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あなたとよむ短歌 テーマ詠「匂い」結果発表 ~短歌とAI~

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結果発表

テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん 熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.75
テーマ詠「匂い」結果発表
~短歌とAI~

短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。今回はテーマ詠「匂い」の結果発表です。

人はさまざまな出来事や感情を短歌に詠むものですが、どうしても視覚情報に偏りがちです。人間は視覚で外部情報の8割を受け取るとも言われているので、妥当なことでもあります。

一方で、だからこそ、意識的に嗅覚・聴覚・味覚・触覚に意識を向けて短歌に取り入れていくと表現に幅が出るはずです。今回のテーマ「匂い」にも魅力的な作品が集まりました。

今回も後半では投稿者の皆さんから寄せられた質問にお返事しています。作品と合わせて、ぜひ最後までお付きあいください。

それでは、最優秀賞の発表です!

ストーブをつけた最初の
五分だけ匂う埃が冬を呼び込む
(岸寅太郎さん)

これは誰しも心当たりがあるのでは。仕舞っていたり、出しっぱなしにしておいたりしたストーブを久々につけると、埃が焼けたような匂いがしますね。特に掃除のしづらい古い型のものや、学校、公共施設の暖房具などはどうしてもそのようになります。冬の始まりを感じさせる特有の匂いです。

その匂いを想起させるだけでなく「最初の五分だけ」という時間経過も効果的です。匂いが気になるくらいなので、誰かと話しているわけでもなく、静かな5分間だったのかもしれません。これからやってくる冬を、嗅覚や時間経過、静寂さで表現したすばらしい一首です。


続いて、優秀賞2首です。

人中を伸ばして息を吸うときに
だけ現れるもう死んだ祖父
(竜泉寺成田さん)

テーマ詠「匂い」の際に、匂いだけに注目せず、匂いを嗅ぐときの顔に注目した点も秀逸です。その匂いを嗅ぐ表情が、びっくりするほど祖父に似ていたのでしょう。両親と顔立ちが似ていると感じることはままあありますが、祖父という年代も離れた人と、ある表情のときにだけ顔が似ているというのは、遺伝の面白さや逃れられなさを感じます

しかもこの短歌では祖父は「もう死んだ」とのこと。つまり、記憶や写真の中の祖父の姿です。ほら似ているよと本人に見せることも、顔を並べてみることもできません。それでも、匂いを嗅いだ自分の顔にいつでも祖父の影が見えるのは、宿命というかなんというか、人間とは奇妙なものですね。


線香と聞けば花火を思う日と
祖母の遺影を思う日があり
(まちりこさん)

香りにはそれぞれに思い出が宿っていきます。線香花火を楽しんだ(もしかしたら幼少期や、青春時代などの)楽しく甘い思い出も、遺影で見る祖母の笑顔を思い出すこともあるのでしょう。もしかしたら同時に想起することもあるかもしれません。

そのいずれもが主体の経験したことであり、人生です。この短く何気ない日常を描いた一首に、人間が生きていくだけで蓄積されるさまざまな物事の重みを感じます。



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