あなたとよむ短歌 テーマ詠「風」結果発表 ~「わからない短歌」との付き合い方~


テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。
(『母の愛、僕のラブ』より)
テーマ詠「風」結果発表
~大切にするって何だろう~
短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。今回はテーマ詠「風」の結果発表です。
今回で連載も72回。毎月1回の更新で6年になりました。長く続けられるのも、投稿者の皆さん、読んでくださる皆さんがいるおかげです。公募ガイド社の社員の方と「あなたとよむ」短歌という名称を決めたときのことを思い出します。
最近新たに投稿をしてくださる方も増えたので、毎回連載の末尾にも書いてありますが、いま一度確認です。
このコーナーはテーマ詠なので、テーマの言葉をそのままを必ずしも詠み込む(短歌のなかに使う)必要はありません。そのテーマが感じられる作品ならOKです。
また、短歌の音数の基本は57577ですが、その句切れごとに空白や改行を入れる「分かち書き」はしないでください。詳細は過去の連載を見ていただけると助かるのですが、分かち書きはそもそも、短歌を読み慣れない人が(視覚的に)読みやすくするための工夫、という意味合いが大きいものです。
ですから、企業や自治体が主催する短歌コンテストや、あるいは公募ガイドなど含む誌面で分かち書き表記をすることには意味とメリットがあります。一方で、作歌する時点から分かち書きをしてしまうと、どうしても句ごとにブツッブツッと切れた短歌になりやすいものです。短歌は短い歌なので、音の運びやリズムがとても大切です。このコーナーへの投稿は、ぜひ分かち書きせずに送ってくださいね!
後半では投稿者の皆さんから寄せられた質問にお返事しています。作品と合わせて、ぜひ最後までお付きあいください。
それでは、最優秀賞の発表です!

僕はこれからどうすんだろう
今回は遊鳥さんが無双していました。無記名の状態で選出しているのですが、何首も候補で選んでいました。「風」は遊鳥さんの良さが出るテーマなのかもしれませんね。
さて、この短歌。「エアコンの風が眉毛に当たっているな」と気づくほど、何もできない、何もしようがないのでしょう。具体的なシチュエーションはわかりませんが、とにかく身動きもとれず、どうもしようがない状況だと伝わってきます。
「どうすんだろう」という砕けた言い回しも、独り言っぽさがあります。ため息まで聞こえてきそうです。誰かに相談するわけにもいかず、見通しも立たず、ただエアコンの風を眉毛に受けている……。細かい背景がないからこそ、その茫然とした時間そのものがリアルに提示された一首です。
続いて、優秀賞2首です。

アイスを買いに行く三分間
素足でサンダルを履いて軽やかに歩く、その心地よさが上句から伝わってきます。なんて気持ちよさそうなんでしょうか。
アイスが溶けないように急いで帰ってくるのでしょう。3分間という具体的な短さからも、近所にサッと身軽に買いにいく、素早い動きが想像できます。「風が入る」ではなく「風を入れる」という能動的な言い回しからも勢いを感じますね。
「三分間」という名詞で終わる=体言止めであることの効果について、もしかしたら一考の余地があるかな、と思いました。「三分間」が際立つ効果もある反面、「サンダルと~買いに行く」までが「三分間」の修飾するための言葉にまとまってしまっている感じもします。勢いや余韻を残すためにも、体言止めではないパターンも考えてみたら面白い気がしました。

君は数Ⅱに苦しんでいる
春風のような巻き髪、動きがあり、とても柔らかくて軽やかな印象ですね。魅力的な比喩です。
そんな巻き髪を触りつつ数Ⅱに苦しんでいる君。この対比が素晴らしいですね。まるで、西洋の宗教画のようです。それぐらい「君」が魅力的に見えているのでしょう。まるで絵画になりそうな、そんな憧憬が伝わってきます。
「君」の性別も、見ている主体の性別も、恋なのかどうかも確定できるほどの情報はありません。しかし、おそらく「君」は学生で、目を逸らせないほど尊い時間だったことが感じられる一首です。