1週間で文章力を上げる!4:写生トレーニング


デティールを書く
言葉はひとつの記憶装置と言えます。
ただ、DVDやビデオに比べるとあやふやな記憶装置であり、読む人によっては、書き手が意図した像とはまったく違うものを頭の中に再生してしまいます。
では、そうならないように、言葉でスケッチするように対象を写しとっていくことにしましょう。そのためには、まずは目を働かせて細部を書いていきます。
たとえば、左上のような家があります。
この家のことを、これを見たことがない人に言葉だけで伝えてみましょう。
《手のひらの上に家がすっぽり収まっている。玩具の家だ。右側、ちょうど親指の付け根あたりには玄関があり、その横に窓がある。窓辺には花が飾られ、同じような窓は一階と二階に二つずつある。屋根は三角で、屋根のてっぺんの奥には煙突らしきものが二本見える。》
と、まだ途中ですが、このようになるべく目でスケッチするように情景を写しとっていきます。
一度、皆さんも挑戦してみてください。
そして、その文章を誰かに読ませ、その文章からイメージされた家を絵に書いてもらいましょう。おそらく写真の家とはだいぶ違うものになるはずです。
それほど、言葉の持つ情報量はほんのわずかで、絵や写真のように寸分違わずに対象を再現することは難しいということが分かると思います。
実習課題
下の玩具の家を写生文で書いてください。ただし、比喩は使わないでください。
読み手に推測させる
目の前にあるものを読み手に伝えようとするとき、それが互いに見たことがあるものであったり、名前が分かっているものであったりすると、説明は容易になります。
たとえば、先ほどは「窓辺には花が飾られ」としか書きませんでしたが、「窓辺には」ではなく、「フラワーデッキには」としたほうが、より窓辺の形状が分かったでしょう。
これは比喩にも通じますが、何かを伝えようとして伝えきれない場合、書き手と読み手が共通して認識しているものを挙げ、「○○と呼ばれている□□」とか「○○のような□□」と言えば、□□がどんなものか推測しやすくなります。
ただし、○○が見当違いだったり、読み手の知らないものであったりすると、まったく説明の要をなしません。
実習課題
下の写真を見たことがない人に、比喩を使って写真に写っている人の顔を伝えて下さい。
時間と空間を書く
創作の文章では場面を書くことが多い
ですが、場面には時間と空間があり、その中には人物もいれば背景もあって、それが時間とともに動いています。
現実の情景は時々刻々と動いていますが、文章の場合、書き手がそう書かない限り、ストップモーションであるかのような印象があります。
では、ここで課題です。
今あなたは友人と二人で、週末のファミリーレストランで順番待ちをしています。週末の夕方とあって混雑しています。隣の女性は同僚らしき男性にしきりに夫の愚痴を言っています。店の奥からは先客たちのざわめきとウェイターの声が聞こえています。一時間待って、ようやく席が空きました。そのときはもうすっかり日が落ち、愚痴を言っていた女性たちはもう食事を終えたところでした。
実習課題
上記のファミリーレストランの場面を、時間と空間を意識して書いてください。
※本記事は「公募ガイド2012年6月号」の記事を再掲載したものです。