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あなたとよむ短歌 テーマ詠「インターネット」結果発表 ~質問にたくさん答えます~

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結果発表

テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん 熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.73
テーマ詠「インターネット」結果発表
~質問にたくさん答えます~

短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。今回はテーマ詠「インターネット」の結果発表です。

この記事を読んでいる人はほとんどがインターネットユーザーでしょう(誰かに印刷してもらって読んでいる人がいるかもしれません、可能性はあります)。しかし、オンライン会議が急速に普及したのはコロナ禍ですし、LINEがサービスを開始したのは東日本大震災後です。インターネットと一口に言っても、状況は目まぐるしく変化しています。

私はのちに結婚する人と、結婚前に、1日半に一度くらいのペースでメールをやりとりしていました。そのペースが早すぎず遅すぎず「感覚が合う人だなあ」と思ったのを覚えています。今のLINEのやりとりと比べると、まるで文通のようなスローテンポですね。

インターネットを題材に短歌を詠むと、おそらくその作品は、数年後には感覚が古くなっているでしょう。だから題材にしない、避ける、という人もいるかもしれませんが、個人的には「だからこそ詠みたい」とも感じます。

後半では投稿者の皆さんから寄せられた質問にお返事しています。作品と合わせて、ぜひ最後までお付きあいください。

それでは、最優秀賞の発表です!

好きな子にリムーブされたらすぐにくれ
猫の動画と米津玄師を
(高原すいかさん)

SNSで自分をフォロー(登録)している「好きな子」が、自分をリムーブしたら(登録を外したら)ものすごく落ち込むでしょう。もしもそうなったら、かわいい猫の動画や、自分の好きな米津玄師の画像やらを送って自分の気を紛らわせてくれ!という短歌です。

「リムーブ」や「米津玄師」も、10年後には言葉の意味や、その位置づけが変わっているかもしれませんね。また、猫も米津玄師も、それぞれに肖像権などの権利があるはずなのですが、癒してくれるモノやツールとして動画や画像が流れ、それを「くれ」と言っている点にも、インターネットの混沌を感じます。現在のインターネットはファジーで、ときに独りよがりで、だからこそ万人の居心地たらしめる側面もあります。

「好きな子」「猫の動画」「米津玄師」が好きだとわかるだけでも、ちょっとこの人のことを知ったような気持ちになり、つい共感して応援してしまいそうです。とてもインターネットらしい短歌だと思いました。


続いて、優秀賞2首です。

ログインのたびに聞かれる「私」とは
 IDですか 身体ですか
(華盛頓さん)

「マイアカウント」「あなたの情報」など常に問われるインターネットにおいて、身体はどれほど意識されているのでしょうか? 最近は指紋や瞳で認証するケースもありますね。では、インターネットにとって指紋や瞳だけが「私」なのでしょうか?

画像や音や文字にあふれ、3Dアバターなども一般的になってきたインターネットで、ふと自分自身の身体性について考え直す瞬間。スッと体温が下がるような短歌です。私たちは生きる上でその身体から離れられないのに、インターネット上ではその身体性を問われることはほとんどありません。それが良い面も悪い面もあるでしょう。「ID」というアルファベットと「身体」という熟語が、視覚的にも鮮やかな一首です。


おやすみかおはようなのか分からない
深夜3時の通知、達者で
(竜泉寺成田さん)

夜勤する人でなければ、深夜3時に誰かと会って会話をすることはほぼありません。でも、自分が起きていて、地球のどこかで相手が起きていれば、通知を目にすることもあるのがインターネットです。

「達者で」という言葉がとてもいいですよね。おそらく「達者で」と声に出したわけでも、相手に送信したわけでもないでしょう。会ったことのない、SNS上で見かけるだけの人かもしれません。それでも「達者で」と相手のことを思うくらいには、近しい感情が湧くことがあります。SNSでポツポツと呟いている私もあなたも、誰かから「達者で」と思われているのかもしれません。インターネットの体温のような短歌です。



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