あなたとよむ短歌 テーマ詠「風」佳作・入選 結果発表


それでは、佳作5首のご紹介です!
風が吹く 冗談ひとつ投げたのかからだゆすって木が笑い出す
(キンモクセイさん)
童話のようなおおらかな印象の短歌です。「投げたのか」という言い回しが特にいいですよね。「投げた」という乱暴な感じと「のか」という実際はわからないところ。絶妙な擬人化です。
ゆらゆらと揺れているけど風のせいじゃなくて君に会えるからです
(遊鳥泰隆さん)
君に会えるから落ち着かないんでしょうか。かわいいですね。57577の定型ですが、音読すると「じゃなくて」以降が妙に固い印象で、緊張感がある点も面白い短歌です。
足の指使って「中」を「弱」にして扇風機前から動かない
(遊鳥泰隆さん)
足の指【を】、と助詞を省略している点や、「中」を「弱」にして、という思い切ったラフな表現も、暑さや気だるさがありありと想起させています。巧みな作品です。
「大丈夫」と自分に言うたび胸のなかの湖面が揺れる 風もないのに
(唐澤うにさん)
かなり破調(短歌の定型を破っている)ですが、それがいいと思いました。「大丈夫」「自分に言うたび胸のなか」「湖面が揺れる」「風もないのに」でほぼ定型を押さえつつ、「と」「の」が弱く存在することで、繋がっている水面が波のように揺れる印象を与えています。破調であるからこそ揺れを体感できます。
たんぽぽの綿毛と同じスピードで祖母からわたしが消えていく春
(殿内佳丸さん)
辛い内容です。でも、たんぽぽの綿毛に喩えることで、寂しくも優しく明るい印象。自然の摂理なんだな、という気持ちになれます。この一首も優秀賞と同じく「春」という体言止め以外を模索してみてもいいかもしれないと思いました。綿毛の余韻が残るかもしれません。どうでしょうか?
つづいて、入選10首のご紹介です!
ゆっくりと老いていく家 ゆっくりと老いていく街 置いて行く風
(本田つづりさん)
台風のような寝ぐせの君が言うおはようはとてもおはようだった
(戸倉田面木さん)
行き詰まる明日に風穴ぶち空けるつもりで葱を太めに刻む
(白里りこさん)
風采の上がらぬ平林さんが去って仕事が回らなくなる
(泰源さん)
春風に揺られて桜散るたびに次年も君と観たいと思う
(りんださん)
味噌汁の匂いが夜風に溶けていて心を許しそうになる道
(よしだみやびさん)
なんというパワーワードだインド風中華料理を大阪で食う
(立田渓さん)
ここからが楽園ですというような風が吹いてるオリーブ畑
(葉月ままこさん)
夕焼けが肩に積もるよミラノ風ドリアをゆっくりかき混ぜながら
(鹿沼古湖さん)
忘れるな これからきみの顔をめがけて吹く風はすべてわたしだ
(高原すいかさん)