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コトバの魔術師 作詞家になろう!

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近年、また求められ始めている「感動をくれるコトバ」。

1位 6,828万枚 阿久悠
2位 4,984万枚 松本隆
3位 4,576万枚 秋元康
(オリコン調べによる/2011年6月20日現在)
このランキングは、日本の作詞家別シングル総売上枚数を表したもの。
1990年代終盤から作詞作曲、そして編曲までをこなすアーティストが増え、Jポップにおける作詞家の活躍舞台は激減している、と言われてきた。ところがご覧あれ、先のランキングのトップ3は、いずれもそうしたアーティストではなく、職業作詞家としての御仁が占めている。これはいったい、どういうことか?
もちろん、この3人がそれぞれ時代の先端をいくプロであるということはまちがいない。4位以下のランキングを見ても、歌唱まで含め、楽曲制作をこなすアーティストがトップ10中の約半数を占めてはいる。だが……。
ネットの発達により、文字媒体の流通が多岐にわたっている現代。カラオケでは必ず歌詞を文字として目にする。歌詞検索のホームページは、音楽の中の「コトバ」に感動を求めるファンで大にぎわいだ。そう、日本の音楽シーンで、ポップスの隆盛期に歌謡曲や演歌が死に絶えなかったように、プロが作った歌詞もまた、無くなることはなく、常に求められている。
では、その「職業作詞家」になるにはどうしたらいいか? そして、作詞家でい続けるために、コトバはどう「磨いて」いくべきか? 
流行歌の世界において、作詞家という仕事に未来はあるのか?
そのヒントを求めて、まず次のページからは、インタビューで「職業作詞家の現実」を追いかけてみる。

もりちよこさんインタビュー

自分で、自分の作品をプレゼンすることから、すべてが始まる

――「作詞家になりたい」と思ったのは、いつ頃のことですか?

高校時代に音楽を始めて、大学を卒業してからも2〜3年はライブハウスなどで弾き語りをしていました。シンガーソングライターになりたくて、いろんなコンテストにも応募しましたね。結局、「いいところまで… … 」止まりでしたけど(笑)。その後、アルバイトで広告の世界に入って、それ以降の長い間、コピーライターの仕事をしていたんですが……大きなきっかけになったのは、実家が阪神大震災で被災したことですね。「いまやりたいことをやらなきゃ、人生もったいない!」って思った。コピーの仕事はすごく楽しかったし、やりがいもありましたけど、もう少しだけ、「残る」仕事がしてみたくなったんです。それで、一度はあきらめた大好きな歌の仕事、それも作詞の仕事がしてみたいと思いました。

――「書くこと」は、子どもの頃から好きだったのですか?

そうですね。小学生の時に「おはなしを書いてみない?」と勧めてくださる先生がいらしたんです。物語を書いて、ちょっとした絵を添えると、母がピンクのリボンで綴じてくれて。そうやって自家製の絵本をいくつも作っていました。「書くこと」「創ること」はその頃から大好きでしたね。

――どのようにして作詞家になったのですか?

広告の会社は辞めていたし、作詞の世界に何のつてもなかったので、先行きを模索していた時期があったんです。そんなとき、コーラスをしている友人が、NHKの子ども番組の録音スタジオに連れて行ってくれたんです。そこで、番組のプロデューサーを紹介してもらったときに、思い切って「作詞の仕事がしてみたい」と伝えたら、「じゃあ、作品をいくつか書いて持ってきてください」と言われて。すぐに10作ほど書いて持っていきました。それは使われることはなかったのですが、暫くして声をかけてくださったんです。「夏の歌、書いてみませんか?」って。それで初めて採用していただいたのが「ひまわりとわたあめ」という、私のデビュー作品なんです。

――作詞家になって、それ以前の経験は役に立ちましたか?

自分で歌を作って歌っていたこと、それにコピーの仕事で言葉を練り上げていた経験は、やっぱり大きく役立ちましたね。それと、広告制作の現場経験で、自分で考えた企画を自主的にプレゼンテーションする癖がついていたこと。これはいまでも、やっておいて良かったなと思います。作詞家の仕事の大部分は、そのプレゼンテーションから始まりますから。

歌と、歌うことが大好き!そこから「職業作詞家」へと成長していく

――デビュー以降は、コンスタントにお仕事が入ってきたのですか?

