた 50歳)
セピア色の時代へ回帰する夜中
(東京都 汐海 岬 51歳)
実家のアルバムがずうっと昭和
(東京都 ビールおかわり 52歳)
化石を使って町おこしする
(岐阜県 場外 53歳)
葬儀の説明テーブルには茶とグミ
(東京都 根本史紀 53歳)
凹んだトタンが錆びている
(北海道 羊羊 54歳)
いつか止む息してる一斉に
(青森県 わさお公式 56歳)
まだその強調語を使っている
(北海道 福永敬子 57歳)
この時代に生きるほかなく
(神奈川県 さとしん 60歳)
月に住める時代が来ても地球に残る
(茨城県 さくらんぼ 69歳)
完熟の柿もぎ取るまでが青春時代
(千葉県 江戸川散歩 72歳)
点滴の滴数えている夜長
(山口県 与志朗 84歳)
『東京タワーが低い』。いつしか東京タワーより高い建造物だらけになった。高さで時代を感じることもあると教えてくれる句だ。『写メのメのこと教えてやらない』。そう言わず教えてあげて欲しいが、教えても「ああ」とリアクションが薄そうでもある。『手のひらを耳に当てて電話する真似』。もうすぐ消える動きだろう。今後コントでの電話のシーンはどうなっていくのか。同様に火をつける時にマッチを擦る動作をする人はもういない。『違う色の土が出てきた』。平成とか昭和とか、そういう区分ではない「時代」の句だ。『いつかの青春を乗せた電車の廃線跡』。廃線になって今はない路線で通学していた高校時代の友人を思い出す。みんなどこへ行ったのか。『ちゃんと生きてちゃんと老けた同級生と比べる』。特に私のように定職に就かず生きてきた者は、年々この句のような状況が増える。その都度この句を思い出しそうだ。『そのプリキュアのシリーズを知らない』。私は仮面ライダーをスカイライダーまでしか知識がない。しかしそれからの方が歴史は長いのである。『進化した妹の小学校の筆箱』。どれくらい進化してるのだろう。音声で開いたりするのか。思えば筆箱はちょっとした宝箱だった。『教科書に載りそうな今日』。みんな時代時代を生きていく。
AI部門は「時代」というテーマに対し「俳句」でなくただの「定義」になってしまっているものが多く、自由律俳句をやり始めはこんな感じになるよなあと思った。これからの成長が楽しみである。また「それっぽい」もの、いわゆる「自由律俳句っぽいもの」も多かった。こちらも今後に期待する。