版画とデジタル時代の書が問う「不可視の痕跡」YUGEN Gallery4周年記念展


脳神経回路をモチーフにした版画と現代の書が競演
YUGEN Gallery(東京都港区南青山)は、2026年2月26日より開廊4周年記念展〈後期〉「不可視の痕跡」を開催する。版画作家・植田爽介と書道家・田中岳舟による作品で構成される本展は、異なる表現を通して目に見えない時間や行為の層を見つめる試みである。版画は工程の蓄積によって時間の重なりを定着させ、書は身体的行為によって痕跡を刻む。両者はそれぞれに「積み重ね」と「瞬間」を内包しながら、不可視の痕跡を画面上に立ち上げている。
脳神経回路を軸とする植田爽介の版画制作
植田の制作において、脳神経回路シリーズ《imagination Series》は重要な軸をなしている。本シリーズでは、MRIおよびMRAによって測定された自身の脳のデータを基に、神経回路や血管構造をモチーフとして版画で再構築している。あわせて展示される《imagination Series》の発展系である《imagine Series》では、動物の写真と製図用文房具の写真を組み合わせ、有機的存在と無機的存在が交錯する不定形なフォルムを生み出す。異なる秩序が交差し、構造が浮かび上がる表現となっている。
スマートフォンを媒介にした書の再考
田中は、書が担ってきた「記録」「伝達」という役割を、現代のメディア環境の中で問い直している。本展では、スマートフォンを媒介とした複数の作品を展示する。キーボードを想起させる画面を支持体に見立て、その上に「タイプする痕跡」を書として残す試みである。スマートフォンの普及により、「画面」は触れて操作する存在へと変化した。田中は「映像と画面」と「作品と額」の関係を重ね合わせ、画面の意味の変容を額上の痕跡として提示する。さらに、スマートフォンを筆に見立て、空中に文字を書く行為をビデオで記録し、そこから抽出された画像を作品として定着させる試みも発表する。
時間の構造における版画と書の共通点と相違
植田と田中の実践は、扱う素材も制作の起点も大きく異なるが、両者が向き合っているのは、時間と身体、思考がどのように痕跡として定着するのかという共通の問いである。植田は、自身の脳神経回路をモチーフに、思考や記憶が結び直され、循環し、再編成される過程を版画の工程によって重層的に構築する。版を重ねる行為は、時間を蓄積し、圧縮し、構造として画面に固定するプロセスでもある。一方、田中は、書という行為が現代の媒体環境の中でどのように変容しているのかを問い直している。文字を書く行為は、画面への入力や記録へと姿を変えたが、最終的に作品として残るのは、選び取られた一瞬の身体的痕跡である。版画においても書においても、時間は「重ねられる」と同時に「切り取られる」。植田の版画では、時間は主として層となって画面に沈殿し、決定の瞬間はその蓄積の臨界点として現れる。田中の書では、時間は主として一瞬へと収束するが、その背後には見えない反復の層が横たわっている。工程に分散する身体と、一点に集中する身体。持続としての時間と、凝縮としての時間。両者は時間の構造において異なる傾きを持ちながらも、目に見えない思考と身体の緊張を、作品という形へと定着させている。
開催概要
展覧会は2026年2月26日(木)から3月22日(日)まで開催される。開館時間は平日13:00〜19:00、土日祝日13:00〜20:00で、最終日のみ17:00終了。入場は閉場30分前までで、会期中は無休である。レセプションは2026年2月28日(土)17:00〜20:00に開催予定。会場はYUGEN Gallery(東京都港区南青山3-1-31 KD南青山ビル4F)で、入場料は無料である。
出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000570.000074187.html