せきしろの自由律俳句 第101回「ひとり」結果発表 (2/3)


第 101回 課題: ひとり
佳作
いんげんの筋を取る丸い背中
(神奈川県 杏駄木さや 42歳)
柔軟剤詰め替えて溢れて拭く
(愛知県 鹿むら 30歳)
牛肉ど真ん中と向かう東京一人旅
(福島県 きりんのき 23歳)
小さくはない声で歌い煮込む
(大阪府 反時計 25歳)
月も出ない夜の濃さと歩く
(千葉県 ような恵 27歳)
機械が礼を言う
(京都府 Isohama 48歳)
ひとりで来ただけで褒められた夏
(和歌山県 中村マコト 52歳)
裸で猫を抱く
(東京都 ハルオ 53歳)
続かない壁打ちの音何度も聞こえる
(長崎県 毎日ハッピー 45歳)
時経ち周りの星に埋もれてく一番星
(山梨県 ごんちゃむ 41歳)
老舗のパン屋昔は祖母と
(岩手県 セクシー権現 14歳)
朝だけは教室の音をわたしのものに
(奈良県 はるか 15歳)
影も帰ってわたしだけの夜
(岡山県 白とり貝 35歳)
他人の会話ラジオみたいに聴く
(北海道 エリンギ 38歳)
苗字を知って圧倒的な他人になる
(大阪府 石川聡 43歳)
天井の大きな影に驚くただの自分
(大阪府 ボール君 44歳)
注文したつまみが三人前はある
(神奈川県 紺屋小町 46歳)
孤独死が速達で来る
(埼玉県 クッキーママ 56歳)
ひとりに渡す分の声
(千葉県 xissa 60歳)
明日兄になるらしい
(北海道 みるこ 20歳)
『いんげんの筋を取る丸い背中』
自分がひとりではなく、ひとりの誰かを見ている。そんな視点の句だ。黙々と作業をする姿に未来の自分を見る。
『柔軟剤詰め替えて溢れて拭く』
直接「ひとり」を表現しているわけではないが、ひとりを感じさせてくれる。
『牛肉ど真ん中と向かう東京一人旅』
東北の駅弁と東京へ向かう。ひとりではあるが寂しさを感じさせないのは駅弁の名前のおかげか。
『小さくはない声で歌い煮込む』
ひとりでいるとなかなか大声は出せないものであるが、「小さくはない」声は出す時がある。煮込んでいる音とどちらが大きいだろうか。
『月も出ない夜の濃さと歩く』
たまに月を意識して歩いているとちょっとしたことで見えなくなることがある。その時「ひとり」を感じる。
『機械が礼を言う』
SFっぽさもあるひとり。
『ひとりで来ただけで褒められた夏』
年齢的にもう褒められることなどもうなさそうだ。この句の夏に戻りたい。
『裸で猫を抱く』
ひとりは自由である。
『続かない壁打ちの音何度も聞こえる』
音でわかるひとりもある。