いえいえ!(笑)それから5〜6年は、フリーランスで担当するコピーの仕事と兼業でしたし、今でも、コピーやネーミングの仕事は、いただけるのなら積極的にやりたいと思っています。作詞家の仕事って、「○○先生に是非、お願いします」という指名だけでやっていけるのは、ほんの一握りの大御所の方だけ。私の現状でいうと、指名の仕事は半分。残りの半分は、他の作詞家の方とのコンペティションだったり、自主的にプレゼンテーションした結果、採用になる仕事だったり。自分で仕事を作っていかなきゃ、続かない職業だと思います。

――ほかに、作詞家になるために必要な「資質」はなんですか?

基本は「歌が大好きなこと」だと思います。歌を楽しんで歌える人じゃないと。今は、作詞の仕事の95%が「曲先」といって、曲が先に出来上がっていて、それに歌詞をはめ込む作業なんです。曲の中のブレス(息つぎ)の位置と言葉の切れ目が合うように作詞するんですが、歌うのが好きで、カラオケなどでブレスが体に染み込んでいる人は、この作業に馴染んでいきやすいと思いますね。
実際の仕事では、曲をもらうと、それこそ夢に出てくるまで聴き込んで、ソラでハミングできるようにしてから言葉を練る。歌詞が出来上がると、実際にはめ込んで歌ってみる。その繰り返しだから、作業中は喉が渇くし、声もかれます(笑)。歌うことが好きじゃなきゃ、出来ないですよね。

――作詞家を目指す方に、アドバイスをお願いします。

コピーライター時代に先輩に言われた「足で書け!」という言葉は、作詞家にも通じると思います。デスクに向かって、いつまでも言葉が降りてくるのを待つのではなく、とにかく出かけて、歩いて、いろんなものを見て、いろんなことを経験して、いろんな人と話す。そうして自分の中に貯まっていったものが、すべての創作の源泉だと思う。
それと、作詞家と、シンガーソングライターは違うということはわかっていた方がいいかもしれないですね。シンガーソングライターは、自分の思うことを私小説的に、好きなように書いて、あとは聴く人に判断を委ねればいいけれど、作詞家は違うんです。「この歌手にどんな歌を歌ってもらったら、よりたくさんの人に振り向いてもらえるか」を考えなきゃいけない。自分の気持ちを吐き出す前に、他人の気持ちがわからなければいけない仕事ですから。ピュアな赤ちゃんを歌う詞と、不倫のドロドロを描く詞を同時に作れる、職業作詞家としての感性を持ち合わせていなければいけない仕事なんです。

――作詞家としての「やりがい」を教えてください。

やっぱり、多くの方が聴いて口ずさんでくださることが一番の喜びです。最近は「ドコノコノキノコ」(NHK「おかあさんといっしょ」)を歌い踊る動画を、皆さんが競うようにネット上にアップしてくださったり。私の音楽のルーツである西宮少年合唱団では、創立50周年の記念公演で、後輩たちが「かっぱなにさま? かっぱさま!」を歌ってくれました。本当に、作詞家冥利に尽きますね。

歌詞を作るための5つのポイント

書き写してみる

 まずは好きな歌の歌詞を書き写してみよう。
自分流に書き換えてはダメ。テンがあればテンを打ち、改行されていれば改行する。当て字や送り仮名などの表記もそのままに、丁寧に清書する。その際、「ここはなぜ改行したのか」「ここになぜテンが必要なのか」「ここはなぜこの漢字を使ったのか」といったことを考えてみると、とても勉強になる。この作業は、絵画で言えばデッサン、スポーツで言えば筋トレのようなもの。写し終えたら、必ず声に出して読んでみる。さまざまなジャンルの歌詞を書き写してみるのも、好きな作詞家の作品をまとめるのもいい。書き写し、声にする。この作業で、すべての作詞ノウハウが学べる。

まずテーマを絞る

テーマは、はっきり意識できる場合と、書いているうちに「ああ、これがテーマだ」と気づく場合とがある。書いているうちにテーマが変わってしまう場合もあるが、できる限り、書き出す前に、「この歌詞ではもっともこれが言いたい」といったように意識しておこう。
テーマはその歌に込められたメッセージそのもので、サビで歌われるべきもの。聞いた人に「そうそう」とか、「あるある」のように、共感をもって受け入れられる。そういうテーマであることが望ましいものだ。

