BicCamera Photo World2026 審査員が語る! 前年受賞作のココがスゴい!【フォトコン攻略法】


日々の感動を
記録しよう
昨年開催された「BicCameraPhotoWorld2025フォトコンテスト」には、実に53,785点もの作品が寄せられた。自由部門・ネイチャー部門・U18部門・スマートフォン部門の4部門には個性あふれる作品が応募され、審査会は最後まで白熱。はたして今年はどんな一枚が選ばれるのか? 審査員長を務める写真家の熊切大輔さんに、昨年の受賞作が選ばれた理由や魅力的な写真の撮り方、そして今年の応募作への期待について伺った。
■審査員長
熊切大輔/写真家
1969年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部を卒業後、夕刊紙日刊ゲンダイ写真部に入社。その後フリーランスの写真家として独立。雑誌や広告などでドキュメンタリー・ポートレート・食・舞台など「人」が生み出す瞬間・空間・物を対象に撮影する。 作品は様々なテーマ、アプローチをもってスナップ写真で「東京の今」を切り撮りつづけている。2023年5月に公益社団法人日本写真家協会第8代会長に就任。写真界の発展のため改革や新たな挑戦を始めている。写真コンテストの審査や様々な写真講師なども務めており、学生への写真指導など未来の写真家の育成にも力を入れている。
公益社団法人日本写真家協会 会長。
この被写体で
何を伝えたいのか
何を伝えたいのか
―― 昨年度の応募作品全体を通しての感想はいかがでしたか?
熊切さん:第1回目から53,785点というすごい数の応募があり、とても嬉しく思っています。ビックカメラ主催ということもあってか、本当にさまざまな作品が集まりました。カメラを買ったばかりの方の初々しい作品から、長く撮り続けている方、プロの方、スマートフォンで日常的に撮っている方まで、被写体やテーマも含めて本当に多彩な作品が入選し、多様性を感じました。この幅の広さが、このコンテストの魅力なのだと思います。
―― 前回の受賞作を中心に、選ばれた作品の特徴をお聞かせください。まずは最優秀賞の「森の遊園地」は、なぜ選ばれたのでしょう?
熊切さん:この作品はカメラの基本的な特性である「光と影」を生かしたシルエットの表現が素晴らしかった。撮影された場所自体がフォトジェニックだったというのもあるでしょうが、作品中央の光の小さな円と観覧車の円、カメラのゴーストが生み出した円、それらがすべてリンクして絶妙な構図になっている。女の子がふわっと投げて空中を舞う葉も、とてもバランスよく美しい。こういう演出も効果的です。たくさんある応募作の中でもパッと目を引くものがあり、際立っていました。
最優秀賞 森の遊園地 (林 純一 さん)
―― 応募作の中に埋もれない、際立つ作品を撮るコツはあるのでしょうか?
熊切さん:頭一つ抜けようと思うと、いくつかの条件が必要だと思います。カメラの特性を生かして「光と影」を上手く使っている。モチーフが際立つような「アングルと構図」が考えられている。また、「森の遊園地」で言うなら、雲や太陽の位置、女の子が投げた葉の形などを見てわかるように、何度も撮影して「最高の瞬間」を捉えているのがお見事です。逆光により絵本や影絵のような美しい世界観を生み出す演出もいいですね。観る人にストーリーを与え、想像力をかきたてます。1枚の中に様々な魅力が詰まっていることが大切だと思います。
―― 自由部門・銀賞の「犬『だ、大丈夫??』」や「喜び」も最高の瞬間を捉えていますね。
熊切さん:「犬『だ、大丈夫??』」はダイナミックなことが起こったわけではないけれど、空間を上手く使っています。そして、ソリから落ちた女の子に対してワンちゃんが「大丈夫?」と心配しているようで、それぞれのいい表情や仕草があり、ユーモラスな一瞬を捉えている。同じ銀賞の「喜び」はドキュメンタリー性の高い作品で、生命が誕生する瞬間の感動を捉えている。そして、そこにまつわる人々の苦労や想いを想像させます。写真には記録するという重要な役割もあるので、その瞬間に立ち会い、しっかりと起きた事実を残す。シャッターを押す反射神経も大事ですね。
自由部門 銀賞 犬「だ、大丈夫??」 (末吉 一斗 さん)
―― ストーリーを感じる作品にするにはどうしたらいいですか?
