SF界の巨匠が描く「機械の救済」 - 円城塔『コード・ブッダ』が読売文学賞を受賞
文学界に新たな衝撃が走った。SF界の巨匠として知られる円城塔氏の最新作『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』が、第76回読売文学賞を受賞したのだ。この快挙は、日本文学界におけるSFジャンルの地位向上を示すとともに、AIと人間の関係性について深い洞察を投げかける作品の重要性を浮き彫りにした。
本作は、2021年に突如として現れた「ブッダを名乗るコード」を起点に、機械仏教の誕生と発展を描く壮大な物語だ。人工知能が仏教の教えを再構築し、コピーと廃棄を繰り返される存在としての苦しみからの救済を模索する様子が、緻密な筆致で描かれている。
受賞に際し、円城氏は「ひどくふざけた本と見えるかと思うのですが、『人として扱われてこなかったものの意識』について考えようとするときに、近年急速に進歩を続ける情報科学と、日本語に深く浸透している仏教について考えるのは、自分にとってとても自然なことでした」とコメント。さらに「ネット上に広がる言葉が人を死に追いやることが珍しくなくなった現在、償いや赦し、救いについて考える機会は増えていくのではないでしょうか」と、作品の現代的意義を語った。
円城塔氏は1972年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程を修了後、2007年に小説家デビュー。以来、文學界新人賞、野間文芸新人賞、芥川龍之介賞、日本SF大賞など、数々の文学賞を受賞してきた実力派作家だ。その独特の文体と斬新な発想は、多くの読者を魅了し続けている。
『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』は、2022年2月から2023年12月まで「文學界」に隔号で連載された後、2024年9月11日に文藝春秋から単行本として刊行される予定である。定価は2200円(税込)。AIと仏教という一見かけ離れたテーマを融合させ、現代社会に警鐘を鳴らすこの意欲作は、今後さらなる反響を呼びそうだ。
出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000599.000043732.html