字脚を揃える

例えば

 花を植えて(6) 君を迎え(6) 帰る道も(6) ここにいるよ(6)

 上に書いた数字は音の数(音節数)。これを字脚と言う。字脚の数え方は、俳句や川柳と同じ。
長音(音引き)や促音(つめる音)も1音として数える。「しゅ」「ぎゅ」「にゃ」など拗音は1音として数える。
上記の例文は、「6・6・6・6」とそろっている。また、「6」の中も「3・3」とそろっているので、たたみかけるようなリズムが感じられるはず。リズムがいいかどうかは、書いてある内容に関わらず、「読んでいて心地よいか」が鍵。まずは字脚を揃えることからはじめ、そこから自分にとって心地いいリズムを探してみよう。

歌詞の構成を考える

ひとつ典型的なものを挙げてみよう。
Aメロ→Bメロ→サビ大きく見ると、「1番-2番-サビ」の繰り返しという構成。英語で1番、2番の歌詞をコーラスと呼ぶ。コーラスを2回やって、サビのみ(ハーフ)を繰り返すので、この形式をツーハーフと呼ぶ。曲の最初のメロディーを略してAメロ。次のひとかたまりがBメロ、そしてCメロ(サビ)となる。Aメロの役割は、主に「説明」。Bメロの役割はAメロのストーリーの展開部分やサビへの効果的な橋渡し。サビは、作者の主体となるメッセージ。
この、基本的なツーハーフのほかにもさまざまな構成がある。テーマを訴えるのに最も効果的な構成を考えてから歌詞を作っていこう。

文字数を考える

 一般的な歌詞の文字数はおよそ
○Aメロ
 2行~4行ぐらい
○Bメロ
 2行~4行ぐらい(Aメロより短いことが多い)
○Cメロ
 3行~4行ぐらい(これを繰り返すパターンが多い)
もちろん、これはジャンルにもよる。一般に童謡の場合は、聞く対象である子どもの理解度を鑑みて、文字数は少なくなっているはず。

「作詞家」へと続くルート

 作詞家になるのに特に資格はいらない。だが、作詞の現場では、専業の作詞家だけでなく、小説家、詩人、芸能人、放送作家など他業種を本業とする人が関わることも多く、大変に競争が激しい。
作詞家に必要なのは、文学的センスだけでなく、楽曲を理解・解釈する音楽的センス。それらを学べる専門学校や、各種教室はあるが、これらが作詞家としてのデビューに直結することはあまり多くない。ただし、作詞の基礎を学ぶことが出来るし、公募やコンペティションの情報は多数入ってくるので、大いに利用したいところだ。
では、デビューまでの道のりとしては具体的にどんなものがあるか? 一番基本的なのは、音楽作家事務所と契約すること。こまめに自分の作品を送り続け、事務所関係者に認めてもらえれば、事務所と契約出来る可能性もあるだろうし、各種オーディションやコンペティションに参加することが容易になることも考えられる。
それ以外には、音楽制作会社やプロダクションに所属したり、作詞コンテストへの応募や持ち込みなどを通して音楽出版社と契約を結んだり、著名な作詞家に弟子入りしたりして、レコード会社が制作する案件に作品提供する方法もある。

ミュージシャンから転向して、作詞家としての道を歩み始める者も多い。
この場合、作曲も出来るという点が有利に見えてしまうが、実はそうではない。ミュージシャン転向組の作詞家は、実はほとんどが作曲のセンスはやや劣る人が大半だ。種明かしをすれば、レコード会社に持ち込みをされた音源から、「曲は全然だけど、歌詞はいいね」という判断をされたミュージシャンがピックアップをされているわけだ。これはそのまま、作詞家になるためにレコード会社に持ち込みをしようと考えている人へのヒントにもなる。
レコード会社に自作の作詩だけ書いて送っても読み流されることが多い。レコード会社が欲しているのは、歌詞ではなく音源だからだ。これを逆手に取って、作曲が出来る人間と組んで、歌詞をどんな形にしろ曲に乗せ、音源として持ち込みをしてみよう。もちろん、歌詞をプリントアウトしたものを添えて。
これだけで、「見てもらえる確率」が飛躍的に上がるのは間違いない。

 

※本記事は「公募ガイド2012年6月号」の記事を再掲載したものです。