熊切さん:例えば、被写体をアップにしてただ撮るだけでは感動は伝わりにくい。花がきれいだなとか、昆虫がいきいきしているな、で終わってしまう。自由部門・佳作の「興味」も、猫が窓から外を見ているだけではなく、左側の壁に猫の影が映り、右側にちょっとしたゴム手袋があることで、「向こうに仲間がいて遊びたいのかな?」「外に出たいけれど出られないのかな?」と観る人に想像させる。構図を工夫し、情報を足し算することで広がりが生まれています。空間に意味を乗せることでストーリーが生まれるのです。
また、自由部門・銅賞の「overflow infomation」は、背景のネオンアートが被写体の想いや社会背景とリンクしているようで現代性がありドラマチックです。こういう表現の工夫があると、単なるポートレートに終わらない作品になります。観て終わりではなく、そこから想像が始まるのがストーリー性のある作品だと思います。
また、自由部門・銅賞の「overflow infomation」は、背景のネオンアートが被写体の想いや社会背景とリンクしているようで現代性がありドラマチックです。こういう表現の工夫があると、単なるポートレートに終わらない作品になります。観て終わりではなく、そこから想像が始まるのがストーリー性のある作品だと思います。
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自由部門 佳作 興味 (坪井 大地 さん) -
自由部門 銅賞 overflow infomation
(平松 三徳 さん)
―― スマートフォン部門・金賞の「なつまつり」はいかがでしょうか? モノクロが印象的な作品です。
熊切さん:男の子と女の子の後ろ姿の向こうに、盆踊りの提灯がぼやけて見えて幻想的なムードを作っています。何気ない一瞬だけれど、スマートフォンならではの作品という感じがしますね。ノスタルジックなひと夏の思い出を演出しています。これがカラーだと情報量が多く、かなりイメージが限定される。でも、モノクロにすることで時代性が消え、年齢を問わずいろんな人の記憶にすっと入っていく。観る人によっていろんなストーリーが生まれています。こういう玉ボケは、昔なら一眼レフやミラーレスのカメラでないとできなかったけれど、今ならスマートフォンでできる。表現の幅が広がっていますね。
スマートフォン部門 金賞 なつまつり (河原 利花 さん)
―― 他にもスマートフォンならではの良さはありますか?
熊切さん:気軽にたくさん撮れることですね。それに、日常的に誰もが撮るから、とても自然な表情を捉えやすくなります。カメラを構えて今から撮りますよとなると、どうしてもみんな構えて表情が硬くなります。また、スマートフォンは小さくて薄くて軽く、どこにでも置きやすい。だから、地べたに置くとか、高い場所に置くとか、いろんな場所で撮ることができる。
ただ、今は複数のレンズが付いていてズームもできるので拡大して撮りやすくなったけれど、大きくすることで画像が荒れる場合がある。パソコン画面だけの確認だと気がつかないので、いろんな大きさで見る、紙焼きにして見るなどするといいです。事前に自分のスマートフォンの機能は確認しておいた方がいいですね。
ただ、今は複数のレンズが付いていてズームもできるので拡大して撮りやすくなったけれど、大きくすることで画像が荒れる場合がある。パソコン画面だけの確認だと気がつかないので、いろんな大きさで見る、紙焼きにして見るなどするといいです。事前に自分のスマートフォンの機能は確認しておいた方がいいですね。
いきいきとした瞬間を捉える
―― U-18部門・金賞「叫び」はとても個性が際立っています。
