1週間で文章力を上げる!6:構成トレーニング


マンガのノベライズ
文章表現を工夫しつつ、同時にストーリーを追いかけるというのも大変な作業ですが、頭に描いた情景を文章化していくことが苦手な人には、マンガを小説化していくという練習方法があります。
設定や展開、セリフなどはそのままでOKです。絵で表現された情報を、正確に、過不足なく文章に移して(写して)いく感じです。
ただし、マンガは作者視点ですから主人公の姿が見えていますが、人物の目で語った場合は見え方が違いますから注意してください。
実習課題
お手元にあるストーリーマンガを小説にしてみましょう。完成したら元のマンガと比べてみましょう。
名作の骨格を借りる
言葉に文法があるように、ストーリーにも法則があります。
言葉は母親から口うつしで教わり、「僕はジュン」とは言うが、「は僕ジュン」という語順では通じないと理解したり、「髪を触る」は動作にウェイトがあるが「髪に触る」は部位にウェイトがあると感覚的に理解したりします。
ストーリーの文法も同じで、子どもの頃から物語に親しんでいるうちに、「物語はこう始まってこう終わる」と理解したり、「この展開になる前にはそれとは逆の場面が挿入されるのが普通」といったことを感覚的に理解したりします。
このストーリーの文法を学ぶには、日本語の文法を習うように頭で理解するという手もありますが(4月号特集「ストーリーメイクの鉄則」参照)、感覚的に理解していくトレーニング方法もあります。それがリメイクという方法です。
リメイクの場合、ストーリーの骨格そのものは変えませんが、設定や人物、テーマなどは大胆に変えてかまいません。
実習課題
昔話「桃太郎」のストーリーはそのままに、これを小説にしてください。設定や人物名などは換えてOK。
続編を書く
既存の作品の続編、もしくは前段を書くという練習方法です。
前々項のマンガのノベライズの場合は、マンガか小説かという違いはあっても基本的には同じストーリーでした。また、前項のリメイクの場合は、設定や登場人物は変えましたが、ストーリーの骨格は同じでした。
今回の続編の場合は、設定や登場人物はそのままですが、ストーリーはまったく新しいものになります。
その分、ストーリー作りが苦手な人には難度が高くなりますが、話の舞台や人物設計はできていますので、多少は負担が軽いでしょうか。キャラクターの強い作品の方が、ストーリーを考えやすいです。二次創作のような感じで、お好きな作品の続きを書いてみましょう。
実習課題
お好きなマンガや小説の設定やキャラクターを借り、新たに別の掌編を書いてみましょう。
論理的思考と俯瞰的思考
筋は曲がっても脱線してもいいですが、整合性がないというか、必要のない寄り道は困ります。冒頭、おばあさんが洗濯をしていると桃が流れてきて、しかし、そのエピソードとは関係なく話が進行してしまえば、「あの桃のくだりはなんだったの?」と思われてしまいますね。
筋の通ったストーリー展開のためののトレーニング方法は数学です。数学では必要な迂回ということはありますが、必要のない迂回はありません。仮定という問いから始まり、最終的な答えを得るまで、筋道が通っています。
文章や小説の場合も同じで、意味のない余談は書かないほうがいいですし、最初に問いがあり、最後にそれに答えることでエンディングとなるというところも数学と同じです。
まあ数学でなくてもいいですが、話の結構を作るためには、議論したり思索したりして、論理的に筋道を立てて考える訓練は必要です。
また、構成を考える頭は全体を把握する頭、全体を俯瞰して見る頭です。
このトレーニング方法には、既存の小説やマンガ、映画からあらすじやプロットを書き出してみる「逆プロット(逆箱とも言います)」があります。
これをやると個々のシーンとシーンの関係が分かり、全体の構成を把握する練習になります。
※本記事は「公募ガイド2012年6月号」の記事を再掲載したものです。