【最終回】140字の小説家神田澪の書き下ろし小説が読める! カキダシフォトコン 第11回「きっとあれが初恋だった」結果発表
「140字の物語」でおなじみの神田澪が出すお題にそって写真を募集するという、
小説×写真の新感覚フォトコン!
お題は小説の書き出し一行目。一文から物語を自分なりに考え、その物語を予感させるような一枚を撮影してください。
140字の"超短編"小説制作者。作家・作詞家。著書は「真夜中のウラノメトリア」「最後は会ってさよならをしよう」「私達は、月が綺麗だねと囁き合うことさえできない」など。
最優秀賞
photo by 理由
■STORY
/あいつが転校していった。それもパラグアイって、いったい地球のどこやねん。
地球儀くるくる回してやっと見つけたその国は、日本の真反対にあった。
もう一回、くるっと回した。日本。くるっと、パラグアイ。
くるくるくるくるくるくる。 寂しさが止まらない。
きっと、あれが……。
優秀賞
photo by トラノ
■STORY /花のお兄さんへ。子供の頃、公園の花壇の世話をしながら私たちに植物の事を色々教えてくれてありがとう。お兄さんを前にするとなぜかドキドキしてお礼をいうこともできなかったんだ。今ならその理由もわかるけど。ねえお兄さん、私今でも植物が大好きだよ。だから今、私は花のお姉さんをやっています。
photo by 春KOIZUMI
■STORY /塾友達! 帰り道にコスモス畑へ誘って寄り道、背高の秋桜に埋もれ香り立つ秋風の中、何も言えずに過ごしたひととき。
佳作
■STORY /もう50年も、桜の頃になると、二人でここへ来て、残雪の山を眺めてる。おじいさんが、ポツリと初めて出会った頃の話を始めた。「それが初恋だったよ」と。おばあさんは「じゃ、初恋が今も続いてるのね」と返した。
■STORY /「このハートの木を待ち受けにしたら願いが叶うんだって!」 キミはそう言うと真剣な表情でハートの木を撮っていた。キミの表情があまりにも真剣で可笑しくてボクはこっそりキミを撮った。この時から、キミの事が好きだったのかもしれない。
■STORY /父の仕事で都会に引っ越して3年がたったが、飛行機雲を見るたびに引っ越しの日を思い出す。あの日、あの子は空港まで見送りに来てくれた。その時に渡そうと思って、何度も書き直した手紙は結局渡せないまま引き出しの奥にしまっている。
■STORY /娘が20年間、溺愛する黄色いぬいぐるみの"ふもさん"ウチの愛犬の初恋の相手?でもある?
■STORY /小学四年生の時、国語の時間に作文を書き、クラス全員が発表した。 休み時間になって、クラスで一番可愛くて勉強の出来る女の子がぼくのところへ来て「作文上手ね」と言ってくれた。ぼくはそれから、国語と作文が好きになり、その子のことが大好きになった。
■STORY /ギリギリまで短くしたスカート。暗くなるまで駅で喋って、写真を撮り合ったあの時間。笑うと弾けるその黒髪。プリクラに書いた「ズッ友」の文字。彼氏ができた、ときみは笑った。胸のちくりは気のせいなはずだ。それでも、きっとあれが初恋だった。
■STORY /「大きな声で挨拶できるよ」「帰ったらすぐに宿題やるよ」いい子でいれば、パパやママみたいにあの子も私のことを好きになってくれるかもしれない。クラスでもたくさん褒められるいい子でいなくちゃ。けれど、あの子の帰り道だと知っているから、公園に寄り道しちゃうのだけはやめられないの。
今回のお題は「きっとあれが初恋だった」でした。後から気づく恋は、人によっては切なく、人によっては美しく思えることでしょう。懐かしくも色鮮やかな初恋が表現された作品に賞を贈らせていただきました。第11回となったカキダシフォトコンも、今回が最終回。毎月、皆様の創造性溢れる作品を拝見するのが本当に楽しみでした。ぜひ、これからも生活の中の「物語」を見つけたら、写真を撮ってみてください。きっと素敵な作品になるはずです。
1年間、ご応募、ご愛読、ありがとうございました。
またの機会にお会いできることを楽しみにしています。
公募ガイド社
神田澪が
写真からインスピレーションを受け、
140字の小説を紡いでくれる!