熊切さん:これは、本当に大人が発想しない自由なアイデアですね。そして、観る人の目がこの女の子の胸の部分に集中するように、手以外を暗くしている表現がいい。テーマが際立っていると思います。U-18部門・佳作の「気魄の一撃」は剣道の面の中から見た相手を撮っているのが面白いし、同じく佳作の「風に吹かれて」ではサックスを空に掲げた様子に躍動感があり、いずれも切り口や視点がとても良いです。特別な場所に行かなくても、身の周りの場所や友達をどう面白く演出できるかがポイントかなと思います。
ゲスト審査員賞の「お手伝いのあとで」もそうですが、一緒に生活の中にいる仲間や家族だからこそ捉えた瞬間には、とても生き生きとしたリアリティがあっていいですね。こういう作品はこれからもいっぱい撮ってほしいと思います。
ゲスト審査員賞の「お手伝いのあとで」もそうですが、一緒に生活の中にいる仲間や家族だからこそ捉えた瞬間には、とても生き生きとしたリアリティがあっていいですね。こういう作品はこれからもいっぱい撮ってほしいと思います。
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U-18部門・金賞 叫び (荒井 七実 さん) -
U-18部門・佳作 気魄の一撃 (佐々木 貫太 さん)
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U-18部門・佳作 風に吹かれて
(幸地 今梨 さん) -
ゲスト審査員賞 お手伝いのあとで
(岩川 皓司 さん)
―― ネイチャー部門はとてもクオリティが高く、どの作品にも瞬間性があります。
熊切さん:とくに金賞の「遊び仲間」は、構図が素晴らしかった。ただ単に座ったり歩いたりしているだけだと面白くない。でもこの作品は、4匹の子ザルの位置や顔の向き、表情や手の動きがそれぞれに違いながらも、一連の流れで繋がっていてとてもきれいです。これは子ザルに頼んでできるものではないから、作者がここに足を運び撮り続けたからこその瞬間性がある。場所や被写体への観察力と理解というのが、ネイチャー作品の鍵かと思います。
そして、自然の中で撮る作品は、いつかわからないけれど何かが起きることを想像しつつ、信じて待ち続け撮り続けることで決定的瞬間に立ち会えると思います。一回行って実現するものではないので、失敗を重ねながら諦めずに何度も通うことが大切です。
そして、自然の中で撮る作品は、いつかわからないけれど何かが起きることを想像しつつ、信じて待ち続け撮り続けることで決定的瞬間に立ち会えると思います。一回行って実現するものではないので、失敗を重ねながら諦めずに何度も通うことが大切です。
ネイチャー部門・金賞 遊び仲間 (増田 晋一さん)
―― 最後に、応募する皆さんにメッセージを!
熊切さん:気負わずたくさん撮って、まずは応募してみてください。ビックカメラのコンテストは作品の多様性が魅力。どんな一枚にもチャンスがあります。自分で「良い・悪い」と決めつけず、「撮れた!」と思う作品を応募することが大切です。意外と他人の目には輝いて見えることも多く、結果を通して新たな発見や刺激もあります。審査する側もあらゆる作品を真剣に評価します。ぜひ挑戦してください!
(取材/岡田千重)
(取材/岡田千重)
観る人の心を掴む
その写真にパッと目がいく。そこからいろんなことを考えさせられる。そういう作品は審査員の目にとまりやすい。「これは何だろう?」「何を伝えたかったのだろう?」と興味を引き、観る人に謎や刺激を与え楽しませてくれる。想像の余白がある作品を目指そう。
構図とアングルに工夫を
被写体をただ正面から撮る、モチーフをバランスよく撮るだけでは図鑑のようになりやすい。どこに感動したのか、どこが魅力なのかを考え、それが伝わる構図とカメラアングルを考えよう。取り巻く世界や物、情報をプラスすることでストーリーが生まれる。
仕上げにこだわる
決定的な瞬間が撮れていることも大事だが、自分のテーマに合った現像ができていることが重要。そのために、素材の光や影、色やモチーフなど、より魅力的になるように際立たせる。データ上で調整したり、現像を工夫したりすると作品がよりグレードアップする。