1週間で文章力を上げる!3:説明トレーニング


ことばを説明する
言葉の意味は知っていても、いざ説明しろと言われると、意外とできなかったりします。そこで的確に説明するトレーニングをします。
客観的に説明する
たとえば、「書籍」って何? と言われたら、どのように説明しますか。「文章や絵などを印刷し、ページをめくって見ていくかたちに綴じたもの」とでも言えばいいでしょうか。辞書の編集者になったつもりで、日本語を日本語に変えてみましょう。
実習課題
以下の言葉を辞書的に、客観的に説明してください。
日本/公園/インターネット
より掘り下げて考える
前項では辞書的に説明をしましたが、ここでも、もっと掘り下げて考えましょう。何かテーマを与えられたときは、「そもそも○○とは何か」と考えると思いますが、そうした思考のトレーニングです。
たとえば、「平和」であれば、「当たり前のことが当たり前にできる状態」といった感じです。
実習課題
以下の言葉を、誰もが納得できるように説明してください。
友だち/自由/社会
趣旨を説明する
言葉だけでなく、作品についてしっかり把握するトレーニングをしましょう。
要約トレーニング
書いているうちに何がなんだか分からなくなったり、説明がだらだらと長くなって、「要するに何?」と言われてしまったりするのは、自作を把握する力、つまり、要約力の不足が原因です。
トレーニング方法ですが、既に読み終えた短編集の一つや二つはお手元にあると思います。それらを片っ端から要約していってください。字数制限はありませんが、なるべく簡略に。
要約文が的確かどうか確かめたいなら、それを誰かに読んでもらい、的を射ているか聞いてみましょう。あるいは、お互いに要約文を書いてみて、読み比べてみるのも一考です。
実習課題
昔話「かちかち山」のストーリーを簡潔に要約し、50字以内でまとめてください。
タイトルトレーニング
要約文を最大限つづめたものがタイトルです。キャッチコピー、キャッチフレーズと言ってもいいですし、要約した対象が短い単元なら見出しと言ってもいいですが、いずれにしても趣旨を短い言葉で表したものということになります。
タイトルづけには、大きく分けて二つのアプローチの方法があります。
一つは内容表示です。たとえば、司馬遼太郎作品で言うと、『関ヶ原』『最後の将軍』『竜馬がゆく』『義経』などは内容表示ですね。タイトルを見ただけで、ある程、内容が分かります。
もう一つは、内容表示にひとひねり加え、それを象徴するものなど別のものに変換したもの。たとえば、『峠』『夏草の賦』『歳月』『花神』『坂の上の雲』などがそうです。要約ということに主眼を置いて、トレーニングしてみましょう。
実習課題
芥川龍之介『蜘蛛の糸』を要約し、作品の中心をきゅっととらえた新たなタイトルをつけてください。
時間トレーニング
話の中にむやみに回想を入れるのは考えものですが、入れたいとき、入れなくてはならないときもあるでしょう。そのとき、書き方が悪いせいで現在と回想が混ざってしまうことがあります。
《三十年ぶりに同窓会に行った。料亭で開演を待っていたとき、窓の外の公園に鉄棒が見えた。そう言えば担任の井川先生は鉄棒が得意だった。定刻を少し過ぎ、その井川先生が現れた。来年還暦だというのに若々しい。目の前で井川先生が大車輪を披露する。フィニッシュはいつもの宙返り降り。ピタッと着地して拍手喝采を浴びている。しかし、よく見ると、先生の髪には白いものがだいぶ交じっていた。》
太字の部分は回想ですが、回想の入りと明けをはっきりさせたいですね。
実習課題
井川先生について書かれた例文を、現在と回想が区別できるように書き換えてください。
※本記事は「公募ガイド2012年6月号」の記事を再掲載したものです。