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長期休暇を活用しよう3:ストーリーを練っておこう

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ストーリー練り直しの例

ここでは、ストーリーを検証する過程を書いてみます。
作品の枚数は100枚、高校時代の実話をベースとした青春小説とします。
下記は、最初に書いたストーリーです。ほぼ事実そのままのようですね。では、このストーリーの問題点を洗いだしてみましょう。

将棋部人生

直也は、①弁護士を目指す高校一年生。法学部を目指して日々勉学に勤しんでいる。部活動はしないつもりだったが、将棋部に入る。実は頭の体操として以前から②やりたいと思っていたのだ。
駒の動かし方も知らなかった直也だが、同級生や先輩に教わり、めきめきと③上達していく。「さすが、秀才は違う」とおだてられ、将来はプロ棋士もいいなどと思う。部内の夏の大会では、なんと一年生ながら④優勝を飾る。

二年の春、有名な棋士が学校に講演に来るというイベントがある。直也はそこでプロと対局し、センスがいいと褒められる。
そして、棋士の人柄と生き方に深い⑤感銘を受ける。
⑥三年生になると、直也は部長として新入部員の勧誘や部員の親睦イベントなどに追われ、あっというまに引退の日を迎える。
三年の夏からは、直也は将棋から離れ、受験に専念する。
翌年春、念願叶い、直也は国立大学の法学部に⑦合格する。

 

①弁護士を目指すところで始まり、法学部に合格するところで終わっている。首尾は一致しているが、中身とは合っていない。
②好きで入部したという設定より、巻き込まれるほうがいい。
③つまずいたり、こてんぱんに負けたりということがあってしかるべき。そんなに順調ではおもしろくない。
④ちょっと不自然。仮にそれが事実でも、小説として書くとリアリティーがない。
⑤この展開なら、将来は棋士を目指すのが物語の必然。
⑥一年生のとき、二年生のとき、三年生のとき、とかなり駆け足。100枚で三年間を書くのは無理がある。
⑦まじめに勉強して大学に合格しました
という話ではおもしろくない。

これを踏まえ、問題点を改善してみたものが下記の(再)です。

将棋部人生(再)

直也は、親友の康晴に頼まれ、部員不足で悩む将棋部に入る。将棋に興味はなかったが、部員にかわいい女子生徒がいると言われ、それにつられてしまう。
初日、直也はくだんの女子生徒、香奈にデートを申し込むが、部長の田尻に将棋で勝ったらと条件をつけられる。直也は対局を申し出る。田尻は、飛車角落ちならぬ、王以外全部落ちでいいと言い、直也は屈辱的大敗を喫する。
直也は真剣に将棋に取り組むようになる。三ヶ月後、かなり上達する。田尻の穴熊を破った人は、部内には誰もいない。思案に暮れていると、康晴が穴熊攻略のヒントをくれる。しかし、戦法だけでは何かが足らないと感じる。
部内の夏の大会が行われる。その前日、直也は康晴から、田尻と香奈は恋人同士で、デートの件は直也を将棋に向かわせる策略だったと聞かされる。
翌日、怒りで集中力が高まった直也は、田尻に勝利する。しかし、香奈を誘っても空しいと帰ろうとすると、約束のデートだと香奈がついてくる。昨日の康晴の弁も直也を奮い立たせる策略だった。

 

まだまだこれから煮詰めていかないといけないところもあるかもしれません。
ただ、プロットのコンテストに出すわけではありませんので、今やれることをやったら、あとは書くだけです。
大事なのは書き上げることです。途中で「失敗だったかも」と思っても最後まで完結させること。まずは、原稿の最後に「了」と書くことを目指しましょう。

話を面白くするための十か条

一、 主人公は巻き込まれろ。
二、 主人公を困らせろ。
三、 主人公を葛藤させろ。
四、 主人公を強敵と争わせろ。
五、 主人公には欠点を持たせろ。
六、 主人公を危機に陥らせろ。
七、 一点、謎を設定しろ。
八、 目的は簡単に実現させるな。
九、 予定調和を避けろ。
十、 最後にサプライズを。

マニアなブックガイド

世の中に文章指南書、小説指南書、文芸批評はあまたありますが、ここではその中から本誌お勧めのマニアな8冊を紹介します。

『文章読本』丸谷才一

数ある文章読本の中でも、谷崎版『文章読本』と並ぶ双璧。文庫は昭和55年初版で、やはりその後の文章指南書の祖といっていい内容。歴史的仮名遣いで書かれているが、難なく読める。著者の文章を読むこと自体が勉強になる。

『文章読本』谷崎潤一郎

昭和9年刊行。序文に「なるべく多くの人々に読んで貰う目的で、通俗を旨として書いた」とあるが、本文には「文章に実用的と芸術的の区別はない」ともある。あらゆる文章読本のもととなった記念碑的一冊。

『日本語練習帳』大野晋

文章以前の日本語について書いた本。水泳をバタ足から始めるようにという趣旨で、手始めのことから練習するようになっている。勉強をひとつの知的遊びとしてとらえた大ベストセラー。『日本語の教室』という続編もある。

『日本語の作文教室』本多勝一

新聞社校閲部に勤務していたこともある著者が、分かりやすくを主眼にまとめた文章の技術書。句読点の打ち方を論理的に説明するなど他に類を見ない内容で、今なおライター志望者の必読の書。続編に『実戦・日本語の作文技術』がある。

『ベストセラー小説の書き方』ディーン・R・クーンツ

ベストセラー作家、クーンツが書いたベストセラー小説のマニュアル本で、この本もベストセラー。芸術論ではなく、小説の書き方をひとつの技術としてとらえたもの。職業作家(エンターテインメント小説家)を目指す人の必読の書。

『シナリオの書き方』柏田道夫

本誌連載陣の一人でもある柏田先生の本。「ドラマ」に連載していたものをまとめたもの。シナリオの指南書だが、シナリオはセリフ、プロットなど小説と共通する部分も多く、エンターテインメント小説のマニュアルとしても読める。

『物語のディスクール』ジュラール・ジュネット

従来の内容中心の物語論ではなく、物語や語りの技術と構造を研究した物語論(ナラトロジー)。人称、視点などについても言及されている。
文芸関係者でこれを知らなければモグリと言われるほどの名著だが、翻訳の文章はややこしい。

『昔話の形態学』ウラジミール・プロップ

ロシアの魔法物語を分析した構造主義の先駆的名著。プロップは物語を分析するうち、そこに共通する31の機能(人物の行動)を発見。この機能に従って書けば誰でも物語が作れる、いわば物語の文法について書かれた本。

 

※本記事は「公募ガイド2013年8月号」の記事を再掲載したものです。